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lone leap
sign and tusk
しおりを挟む「…おかえり、総司。遅かったね」
土方の部屋から戻ってきた総司は、少し深刻な顔をしていたが、雫に心配をかけまいと明るく振る舞う。
「まぁね。それより、雫はお風呂どうするの?」
雫が女であるのを知るのは三人だけ。
女人禁制の場所に女がいることがバレてはいけないため、色々なことに慎重になる。
「…みんなが入ってから入ろうかなって思ってる。一回入ってすぐにまた入る人なんていないだろうし」
「…そうだね。ただ、今日は夜の見廻りの組が遅く入るかもだから、先に入ったら?僕が前で見張っててあげるから」
見廻りの情報を知らなかった雫は、ありがとうと礼を言った。
特に問題なくお風呂も入り終わり、二人はそれぞれ床についた。
布団に入ってすぐに寝息が聞こえてくる。
その音を聞きながら、総司もゆっくりと目を閉じた。
目を閉じると思い出すのは、あの日の記憶。
大切な人を失い、雫は雨に打たれていた。
雨は涙も流してくれる。
涙と一緒に、悲しい気持ちも流してくれたらいいのに………
空を見上げても、灰色の景色は変わることなく、雫に涙を降らしていた。
「………」
雫が目を覚ますと、まだ外は薄暗かった。
(……あ、ご飯の準備………)
今が何時かはわからないけど、とにかく動くべきだと思った雫は、寝ている総司を起こさないようにそーっと忍び足で部屋を出た。
「…早くこっちの時間感覚になれないとな……時計とか持っとけばよかったな」
時間がきちんと決められた世界に生きていた雫にとって、この時代の時間区分は少し勝手が悪いと思っていた。
昨日の記憶を辿って台所へ行くと、まだ誰も来ていなかった。
大人数の食事を作るため、あまり時間に余裕を持ってやるべきではない。
とはいえ、まだ火をおこすことも出来ない雫は、とりあえず野菜を切るという選択肢しかなかった。
しばらくすると、隊士が二人と平助がやって来た。
「…おはようございます、平助」
「おはよー雫。もう始めてたのか?」
台所に入ってきてすぐに、ほとんど準備が整っていることに気づいた平助は、何をすればいいか訊ねた。
「…えっと、じゃあ……一人は火をおこして頂いて、もう一人は井戸から水を汲んできて頂けますか?それで、平助は私と一緒に残りの仕込み作業……というか準備を手伝って頂けますか?」
「う、うん」
困ったように微笑んだ雫に頬を赤らめた三人は、それぞれに顔をそらすなどの反応をして、すぐに作業に取りかかった。
(何でドキッとしてんだよ!相手は男だぞ!)
動揺を振り払い、心頭滅却。
………しようとしたが、包丁の使い方が危ないと、雫が丁寧に教えてくれるものだから、また平助の動悸が激しくなった。
「…どうしたんですか?平助」
「い、い、いやいやいや……何にもないぜ!」
「…何にも………?…それならいいですけど。それよりも、あとどのくらいでみなさん起きてこられるかわかりますか?」
「…えーっと、あと四半刻くらいかな?何人かはもう起きてるし」
廊下を見て、平助は頭の中でざっと計算した。
「…では、もう膳を準備して大丈夫ですよね?」
「あぁ、そうだな」
雫がご飯をよそったり、味噌汁を注いだり。
そして平助たち三人が膳を広間へと運んでいった。
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