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1.婚約破棄まであと6ヶ月
11.悪役令嬢は頼まれる
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動揺する私を気にも留めず、アレンはメアリーとの出会いを話し始めた。
「メアリーは今までアスラ村で暮らしていたんだ。2ヶ月ほど前の嵐の日に俺は馬車でその村を通りがかったんだが、車輪が泥濘にハマって横転してしまったんだ。俺も従者も怪我をして動けなくなっていたところをメアリーの光魔法で助けてもらったんだ。」
「ふふ、もう懐かしく感じるわ。」
メアリーが可愛らしく笑うとアレンも優しい瞳でメアリーを見つめた。
2ヶ月前、確かにアレンは国事で遠方に出掛けた。天候の悪い中、出発して行ったアレンの身をすごく心配した事を覚えている。
でもアレンも馬車も無傷で帰って来たし、彼に大丈夫か尋ねても「問題なかった。」と言っていた。
でも実際はそんな事故があったんだ…。
私はアレンの婚約者なのに何も知らなかった。
「メアリーの光魔法は素晴らしいものだった。もしかしたら『聖女の生まれ変わり』なのかもしれない。」
「『聖女の生まれ変わり』なんて御伽話の世界だと思ってましたわ。」
私は自分が思ったより冷たい声が出た。
『聖女の生まれ変わり』は1000年に1度だけ現れる光魔法の使い手で、フィルコート王国に繁栄と富をもたらし幸せを招く女性、と言い伝えがある。
しかしフィルコート王国の歴史書にも『聖女』についての記載はなく、あくまで神話や言い伝え程度の存在なのだ。
冷静で現実主義のアレンがまさかその『聖女』の存在を信じるとは思わなかったわ。
「まあ、そうだな。確かに『聖女の生まれ変わり』という確信はない。ただ、仮にメアリーが聖女で無かったとしても彼女の力は今後のフィルコート王国には欠かせないものになる。」
「そう…ですね。」
「私、聖女じゃなくてもアレン様や国の役に立つなら頑張るわ!将来は王宮の魔導士になるつもりよ。だって光魔法の使い手自体、珍しいんでしょ?誰かに必要とされるなんてすごく光栄な事ですもの!」
メアリーは嬉しそうに両手を握りしめた。
まるで小動物がガッツポーズをしているようだ。
うーん、なんだろう。
行動がいちいち可愛い。
アレンもそう思ったのか、メアリーを見て微笑んでいる。
「メアリーもこう言ってくれているからこの学園に転入してもらったんだ。ただ、王宮に仕えるなら貴族のマナーや教養も必要だろ?メアリーは、今のままでも天真爛漫で一緒にいて楽しいが、王宮ではそういうわけにもいかない。もちろん王宮の教育係がメアリーの指導をしていくが、学園生活ではキーナにもフォローしてもらいたいんだ。キーナの受け答えやマナーはお手本のようだからな。頼めるか?」
お手本のようー、
その言葉が引っかかった。
まるで私の事をお手本のようでつまらない女だと言われているようで。
しかもここまで話を聞いて断れるわけがない。
だってメアリーはアレンの恩人で国の宝となる存在。
ただの公爵令嬢の私に拒否権はない。
しかも彼は6ヶ月後に私を婚約破棄するつもりなのだ。
なんだか馬鹿らしいわ。
私はもう作り笑いを保つのをやめた。
「かしこまりました。ただ、私は今まで公爵令嬢として、アレン様の婚約者として恥じぬよう懸命に努力をしてきました。そんな私が指導するのなら徹底的にやらせて頂きます。もしメアリーさんがその指導で弱音を吐くようならその場で辞退させていただきますが、よろしいですか?」
「えー、キーナ様こわーい。」
メアリーはアレンの後ろに隠れて小さい声で呟いた。
「メアリーさん、貴方はまず礼儀がなっていないですし、言動が非常識です。あなたが聖女でも、今はあなたは市民で私は貴族、そしてアレン様は王族です。人間関係を育む学園生活といえど身分を弁えるべきです。」
アレンとメアリーの顔が凍りつく。
私は公爵令嬢らしい微笑みを浮かべて両手を合わせた。
「と、まあ、こんな感じで指導していく方針ですがよろしいですか?」
「えーと…、メアリー、大丈夫そうか?」
アレンはメアリーを庇うように尋ねた。メアリーは少し怯えているようだ。
「う…うん。」
もういい。猫を被るのは終わりだ。
アレンに自分をよく見せるのは終わりにしよう。
どうせこの関係も6ヶ月後には終わるんだ。
だったら彼が望む最後の仕事をやってやろうじゃない。
「返事はうん、ではなく、はい、です。」
私はピシャリと言った。
「は、はいっ!」
メアリーは慌てて言い直した。
「メアリーは今までアスラ村で暮らしていたんだ。2ヶ月ほど前の嵐の日に俺は馬車でその村を通りがかったんだが、車輪が泥濘にハマって横転してしまったんだ。俺も従者も怪我をして動けなくなっていたところをメアリーの光魔法で助けてもらったんだ。」
「ふふ、もう懐かしく感じるわ。」
メアリーが可愛らしく笑うとアレンも優しい瞳でメアリーを見つめた。
2ヶ月前、確かにアレンは国事で遠方に出掛けた。天候の悪い中、出発して行ったアレンの身をすごく心配した事を覚えている。
でもアレンも馬車も無傷で帰って来たし、彼に大丈夫か尋ねても「問題なかった。」と言っていた。
でも実際はそんな事故があったんだ…。
私はアレンの婚約者なのに何も知らなかった。
「メアリーの光魔法は素晴らしいものだった。もしかしたら『聖女の生まれ変わり』なのかもしれない。」
「『聖女の生まれ変わり』なんて御伽話の世界だと思ってましたわ。」
私は自分が思ったより冷たい声が出た。
『聖女の生まれ変わり』は1000年に1度だけ現れる光魔法の使い手で、フィルコート王国に繁栄と富をもたらし幸せを招く女性、と言い伝えがある。
しかしフィルコート王国の歴史書にも『聖女』についての記載はなく、あくまで神話や言い伝え程度の存在なのだ。
冷静で現実主義のアレンがまさかその『聖女』の存在を信じるとは思わなかったわ。
「まあ、そうだな。確かに『聖女の生まれ変わり』という確信はない。ただ、仮にメアリーが聖女で無かったとしても彼女の力は今後のフィルコート王国には欠かせないものになる。」
「そう…ですね。」
「私、聖女じゃなくてもアレン様や国の役に立つなら頑張るわ!将来は王宮の魔導士になるつもりよ。だって光魔法の使い手自体、珍しいんでしょ?誰かに必要とされるなんてすごく光栄な事ですもの!」
メアリーは嬉しそうに両手を握りしめた。
まるで小動物がガッツポーズをしているようだ。
うーん、なんだろう。
行動がいちいち可愛い。
アレンもそう思ったのか、メアリーを見て微笑んでいる。
「メアリーもこう言ってくれているからこの学園に転入してもらったんだ。ただ、王宮に仕えるなら貴族のマナーや教養も必要だろ?メアリーは、今のままでも天真爛漫で一緒にいて楽しいが、王宮ではそういうわけにもいかない。もちろん王宮の教育係がメアリーの指導をしていくが、学園生活ではキーナにもフォローしてもらいたいんだ。キーナの受け答えやマナーはお手本のようだからな。頼めるか?」
お手本のようー、
その言葉が引っかかった。
まるで私の事をお手本のようでつまらない女だと言われているようで。
しかもここまで話を聞いて断れるわけがない。
だってメアリーはアレンの恩人で国の宝となる存在。
ただの公爵令嬢の私に拒否権はない。
しかも彼は6ヶ月後に私を婚約破棄するつもりなのだ。
なんだか馬鹿らしいわ。
私はもう作り笑いを保つのをやめた。
「かしこまりました。ただ、私は今まで公爵令嬢として、アレン様の婚約者として恥じぬよう懸命に努力をしてきました。そんな私が指導するのなら徹底的にやらせて頂きます。もしメアリーさんがその指導で弱音を吐くようならその場で辞退させていただきますが、よろしいですか?」
「えー、キーナ様こわーい。」
メアリーはアレンの後ろに隠れて小さい声で呟いた。
「メアリーさん、貴方はまず礼儀がなっていないですし、言動が非常識です。あなたが聖女でも、今はあなたは市民で私は貴族、そしてアレン様は王族です。人間関係を育む学園生活といえど身分を弁えるべきです。」
アレンとメアリーの顔が凍りつく。
私は公爵令嬢らしい微笑みを浮かべて両手を合わせた。
「と、まあ、こんな感じで指導していく方針ですがよろしいですか?」
「えーと…、メアリー、大丈夫そうか?」
アレンはメアリーを庇うように尋ねた。メアリーは少し怯えているようだ。
「う…うん。」
もういい。猫を被るのは終わりだ。
アレンに自分をよく見せるのは終わりにしよう。
どうせこの関係も6ヶ月後には終わるんだ。
だったら彼が望む最後の仕事をやってやろうじゃない。
「返事はうん、ではなく、はい、です。」
私はピシャリと言った。
「は、はいっ!」
メアリーは慌てて言い直した。
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