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69.ここで生きる理由
ルーフは魔獣小屋で保護している魔獣たちをドグライアスの森へ避難させていた。
グレイがいなくなった後、魔獣の世話をしていたのはルーフだった。
魔王に懐いてた何匹かの魔獣は、城の方角を名残惜しそうに見つめている。
ルーフはそんな魔獣の頭をポンポンと撫でた。
魔王が魔獣を保護しているという噂は本当だった。度々怪我した魔獣を保護しては可愛がっていた。
実は、ルーフもそのうちの1匹だった。
子供の頃は狼の姿にしかなれず、しばらく魔獣として可愛がられていた。
ルーフが狼魔族と知った時の魔王の驚いた反応は今思い出しても笑ってしまう。
1人になりたがる魔王様だったが、もっと一緒に過ごしたかったな…。
「もうすぐドグライアス城は竜人たちの手に渡る。お前らを助けてくれた魔王様がこの国を捨てたんだ。
俺たちじゃ魔王様の『ここで生きる理由』にはなれなかったんだ。…すげぇ寂しいよな。」
ルーフは残された魔獣たちと崩落していくドグライアス城を静かに眺めていた。
ルイとユーロンはトカゲになったジルドを封印箱に閉じ込め、城の外へ出た。
魔王の力が無くなった影響は想像以上で、戦争に参加していた多くの魔物たちが力を失い悲鳴を上げている。
城の建物は次々と崩落し、所々で火の手が上がっている。
「ルイ、お前は救護を頼む。怪我をした者がかなり多い。俺は消火作業に行く。あと、ジルドは俺が預かるぞ。」
「ああ。」
相変わらず無表情のルイが心配になるユーロンだったが、今やるべき事は沢山ある。
このままルイをほっといていいものかと悩んだのも束の間で、ルイはすぐに救護活動に取り掛かった。
「…さすがルインハルトだ。私情は決して持ち込まない、か。」
ユーロンも消火作業へと向かった。
怪我をしているのは騎士だけではなく、城で働いていた魔族も大勢いて、ルイは淡々と全員に治療魔法を施した。
騎士の痛みに耐える声や子供魔族の泣き声がそこら中から聞こえてくる。
早くみんなを助けるんだ。
もう今は何も考えるな。
目の前の命を救うことだけに集中しろ。
そう自分に言い聞かせていると、一瞬わずかにあの声がした。
「…ルイ…、…おれ…こ…だー、た…くれ…」
「グレイ?」
ルイは立ち上がり周りを見渡す。
グレイの姿は見えない。
「グレイー!いるのか!?どこだ、グレイっ!」
ルイは瓦礫の中を走り回り、何度もグレイの名前を呼んだ。
しかしグレイの声はもう聞こえない。
でも何処かにいるんじゃないか。
立ち止まり、名前を呼び、また走り出そうとした時、近くの城壁が崩れだし、悲鳴が聞こえた。
1人の騎士がルイに気付き呼び止めた。
「あっ!ルインハルト様っ!騎士たちが瓦礫の下敷きになっています!力を貸していただけますか!?」
「…ああ、すぐ行く。」
グレイの声は気のせいだったのか…。
今は救護をしなければ。
ルイは時計台の方へ向けていた足を引き返し、崩落した城壁の方へ走っていった。
グレイがいなくなった後、魔獣の世話をしていたのはルーフだった。
魔王に懐いてた何匹かの魔獣は、城の方角を名残惜しそうに見つめている。
ルーフはそんな魔獣の頭をポンポンと撫でた。
魔王が魔獣を保護しているという噂は本当だった。度々怪我した魔獣を保護しては可愛がっていた。
実は、ルーフもそのうちの1匹だった。
子供の頃は狼の姿にしかなれず、しばらく魔獣として可愛がられていた。
ルーフが狼魔族と知った時の魔王の驚いた反応は今思い出しても笑ってしまう。
1人になりたがる魔王様だったが、もっと一緒に過ごしたかったな…。
「もうすぐドグライアス城は竜人たちの手に渡る。お前らを助けてくれた魔王様がこの国を捨てたんだ。
俺たちじゃ魔王様の『ここで生きる理由』にはなれなかったんだ。…すげぇ寂しいよな。」
ルーフは残された魔獣たちと崩落していくドグライアス城を静かに眺めていた。
ルイとユーロンはトカゲになったジルドを封印箱に閉じ込め、城の外へ出た。
魔王の力が無くなった影響は想像以上で、戦争に参加していた多くの魔物たちが力を失い悲鳴を上げている。
城の建物は次々と崩落し、所々で火の手が上がっている。
「ルイ、お前は救護を頼む。怪我をした者がかなり多い。俺は消火作業に行く。あと、ジルドは俺が預かるぞ。」
「ああ。」
相変わらず無表情のルイが心配になるユーロンだったが、今やるべき事は沢山ある。
このままルイをほっといていいものかと悩んだのも束の間で、ルイはすぐに救護活動に取り掛かった。
「…さすがルインハルトだ。私情は決して持ち込まない、か。」
ユーロンも消火作業へと向かった。
怪我をしているのは騎士だけではなく、城で働いていた魔族も大勢いて、ルイは淡々と全員に治療魔法を施した。
騎士の痛みに耐える声や子供魔族の泣き声がそこら中から聞こえてくる。
早くみんなを助けるんだ。
もう今は何も考えるな。
目の前の命を救うことだけに集中しろ。
そう自分に言い聞かせていると、一瞬わずかにあの声がした。
「…ルイ…、…おれ…こ…だー、た…くれ…」
「グレイ?」
ルイは立ち上がり周りを見渡す。
グレイの姿は見えない。
「グレイー!いるのか!?どこだ、グレイっ!」
ルイは瓦礫の中を走り回り、何度もグレイの名前を呼んだ。
しかしグレイの声はもう聞こえない。
でも何処かにいるんじゃないか。
立ち止まり、名前を呼び、また走り出そうとした時、近くの城壁が崩れだし、悲鳴が聞こえた。
1人の騎士がルイに気付き呼び止めた。
「あっ!ルインハルト様っ!騎士たちが瓦礫の下敷きになっています!力を貸していただけますか!?」
「…ああ、すぐ行く。」
グレイの声は気のせいだったのか…。
今は救護をしなければ。
ルイは時計台の方へ向けていた足を引き返し、崩落した城壁の方へ走っていった。
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