赤い月と一人称の世界

猫の侍

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人間落とし

心は一つ

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コツン… コツン…

どこまで行っても深い闇 
薄暗い廊下に赤い月
突き当たりの鏡
反射する体
あぁこれが人間か
久しぶりに会った

それが私だという事は
もう忘れている

物事の結果には
そうなった理由と原因がある

寝ては起き仕事に行くだけの生活
みんな居なくなれば良い
そう思って 毎晩 毎晩
人形に釘を刺しては泣いて
釘を刺しては泣いた

誰も悪くないと最初はそう思った
次第にそう思い込むようにした
最終的には誰かが悪い
お前か それともお前か
執拗な犯人探し

悪者を見つけては
正義の鉄槌を下す心地よさ

気付けば私はこの世界に居た
最初からこの世界の
住人なのかもしれない
何が現実で何が過去なのか
分からなくなって
全て忘れた

階段を登ったエントランス

ぐしゃ… 

何かを踏んだ

ぐしゃ ぐしゃ…

動物の肉だ

腕と足と胴

顔もある

ぐしゃ ぐしゃ…

私と同じで生暖かいので
手に取って食べてみた
ぐしゃ ぐしゃ…
美味しいとか
不味いとか
そんな物差しは失くしていた

ぐしゃ ぐしゃ
ぐしゃ ぐしゃ

動物を食べた
動物を食べた
動物を食べた
動物を食べた

思い出した人間だこれ

思い出した人間だこれ

思い出した人間だこれ

思い出した人間だこれ
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