イイ人やめました。うまく行ってたんだけどな

田中葵

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2 前日譚

【主人公】支えてくれてる人たち

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 今日は、中学時代の仲間に会う日だ。

 地元の中学は、数年前に廃校になった。
 過疎化、統廃合、効率化。
 理由はいくつもあったけれど、要するに「もう集まる場所がない」ということだけが残った。だから同窓会も、自然消滅した。

 駅前の小さな喫茶店。
 ドアを開けた瞬間、声が重なって聞こえる。

 ワイガヤ。
 あの頃のままの音量。
 一気に、時間が巻き戻る。

 制服はない。
 髪型も、立場も、みんな違う。
 それでも、顔を見た瞬間に分かる。

 「あー、変わんないね」
 「いや、そっちでしょ」

 どうでもいいやり取りが、妙にあたたかい。

 コーヒーが来る前に、もう話は散らばっていく。
 仕事のこと。親のこと。戻る予定のない実家のこと。
 誰も仕切らない。結論も出ない。

 ふいに、隣に座った彼女が言った。

 「なんか、痩せたね。無理してない?」

 私は、一瞬だけ言葉に詰まる。

 「……話したいことあったら、聞くよ」
 「困ってたら、力になるから。言ってよ」

 その言い方が、あまりにも昔と同じで。
 評価も、分析も、心配の理由探しもない。

 ただの、声。

 涙腺が、少しだけゆるんだ。
 泣くほどじゃない。
 でも、ちゃんと揺れた。

 ここでは、私は
 役に立つ人でも
 気が利く人でも
 便利な人でもない。

 ただの「同級生」だ。

 店を出る頃には、もう夕方で、
 次に会う約束も決めないまま、みんな散っていく。

 それでいい。
 それがいい。

 私は、少しだけ背筋を伸ばして、駅へ向かった。




●次回から
「ある人」の過去について更新します
(全5話予定)
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