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人間との出会い:2
しおりを挟む「さて、すっかり元気だし…家へ帰って君へのお礼の準備をしたいけれど…その前に君の傷が心配だ」
そう言って人間は、眉を八の字にして心配そうに僕の羽をそっと優しく撫でる。
「痛そうだ。」
なんだか僕より辛そうな声を出すもんだからそれが面白くって、んふふと笑ってしまう。
すると人間は僕の頭を撫でてきた。大きな手で頭を包みこまれると、とても安心感があって心地よい。
だから、ついその手にすりすりとすり寄ってしまったのも仕方ないと思う。
「……っすごい破壊力…こんなに可愛くってよく今まで襲われなかったな…」
人間が何か呟いたけど、撫でられるのに夢中な僕には聞こえなかった。
「心配しなくても僕の怪我なら大丈夫…ここの動物に会えたら、僕の友達のもとまで運んでもらえないかお願いするよ…」
そうは言ったものの、羽を怪我したのなんて初めてだ…実は本当に治るのかとても不安だったりする。
それにこの土地の動物たちは全く知らない子達だ。コミュ障の僕にはお願いをするどころか、話しかけるのだってハードルが高い。でもこの人間は僕よりも、ずっとこの森について知らないはずだからきっと僕よりも不安なはず…
この森の先輩である僕がしっかりしなくちゃね、と少し泣きそうだったけど無理矢理ぐっと涙を抑え込み笑顔を作る。「僕は大丈夫だから気にしないで。」とそう続けるつもりだった。だけど____
「………友達?」
あれ…………?と思った。思ってた反応と違う。なんでだろう…人間は笑顔だけど、少し怒っている気がする。
僕なにか人間を怒らせるようなことをしてしまったみたいだ。どうしよう…嫌われちゃった?どうして?なにが原因で怒らせちゃったんだろう?
ぐるぐるぐるぐる考えて、羽の傷とか、帰れるかなとか、嫌われたくないな、とか色んな不安がごっちゃになっちゃって、僕はパンクしてしまった。ずっと無理矢理抑え込んだ涙が遂に決壊してしまったのだ。
大粒の涙がぽろぽろと落ちる。
「ぇぐっ…ごめっ…ごめんなさいっ…嫌わないでぇ…」
なんで自分が謝っているのかさっぱりわからない。でもなぜか、この出会ったばかりの人間に僕は嫌われたくなかった。泣いたらめんどくさいって思われちゃうかな。涙止めないと、とグシグシと目元をぬぐう。
「…っっ…ああっごめん、ごめんね?俺が悪かった。怒ってないよほら、おいで。」
人間は座ったまま両腕を広げて優しい笑みを浮かべた。
その笑顔に絆されて、ほっと安心した僕はその両腕の中に収まった。温かくて包まれている感覚に安心感を覚えた。自然と体の力が抜けていく。
人間は「ごめんね」と僕の頭に頬をうりうりしてきて、それが少しくすぐったくてクスクス笑ってしまう。
「友達ってどんな子なのか聞いてもいいかな?」
僕の目元を長い指が優しくなぞりながら、さっきとは違ってすごく優しい声で問いかけられ、ゆっくりと話した。
「ううん…綺麗な羽の鳥達とかウサギ達とか…かな」
なるほど友達は動物か…とぼそぼそつぶやき、その後人間はこれまでになく、にぱっと満面の笑みをうかべた。
「動物が友達なんだね…もしかして妖精は君以外にもいるのかい?」
「?妖精は僕だけだよ」
「そうなんだね…寂しくはなかった?」
「んぅ?全然寂しくなんてないよ。」
妖精は森でぽんっと生まれる。だから親という概念がない。同族に会ったこともなかった。
でも同族に会いたいとか、寂しいとかそんな気持ちになったことはなかった。会ったこともない同族を想って悲しくなったりするほど僕は悲観的じゃないのさ。
なんだか人間の腕の中は包まれている感じがしてとても落ち着くな、と僕はぬくぬくとリラックスしていた。だから僕は人間が指輪に向かって何か指示を出しているのに全く気づかなかった。
*
しばらく、人間の膝の上で座って落ち着いていると、ふと疑問が湧いてきた。
さっき『家へ帰って…』とか言っていたけれど、
「あれ…ところで人間はどうやって帰るの?」
ここは結構森の奥深くだと思う。
ここにひらひら飛んできた時だって、上空から森を見渡しても人が住んでそうな街はおろか村なども一切見当たらなかった。
「あぁ。俺がつけてるこの指輪ね、ペアの指輪をつけている人を追跡できるんだよ。連絡もとれる。今迎えを頼んだからしばらくしたら執事が来ると思う。」
(よかった。帰る方法はあるのか)
ほっと安心して、ぽすっと頭を胸に埋めた。
すると文句も言わずにまた僕の頭を撫でてくれた。とっても撫で上手だ…すごく気持ちいい。そんな感じで、人間の手で蕩けていると、
「…良ければ俺の事は人間じゃなくて、アルと呼んでくれないか?」
「アル…?」
上を向いて目を見ると、人間もといアルは名前を呼ばれてすごく嬉しそうに頬を染めて微笑んでいた。やっぱりとても綺麗だ。
「よければ君の名前も教えてくれないか?」
「僕…?僕名前持ってないよ…」
今まで名前がなくても困ったことがなかったから、僕は名前を持っていなかった。というか考えたこともなかった。
「じゃあ……俺がつけてもいいかな?」
アルは僕の両手を取り、包み込むように僕の手を握った。優しい力のはずなのに、逃げられない…何故かそう感じさせる力だった。
けれどそれに嫌な感じはしなかった。
特に今まで名前が欲しいとは思ったことがなかったけれど、アルが付けてくれるならと快く了承する。なんだか名前だなんて新鮮で、とても楽しみだ。
「じゃあ……フィンはどうだろう?愛称は…フィニー」
「フィン…フィン!んふふ…僕はフィン」
いざ名前ができたらすごく嬉しくなって、ニコニコでアルを見つめた。そんな僕を見てアルも嬉しそうに僕をぎゅうっと抱きしめた。
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