夏花

八花月

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14.訪問者たち

009

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「暗くなってきましたね……」
 
 何となく周囲を窺う様子を見せながら、萩森がぽつりと言葉を吐き出す。日が落ちて、もう待宵屋敷は全き闇に包まれている。

「幽霊がもしいるとすれば、そろそろなのでしょうか」

 受けて発言した雅樂は、案外平気そうだ。連日の化け猫で多少慣れているのかもしれない。

「あ、いや、幽霊はもっと夜が更けてから……真夜中に出たほうが盛り上がると思わない? あいつら一晩中起きてるつもりみたいだし」

 乙女が言うと、萩森は妙な顔をした。

「そりゃそうかもしれませんけど、幽霊は見物に来た人間の都合なんか考えてくれないでしょう?」

「ええ……あやかしのたぐいは、こちらの都合など完全に無視して現れるものですわ……」

 雅樂も説得力のある言い方で、萩森に同調する。

 乙女は、まあそうだね、と曖昧なことを言い、軽く流した。

「それより武音さん、ちょっとこういうやり方はもう勘弁してくださいよ」

 萩森がブスッとした顔で、何やら語り始める。

「彼らが動画撮る気だって知ってたんでしょ? どうして先に言ってくれなかったんですか?」

「ええ~? 別に聞かれなかったしな~」

「聞かれなくても言ってくださいよ、そういうことは! 大事なことじゃないですか。仕事のことで隠し事は抜きにしてくださいよ」

「ええ~? それを言うなら、ここが幽霊屋敷だってのも事前に教えておいて欲しかったな~」

 萩森は咽喉の奥から、短く〝うっ〟と声を出した。

「何も知らせずに連れてくるのどうかと思うな~。フェイスブックとかに書いちゃおっかな~」

「そ、それ今言うんですか……」

 萩森は苦虫を噛み潰したような顔をしている。

「まぁ! 萩森さん、伝えてなかったんですの!」 

「うわっ、ズルい! それはズルいですよ山名さん!」

「……だ、だってわたくし知りませんでしたし……」

 雅樂はぷいっと顔を逸らした。

「そりゃ体調悪くて休んでたから、しょうがないですけど、山名さんが待宵屋敷の件の担当なんですから」

「まぁまぁまぁ、いいじゃんもうすんだことは。ね? 仲良くしよう、仲良く。これからは隠し事はナシってことで! お互いに」

 乙女が割って入ると、萩森は不承不承頷き、同意を示す。

「そ、そうですわね。前向きにいきませんと」

 雅樂の言葉の後、思いがけず三人の会話が途切れた。不意に訪れた沈黙に耐えかねたように萩森が、

「じゃあ、そろそろ晩御飯の準備します?」
と口を開く。

「ええ。わたくし、ここに来る途中コンビニで色々買ってきましたのでそれで……」

 乙女も同意し、皆でいそいそと食事の用意を始めた。

「……あの、僕、どこで寝たらいいですかね?」
「ん?」

 車座で缶詰やおにぎりを食している時に、萩森がぽつりと言う。
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