すれ違い、勘違い

こてつ蘭丸

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すれ違い、勘違い 2

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すれ違い、勘違い 2


「山崎くん、小夜を呼んで来てくれないか」


土方に言われた山崎が屯所内を捜すと、小夜は庭で洗濯物を干していた。


「小夜」


名を呼ぶと、嬉しそうな顔で振り返る。


「山崎さん!」


洗濯物を放り、山崎の方へ駆け寄ると、


「どうかされましたか?」


笑顔で首を傾げる仕草が愛らしい。


「仕事中すまないが、副長がお呼びだ」


「…土方さん、が…」


少し表情が翳った気がしたが、小夜は大人しく山崎に従って副長室まで付いて来た。


「副長、入りますよ」


返事を確認し、障子を開けた。


「小夜を連れてきました」


「あぁ、山崎くん、ご苦労だった。小夜、入れ」


山崎は一礼して副長室を退室した。

が、どうしても気になり、副長室のすぐ外で、気配を消して土方の次の言葉を待つ。

中から聞こえてきたのは、自分をどう思うか?と、彼女に問う内容だった。


(…やはり、副長は小夜を自分のモノにするおつもりだ)


山崎は眉をひそめ、冷めた目を伏せ、気配は消したまま、足早にその場を去った。



(…副長が誰と恋仲になろうが問題無いし、彼女が誰の女房になろうがオレには関係無い。

オレは監察方だし、幕府の犬なのだから、恋だの愛だのそんなモノに現を抜かすわけにはいかないのだ……)


今、こうして思い悩んでいる自分自身にも腹が立った。


(…妙に暴れだしたい気分だ…)


山崎は、そのまま道場に向かう。

全体稽古は終わったのだろう、何人かの剣好きしか居なかった。


「アレ?山崎さん。珍しいですね」


沖田が山崎を見付け、きょとんとした顔で訊いてきた。


「任務の合間に稽古しておかねばな」


「良かったら、お相手しますよ」


沖田は、手にしている木刀を握り直した。


(…彼が相手ならば、手加減せずに済む…)


山崎は殺気を剥き出しにして木刀を振るった。




「もう降参です、山崎さん」


大分剣を交えた後、お互い荒い息を吐きながら、木刀を収めた。


「…何か、あったのですか?」


ふと、心配そうに呟く沖田。


(…こんな若者に気付かれるとは、オレも甘いな…)


山崎は自嘲し、


「あぁ、ちょっと、な」


適当に誤魔化し、礼を述べると道場を後にした。



井戸で冷水を頭から被ると、血が昇って火照っていた頭がヒヤリと冷えていく。


(…これでいいんだ。もう、迷うまい……)


山崎の心の中もヒンヤリと冷え、いつもの落ち着きを取り戻していった。
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