竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

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竜人の子、旅立つ

32.笑い飛ばせ

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部屋に戻ったシロはベッドの上に寝転んだ。苛立った気持ちを落ち着かせるために、何度か深呼吸をする。
もし、あの場にルーフがいたら「ファミリーネームなんかにこだわるなんてつまんねぇ人生だな。捨てちまえよ、そんなもん」と笑い飛ばすだろう。揶揄うように笑うルーフの姿を思い出せば、心も顔もふっと緩んだ。

そうだ、怒るほどのことじゃない。笑い飛ばしてやれ。
ルーフに育てられた自分は、最高にツイている幸せ者なんだ。
なんなら入学試験では首席になってやろう。俺は、素晴らしい魔族に育てられた幸せな竜人なんだから。

シロは気持ちを完全に切り替えて、明日に備えて早々に眠る事にした。





次の日、シロが早めに起きて参考書に目を通していると、ドアをノックする音がした。
案内役の寮長が迎えにきてくれたのだろう。
シロが扉を開けると顔馴染みの人物が立っていた。

「おはようございます!シャオルさんが寮長だったんですね」

「まあな。シロ、準備は出来ているか?」

「はい」

シロが返事をして外に出ると、すでに準備を終えた受験生たちが廊下で待機していた。
一番端っこには、アンバーがチラチラとシロの顔を見てきたが、昨日の事があったせいか話しかけてはこなかった。

「ここまでどうやって来たんだ?」

シャオルに聞かれ、シロは「スノウさんに送ってもらいました」と答えると、シャオルはショックを受けた顔をした。

「スノウさん、来てたんだ。知らなかった…」

「明日、試験が終わる頃に迎えに来てくれます。シャオルさんも一緒に待ちますか?」

「迎えにもきてくれるのか…、いいな、お前。俺は明日からしばらく遠征でアスディアにはいないんだ。よろしく伝えてくれ」

シャオルは残念そうな顔で答えた。

宿泊施設に泊まった受験生は、シロを合わせて14人。シャオルは受験生を引き連れて試験会場へ向かった。

会場は騎士学校内にある大教室。
白亜の石造りで建てられた広大な騎士学校は、見た目も城のように美しいが、内装も豪華絢爛な造りになっている。あまりに広すぎるため、毎年受験生や新入生が迷子になってしまう事もあるらしい。

シャオルの後について歩く受験生たちは、はぐれないようにゾロゾロと列になって歩いた。

一際大きい扉の前に着くと、シャオルが足を止めた。

「着いたぞ。ここが大教室だ。では幸運を祈る」

受験生たちはシャオルにお礼を言って、大教室へと入った。
教室には、すでに80人ほどの受験生が座っている。席は指定されており、シロは自分の名前を探した。
座席表の名前は、どれもご立派で長ったらしい文字の羅列で書かれている。アンバーが驚いていた通り、ファミリーネームがないのはシロぐらいだろう。
シンプルすぎて目立つシロの名前はすぐに見つかり、こっそり「ファミリーネームがない方が役に立つ時もあるな」と思った。

シロが自分の席に着いてしばらくすると、こげ茶のカール頭のアンバーが前の席に座った。
アンバーはオドオドしながら振り返り、シロと目が合うと体をビクッと強張らせ、直ぐに前を向いてしまった。

シロは「そんなに怖がらなくても…」と思いつつ、あえて自分から声を掛ける必要もないなと思い、ほっとくことにした。


あと数分で試験が始まる。
シロは少し緊張しながら顔を上げると、目の前のアンバーの背中が小刻みに震えている。
一瞬だったが、さっき目が合った時の顔色も悪かった。

ー…まさか昨日俺が怒った事をまだ気にしてる訳ではないよな?そこまで怒ったつもりはないけど…。

シロはアンバーの肩を叩くと、アンバーは小さな声で「ひっ」と悲鳴を上げて、恐る恐る振り返った。
顔色がさっき見た時より更に悪くなっている。

「アンバー、大丈夫?」

「…だ、大丈夫。ちょっとお腹が痛いだけだから…」

アンバーは弱々しく答えて、また前を向いた。

シロは魔力を使ってアンバーの背中を観察した。アンバーの腹痛の原因は、過度なストレスと緊張からきているものだと分かった。

シロはアンバーの背中をそっと触れ、リラックスできる治療魔法をかけた。

急に震えと腹痛が止まったアンバーは、驚いた顔をして振り向いた。
シロがニヤッと笑うと、アンバーは泣きそうな顔をした。

アンバーがお礼を言おうとした時、試験開始のベルが鳴った。
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