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腑に落ちない
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色々と考える間もなく、カウンター下に置かれたファイルに手がのびた。
暴力に訴えるのはよくないって知ってる。
知ってるんだけど、でも、本気で。
かなり本気で、このバカの頭をぶん殴りたくなった。
「平田さん、ちょっと」
がしっとファイルを掴んだ瞬間に、事務室の方から、緩やかに呼び掛けられる声。
暴力行為が人前で行われなかったのは、ひとえに、部長のおかげ。
ものすごく紙一重のタイミングで、部長からのお呼びがかかったから。
「……はい。じゃあ、山本さん、部長に呼ばれてるんでこれで」
「ねえ、返事は?」
呼ばれてるって言ってんのに、まだ言うか。
「すいません、呼ばれてますから」
「うん。だから、返事だけ聞かせてよ」
これだけ聞かせてっていう態度に、ため息ひとつ。
さすがに部長に呼ばれてるっていう状態が、どういうことかっていうのは読み取れたらしい。
一応はサラリーマンだものね。
「お断りします。山本さんと一緒に出掛ける理由なんて、どこにもないですから」
「山本さん……て、何でそんな他人行儀なわけ?」
「他人でしょ」
納品伝票に間違いなく『平田』と、あたしのシャチハタ印が押されているのをもう一度確認して、あたしは伝票を突き返す。
「もう関係のない、赤の他人ですから」
事務室に入ると、周囲からの視線が痛い。
ホントに、申し訳ない気分になる。
あたしが自ら関わりに行ってるわけではないけど、あの人の場の読めなさときたら。
「無事に諸々回避できた?」
部長のデスク前に立つと、両手の人差し指で雨だれのようにパソコンを打ちながら、部長がそれだけ言った。
「はい。ありがとうございます」
「君のせいじゃないのはわかってるけど、ちょっと困るよね。雰囲気悪くなるし。カウンター対応、担当の人たちで考えて」
「はい」
スイマセンでしたと頭を下げると、ディスプレイから顔をあげた部長が、思いついた顔で聞いてきた。
「君、今日、遅番だっけ?」
大学図書館っていう普通の図書館とはちょっと違う役割上、ここは開館時間が長い。
学生さんや大学の研究者が資料を探しに来るので、それに合わせて開館しているから、朝も早いし、夜も遅い。
それに対応して、勤務シフトが組まれている。
朝早いのが早番で、夜遅いのが遅番。
基本的にオール、と呼ばれる勤務は、ほとんどないけれど。
いわゆる一般企業さんの就業時間は中番、と呼ばれる勤務時間帯だ。
「中番です」
「んー……微妙だね。誰かに代わってもらった方がいいかな。学生にまぎれて帰れる時間に帰ってね」
「え?」
「問題が起きてからじゃ、遅いから。営業さんなんて時間の融通はつくだろうけど、少しでも人の目がある時に帰宅してください」
「はい」
いい子の返事をして頭を下げる以外、どうできたっていうんだろう。
上司としては確かにそういう判断をするしかないんだろうなって思う。
元夫は、何故か今日は特にしつこかったし、このまま付きまとわれたりしても困る。
職場的にも、問題は避けたいんだろう。
でも。
あたしは、ちゃんとあたしの生活がしたいのに。
なんで、こんなことで邪魔されなくちゃいけないのって、引っ掛かりを感じる。
こんな風に思いたくもないし、さっさとあの人にはかかわらずに生きていきたいと思っているのに。
ああ、もうホントに、さあ。
あたしの人生、引っ掻き回して楽しいか?
暴力に訴えるのはよくないって知ってる。
知ってるんだけど、でも、本気で。
かなり本気で、このバカの頭をぶん殴りたくなった。
「平田さん、ちょっと」
がしっとファイルを掴んだ瞬間に、事務室の方から、緩やかに呼び掛けられる声。
暴力行為が人前で行われなかったのは、ひとえに、部長のおかげ。
ものすごく紙一重のタイミングで、部長からのお呼びがかかったから。
「……はい。じゃあ、山本さん、部長に呼ばれてるんでこれで」
「ねえ、返事は?」
呼ばれてるって言ってんのに、まだ言うか。
「すいません、呼ばれてますから」
「うん。だから、返事だけ聞かせてよ」
これだけ聞かせてっていう態度に、ため息ひとつ。
さすがに部長に呼ばれてるっていう状態が、どういうことかっていうのは読み取れたらしい。
一応はサラリーマンだものね。
「お断りします。山本さんと一緒に出掛ける理由なんて、どこにもないですから」
「山本さん……て、何でそんな他人行儀なわけ?」
「他人でしょ」
納品伝票に間違いなく『平田』と、あたしのシャチハタ印が押されているのをもう一度確認して、あたしは伝票を突き返す。
「もう関係のない、赤の他人ですから」
事務室に入ると、周囲からの視線が痛い。
ホントに、申し訳ない気分になる。
あたしが自ら関わりに行ってるわけではないけど、あの人の場の読めなさときたら。
「無事に諸々回避できた?」
部長のデスク前に立つと、両手の人差し指で雨だれのようにパソコンを打ちながら、部長がそれだけ言った。
「はい。ありがとうございます」
「君のせいじゃないのはわかってるけど、ちょっと困るよね。雰囲気悪くなるし。カウンター対応、担当の人たちで考えて」
「はい」
スイマセンでしたと頭を下げると、ディスプレイから顔をあげた部長が、思いついた顔で聞いてきた。
「君、今日、遅番だっけ?」
大学図書館っていう普通の図書館とはちょっと違う役割上、ここは開館時間が長い。
学生さんや大学の研究者が資料を探しに来るので、それに合わせて開館しているから、朝も早いし、夜も遅い。
それに対応して、勤務シフトが組まれている。
朝早いのが早番で、夜遅いのが遅番。
基本的にオール、と呼ばれる勤務は、ほとんどないけれど。
いわゆる一般企業さんの就業時間は中番、と呼ばれる勤務時間帯だ。
「中番です」
「んー……微妙だね。誰かに代わってもらった方がいいかな。学生にまぎれて帰れる時間に帰ってね」
「え?」
「問題が起きてからじゃ、遅いから。営業さんなんて時間の融通はつくだろうけど、少しでも人の目がある時に帰宅してください」
「はい」
いい子の返事をして頭を下げる以外、どうできたっていうんだろう。
上司としては確かにそういう判断をするしかないんだろうなって思う。
元夫は、何故か今日は特にしつこかったし、このまま付きまとわれたりしても困る。
職場的にも、問題は避けたいんだろう。
でも。
あたしは、ちゃんとあたしの生活がしたいのに。
なんで、こんなことで邪魔されなくちゃいけないのって、引っ掛かりを感じる。
こんな風に思いたくもないし、さっさとあの人にはかかわらずに生きていきたいと思っているのに。
ああ、もうホントに、さあ。
あたしの人生、引っ掻き回して楽しいか?
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