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noise
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喧嘩か戦闘か、とにかく何かの怒号が聞こえた。
見廻りなんて面倒な事、さっさと終わらせて雫とのんびり話がしたいと思っているのに、さらに面倒は舞い込んでくる。
「…沖田隊長。行きますか?」
「…もちろん行くに決まっていますよ?」
今日は森くんはお休み。
雫を一人で買い物に行かせる訳には行かないので、彼を休みにさせた。
元々見廻りだって5人から10人でやってるんだ。
一人いなくなっても同じことだと森くんには今日は休みの予定だったことにしてもらい、雫に同行するように頼んだ。
だから森くんはいなくて他に6人ばかりの平隊士。
野次馬のように集まる人間を押し退けて面倒に首をつっこむと、そこには雫がいた。
「…雫!」
慌てて駆け寄ると、雫は口をパクパクさせて笑顔を見せたのち、気を失った。
服には誰かの血液が付着していた。
「…隊長………中村が……」
隊士の一人が重々しく口を開く。
振り返ると一人、頭を貫かれて死んでいた。
そしてその近くには森くんが気を失って倒れていた。
「…とりあえず雫と森を屯所に連れ帰ります。その中村という青年は………あとで連れて戻りましょう」
状況が理解出来ない今、戦闘が行われた形跡のある場所に長居してはいけない。
総司は何故と叫びたい気持ちを抑え、口をつぐんだ。
「…すいません、自分がもっと周りを警戒していたら……」
目を覚ました森は、自分達が帰りがけに怪しい男に会ったこと、そして後ろから殴られたことを説明した。…恐らく中村が長州の間者だったのだろう。
このことは既に土方さんには報告済みだった。
その後も、隊長である僕には様々な指示があり、雫の様子を確認することも出来ない。
中村の死体を回収し、帰路についた頃にはもう夜になっていた。
「…ひどい死臭だ。……洗お」
とりあえず風呂に入った。
自室に戻るが、雫はいない。
あまり大きな怪我はなかったようだが、様子見として医務室で山崎くんが看病している。
「…明日も、後始末があるんだろうな……」
雫のいない部屋で、雫の分の布団で、彼は明日のことを考えていた。
見廻りなんて面倒な事、さっさと終わらせて雫とのんびり話がしたいと思っているのに、さらに面倒は舞い込んでくる。
「…沖田隊長。行きますか?」
「…もちろん行くに決まっていますよ?」
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一人いなくなっても同じことだと森くんには今日は休みの予定だったことにしてもらい、雫に同行するように頼んだ。
だから森くんはいなくて他に6人ばかりの平隊士。
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「…雫!」
慌てて駆け寄ると、雫は口をパクパクさせて笑顔を見せたのち、気を失った。
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「…隊長………中村が……」
隊士の一人が重々しく口を開く。
振り返ると一人、頭を貫かれて死んでいた。
そしてその近くには森くんが気を失って倒れていた。
「…とりあえず雫と森を屯所に連れ帰ります。その中村という青年は………あとで連れて戻りましょう」
状況が理解出来ない今、戦闘が行われた形跡のある場所に長居してはいけない。
総司は何故と叫びたい気持ちを抑え、口をつぐんだ。
「…すいません、自分がもっと周りを警戒していたら……」
目を覚ました森は、自分達が帰りがけに怪しい男に会ったこと、そして後ろから殴られたことを説明した。…恐らく中村が長州の間者だったのだろう。
このことは既に土方さんには報告済みだった。
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「…ひどい死臭だ。……洗お」
とりあえず風呂に入った。
自室に戻るが、雫はいない。
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「…明日も、後始末があるんだろうな……」
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