非緊急時等死亡時延命相談員(死神)

ティト・アルバ

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最後の最初

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よく聞く、心電図モニターの音がだんだん大きくなる。ドラマや映画なんかでいつも聞くので人間はこの音を聞くだけですぐに病人を連想する。



田口鉄郎 58歳の老人はしんどそうに呼吸器の中で息をしている。彼の隣で、娘らしき人が心配そうに手を握っている。お年寄りといえばお年寄りだが、現代日本では死ぬのは早い方だ。彼はそんなことを思いながら老人に話しかけた。


「こんにちは。58年間お疲れ様でした。しかし逝くのはちょっとだけ早いですね。」


「?…あなたはどなたですか?」
しわがれた声で老人が答える。脳内で話しているのに、意識が伝えるその波は喉から出る声となんら変わりない、それぞれの個性を持っている。


彼は微笑んだまま老人を見つめていると、老人は納得したように頷いた。
「あぁ。あなたは死神でしょう?先生や娘はああいうが、やはり私はもうダメなんでしょう。」
老人は一筋の涙を流しながら彼に向かって決めつけるような、半ば諦めたような視線を送る。


「えぇ。まあ端的にはそうです。でも私が来なかったらあなたは、今頃、そうですね 22:11分にはご臨終なさっていたことでしょう。しかし、あなたはそれよりもう少し生きられます。先に言っておきますが、私は迎えに来たのでも送りに来たのでもない。あなたの死について少しお知らせに、そして見守りに来たのです。あなたにはもう少し、少なくとも向こう5分は死にたくない理由があるでしょう?」


彼がそう言った途端、病室のドアが勢いよく開いた。さっき階段ですれ違った男が入ってきた。息を切らせながら鞄からタブレットを取り出して?、何か操作する。「彼」には目もくれない。


「そう。あと十分…いやあと18分差し上げます。もっと差し上げたいのは山々ですが、残念ながらもうこれだけしか残っていません。でも、あなたの名誉ある、温かい最後には十分の時間です。」


老人は、脳内で話すことも忘れたようだった。


男が持つタブレットには、別の病室が映し出されていた。画面の向こうにも別の男がいて妻らしき女性の手をしっかりと握っている。女性はうめき、叫びながら歯を食いしばっている。看護師や医者が、「頑張れ。後もう少し!」「もっと力を入れて」と励ましている。

数分後、青いシーツの下から、大きな口を開けた赤子が取り出された。耳の遠くなった老人に声は届かなくとも、力強い新しい命の鼓動はしっかりと伝わったようだった。老人の目に涙が溢れた。


「…58年間お疲れ様でした。20代後半で奥様を亡くされた後一人で子供3人を立派に育てられ、家族の大黒柱として、また地域の見守り役として、いつもみんなの拠り所となっておられました。みんなご主人のことを愛し、慕っています。あなたが息を引き取った後、何十人もの方が、あなたのベットを囲みます。見事な生き様でした。最後にお孫さんのご誕生。おめでとうございまいました。」


「あ…ありが…とう」
老人の最後の言葉は、脳の中の意識ではなく、喉から絞り出された声となって、ベットの側に座る二人と画面の向こうの女性にしっかりと届いたのであった。
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