15 / 30
「いい年して―やさしくなれた」第1章
7話 いい年して変われるの
しおりを挟む
職場でパート仲間が口にする。
「うちの孫がスマホ教えてくれてね」「いい年して覚えられる?」
笑い合う昼下がり。
——“いい年して変われる”、それがどれほど誇らしいことか。
昼下がりの休憩室。
湯気の立つ紙コップのコーヒーと、スーパーの袋に入った菓子パン。
蛍光灯の音がかすかに響いている。
「うちの孫がさ、スマホ教えてくれてね」
「えー、いいじゃない」
「でも、覚えられなくて。ほら、いい年してでしょ」
笑いながら、千代子が手を振った。
その隣で、美津代はやさしく笑った。
「でも、覚えたんでしょう?」
「うん、まぁね。スタンプの送り方とか」
「すごいじゃない」
言葉にした瞬間、自分でも胸の奥が少し温かくなった。
昔は、変わることが怖かった。
歳を重ねるほど、「もういいや」「今さら」と口にする機会が増えた。
でも──。
昨日、孫に教わって初めて送ったスタンプ。
画面に「ばあば、かわいい!」と返ってきたメッセージ。
あの一言だけで、世界がちょっと広がった気がした。
「いい年して変われるって、案外、誇らしいことよ」
ぽつりとつぶやくと、隣の千代子が目を丸くした。
「ほんとね。なんか、若返った気がする」
二人して笑い合う。
窓の外では、午後の日差しが穏やかに街を照らしていた。
バスが通り過ぎるたび、光がテーブルの上をかすめていく。
美津代はスマホを取り出し、そっと画面をなぞった。
カメラを開いて、休憩室のコーヒーとパンを撮る。
「これ、送ってみようかな」
「いいね!」
笑い声が、午後の空気に溶けていった。
──“いい年して変われる”、それがどれほど誇らしいことか。
「うちの孫がスマホ教えてくれてね」「いい年して覚えられる?」
笑い合う昼下がり。
——“いい年して変われる”、それがどれほど誇らしいことか。
昼下がりの休憩室。
湯気の立つ紙コップのコーヒーと、スーパーの袋に入った菓子パン。
蛍光灯の音がかすかに響いている。
「うちの孫がさ、スマホ教えてくれてね」
「えー、いいじゃない」
「でも、覚えられなくて。ほら、いい年してでしょ」
笑いながら、千代子が手を振った。
その隣で、美津代はやさしく笑った。
「でも、覚えたんでしょう?」
「うん、まぁね。スタンプの送り方とか」
「すごいじゃない」
言葉にした瞬間、自分でも胸の奥が少し温かくなった。
昔は、変わることが怖かった。
歳を重ねるほど、「もういいや」「今さら」と口にする機会が増えた。
でも──。
昨日、孫に教わって初めて送ったスタンプ。
画面に「ばあば、かわいい!」と返ってきたメッセージ。
あの一言だけで、世界がちょっと広がった気がした。
「いい年して変われるって、案外、誇らしいことよ」
ぽつりとつぶやくと、隣の千代子が目を丸くした。
「ほんとね。なんか、若返った気がする」
二人して笑い合う。
窓の外では、午後の日差しが穏やかに街を照らしていた。
バスが通り過ぎるたび、光がテーブルの上をかすめていく。
美津代はスマホを取り出し、そっと画面をなぞった。
カメラを開いて、休憩室のコーヒーとパンを撮る。
「これ、送ってみようかな」
「いいね!」
笑い声が、午後の空気に溶けていった。
──“いい年して変われる”、それがどれほど誇らしいことか。
0
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる