2 / 3
すれ違い、勘違い 2
しおりを挟む
すれ違い、勘違い 2
「山崎くん、小夜を呼んで来てくれないか」
土方に言われた山崎が屯所内を捜すと、小夜は庭で洗濯物を干していた。
「小夜」
名を呼ぶと、嬉しそうな顔で振り返る。
「山崎さん!」
洗濯物を放り、山崎の方へ駆け寄ると、
「どうかされましたか?」
笑顔で首を傾げる仕草が愛らしい。
「仕事中すまないが、副長がお呼びだ」
「…土方さん、が…」
少し表情が翳った気がしたが、小夜は大人しく山崎に従って副長室まで付いて来た。
「副長、入りますよ」
返事を確認し、障子を開けた。
「小夜を連れてきました」
「あぁ、山崎くん、ご苦労だった。小夜、入れ」
山崎は一礼して副長室を退室した。
が、どうしても気になり、副長室のすぐ外で、気配を消して土方の次の言葉を待つ。
中から聞こえてきたのは、自分をどう思うか?と、彼女に問う内容だった。
(…やはり、副長は小夜を自分のモノにするおつもりだ)
山崎は眉をひそめ、冷めた目を伏せ、気配は消したまま、足早にその場を去った。
(…副長が誰と恋仲になろうが問題無いし、彼女が誰の女房になろうがオレには関係無い。
オレは監察方だし、幕府の犬なのだから、恋だの愛だのそんなモノに現を抜かすわけにはいかないのだ……)
今、こうして思い悩んでいる自分自身にも腹が立った。
(…妙に暴れだしたい気分だ…)
山崎は、そのまま道場に向かう。
全体稽古は終わったのだろう、何人かの剣好きしか居なかった。
「アレ?山崎さん。珍しいですね」
沖田が山崎を見付け、きょとんとした顔で訊いてきた。
「任務の合間に稽古しておかねばな」
「良かったら、お相手しますよ」
沖田は、手にしている木刀を握り直した。
(…彼が相手ならば、手加減せずに済む…)
山崎は殺気を剥き出しにして木刀を振るった。
「もう降参です、山崎さん」
大分剣を交えた後、お互い荒い息を吐きながら、木刀を収めた。
「…何か、あったのですか?」
ふと、心配そうに呟く沖田。
(…こんな若者に気付かれるとは、オレも甘いな…)
山崎は自嘲し、
「あぁ、ちょっと、な」
適当に誤魔化し、礼を述べると道場を後にした。
井戸で冷水を頭から被ると、血が昇って火照っていた頭がヒヤリと冷えていく。
(…これでいいんだ。もう、迷うまい……)
山崎の心の中もヒンヤリと冷え、いつもの落ち着きを取り戻していった。
「山崎くん、小夜を呼んで来てくれないか」
土方に言われた山崎が屯所内を捜すと、小夜は庭で洗濯物を干していた。
「小夜」
名を呼ぶと、嬉しそうな顔で振り返る。
「山崎さん!」
洗濯物を放り、山崎の方へ駆け寄ると、
「どうかされましたか?」
笑顔で首を傾げる仕草が愛らしい。
「仕事中すまないが、副長がお呼びだ」
「…土方さん、が…」
少し表情が翳った気がしたが、小夜は大人しく山崎に従って副長室まで付いて来た。
「副長、入りますよ」
返事を確認し、障子を開けた。
「小夜を連れてきました」
「あぁ、山崎くん、ご苦労だった。小夜、入れ」
山崎は一礼して副長室を退室した。
が、どうしても気になり、副長室のすぐ外で、気配を消して土方の次の言葉を待つ。
中から聞こえてきたのは、自分をどう思うか?と、彼女に問う内容だった。
(…やはり、副長は小夜を自分のモノにするおつもりだ)
山崎は眉をひそめ、冷めた目を伏せ、気配は消したまま、足早にその場を去った。
(…副長が誰と恋仲になろうが問題無いし、彼女が誰の女房になろうがオレには関係無い。
オレは監察方だし、幕府の犬なのだから、恋だの愛だのそんなモノに現を抜かすわけにはいかないのだ……)
今、こうして思い悩んでいる自分自身にも腹が立った。
(…妙に暴れだしたい気分だ…)
山崎は、そのまま道場に向かう。
全体稽古は終わったのだろう、何人かの剣好きしか居なかった。
「アレ?山崎さん。珍しいですね」
沖田が山崎を見付け、きょとんとした顔で訊いてきた。
「任務の合間に稽古しておかねばな」
「良かったら、お相手しますよ」
沖田は、手にしている木刀を握り直した。
(…彼が相手ならば、手加減せずに済む…)
山崎は殺気を剥き出しにして木刀を振るった。
「もう降参です、山崎さん」
大分剣を交えた後、お互い荒い息を吐きながら、木刀を収めた。
「…何か、あったのですか?」
ふと、心配そうに呟く沖田。
(…こんな若者に気付かれるとは、オレも甘いな…)
山崎は自嘲し、
「あぁ、ちょっと、な」
適当に誤魔化し、礼を述べると道場を後にした。
井戸で冷水を頭から被ると、血が昇って火照っていた頭がヒヤリと冷えていく。
(…これでいいんだ。もう、迷うまい……)
山崎の心の中もヒンヤリと冷え、いつもの落ち着きを取り戻していった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】おしどり夫婦と呼ばれる二人
通木遼平
恋愛
アルディモア王国国王の孫娘、隣国の王女でもあるアルティナはアルディモアの騎士で公爵子息であるギディオンと結婚した。政略結婚の多いアルディモアで、二人は仲睦まじく、おしどり夫婦と呼ばれている。
が、二人の心の内はそうでもなく……。
※他サイトでも掲載しています
すべてはあなたの為だった~狂愛~
矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。
愛しているのは君だけ…。
大切なのも君だけ…。
『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』
※設定はゆるいです。
※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる