剣に祈りを

のあ

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氷雪の試練編

試練の洞窟

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「この先にあるのが、“試練の洞窟”だ」

セリウスが指さしたのは、氷壁に穿たれた真っ暗な裂け目だった。吹き出す冷気は、今までの寒さとはまるで違った。まるで、生きた何かが中に潜んでいるかのような、そんな圧。

「この中に巣食っているのは、帝国がかつて実験に使っていた魔獣のなれの果て。理性はない。ただ殺すために動く」

セオは息を飲む。

「ひとりで、行くんですか?」

「そうだ。だがこれは、お前自身の“闇”との戦いでもある。剣ではなく、意志を試される場所だ」

セオは無言で頷いた。マントを締め直し、剣の柄を握る。

「行ってきます、師匠」

洞窟の中は、まるで時間が止まったように静かだった。天井から垂れる氷柱、足元には砕けた骨。奥へ進むほど、闇は濃く、冷たくなっていく。

そして──。

「……セオ……」

聞こえたのは、リナの声だった。

振り返ると、そこにいた。あの夜と同じ、血に濡れた姿のリナが。

「どうして、助けてくれなかったの……?」

「──っ!」

セオは剣を抜くが、その手が震える。足が、動かない。あの時の光景が、頭の中に溢れてくる。燃える村、叫び声、血の匂い──。

「やめろ……やめてくれ……!」

リナの幻影は、泣きながら彼に近づいてくる。

「君は、誰も守れなかったくせに、また守ろうとしてるの?」

「……違う。俺は──」

セオは歯を食いしばり、剣を振るった。
幻影は霧のように消え、代わりに、巨大な氷魔獣が現れる。灰色の毛皮と黒い牙、氷の鱗をまとった異形。

「……やるしか、ないんだ!!」

魔獣が咆哮し、地面が揺れる。セオは斬りかかるが、剣は跳ね返された。冷気の波に吹き飛ばされ、岩に叩きつけられる。

(ダメだ……このままじゃ……)

そのときだった。

剣を握る手が、自然と祈るように重なった。リナの笑顔、セリウスの言葉、すべてが胸に蘇る。

「お願いだ、力を貸してくれ……!」

刹那、剣が淡い青白い光を帯びた。
まるで、氷の中に灯る炎のように、美しく、静かに。

セオは立ち上がった。

「これは、俺の祈りだ。誰も、もう失わせない!」

次の瞬間、剣が魔獣を貫いた。

轟音。閃光。そして──静寂。

魔獣は崩れ落ち、粉雪となって消えていった。

セオはその場に膝をつき、剣を見つめた。

(この剣で、俺は……)

「俺は、進む。この力で、未来を変えるんだ」

──洞窟の外で待つセリウスが、ゆっくりと目を開けた。

「……あいつ、本当に行きやがったな」

氷の風が、静かに吹き抜けた。
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