スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第34話 魔剣についてとベルベルさんです #1

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――コンコンコン
静かな部屋に響いたノックの音に一瞬ピクリと眉を動かしたブラック。
「おはようございますギルマス、入ってもよろしいですか?」
次に扉の向こうから聞こえてきたのはピノの声だ。
「うむ、おはようピノ君。入りたまえ」

部屋に入ってきたピノにブラックは軽く微笑んだ。
「昨日は王都に行ったのだったな。どうだ、久し振りの王都は楽しめたかね」
「ええ、とっても。同期の友人にも久々に会えましたしね。あ、これ頼まれてた胃薬です」
そう言ってピノは、王都の有名な薬剤店「マッキョ」の紙袋を手渡した。
「おお、ありがとう。……最近少し痛むようになってきてな」
軽く胃の辺りをさすりながらそうボヤくブラックに、ピノは出来るだけ何気ない感じを装いつつ声を掛けた。
「後でカルア君も来ますから――すぐ飲めるように1包用意しておきます?」

だがその言葉に、ブラックの右手はピタリと止まった。
そしてピノに向けたその顔は――哀しい程に引きっている。ある予感によって。
「ああ……ちょっと待ってくれるかなピノ君。ひょっとしてだが、『カルア君の持ってくる用件に胃薬が必要になる』……まさか君はそう言うのかね?」
「私も内容を聞いた訳ではないのでそれは何とも。ただ……『誰かに見せる前にギルマスに相談するように』と昨日モリスさんに言われたそうです」

「くっ……確定だな」
「ええ、『くっ確』かと……残念ですが。それで、お茶とお水どちらで飲まれますか?」
さする動きを止めた右手は、何時しか胃を押さえるかのように力が込められていた。
「はぁぁ、水で頼むよ」
「承知しました。……くれぐれもお気を強く持って下さいね」

ピノが退出して間もなく、ブラックの耳に受付の方から響く元気な声が届く。
「おはようございまーす。あっ、ピノさんおはようございます。そうだ、聞いて下さいよ。今朝ご近所の奥様方が『昨夜ゆうべのあの匂いは一体何だ』って物凄い勢いで――」
ああ、もう間もなくカルアはこの執務室へとやって来るだろう。
目を閉じて深いため息を一つ吐き、ブラックはそっと覚悟を決めた――



「おはようございますギルマス」
「ああ、おはようカルア君。昨日は王都に行ったそうだな。君は確か王都は初めてだったか? どうだったかね」
「はい。学校も見れましたし、王宮も初めてみました。あっでも王宮は外からだけでしたけど。あとギルド本部でモリスさんのお手伝いを少ししてから帰ってきたんです」

「ほう、モリス氏の手伝いか。どんな内容だったか訊いても?」
「大丈夫だと思います。遠見の音声を遮断する魔道具の研究だったので。あ、もう完成してて今日発表するそうですよ」
「そうか、いよいよか。これでようやくカルア君も危険な状態から抜け出せそうだな。最も今日ここに来るまでの間に何事もなかったら――の話だが?」

あれ? もしかしてギルマス昨夜の剣の事を言ってる……?
あ、ピノさんが事前に少し話しておいてくれたのかのかな?
だったらもうこのまま話し始めちゃっても大丈夫だよね。

「その事なんですけどギルマス――」
「うむ、君が何かしでかしたらしいという話は聞いている。大丈夫、私の覚悟はもう出来ているから、詳しい話を聞かせてくれるかね」
「はい。……実はですね、昨夜この剣を錬成で作ったんですけど――」

昨日の魔剣をテーブルに出すと、ギルマスは軽く目を見開いた。
「これは……」
剣を手に取って色々な角度から眺め、徐々に表情を険しくしていったギルマスは、やがて僕に尋ねた。
「カルア君、聞かせて欲しいのだが――君はこの剣を『何』だと認識している?」

『何』……か?
そう訊かれたら、それはもちろん――
「『魔剣』……です。『魔剣』を作ってみようと思って作りました」
「やはりそうか……」
目を閉じて顔を上に向けたギルマス。
暫くそのまま動きを止めていたけど、やがて視線をピノさんに移すとどことなく悲しそうな声で声を掛けた。
「あーーピノ君……済まないがさっきのアレ、用意してくれるかね」
「はい、ただ今」

ピノさんはすぐ脇のワゴンから薬みたいな包みを取り、コップに入った水と共にギルマスへと手渡した。
「どうぞ」
「うむ、すまんな。どうやらピノ君の言った通りこれが必要になったようだ」
そう言って、その薬らしきものをサラサラと口に入れ、そのまま水で流し込む。
「ふう……」

そして――
「それでは話の続きだ。それで、その魔剣は完成しているのかね?」
「はい。一応考えた通りの付与は出来ました」
「そうか、ちなみにその付与の内容とは?」
「付与したのは時空間魔法で、刃の部分に空間の切断、それと腹には空間の断面による【界壁】を付けました」
「成程、それでその付与によってどのような効果が?」
効果といえば勿論――
「切れ味が良くなって、折れにくくなっていると思います」

「そうか……効果だけだとさほど問題無さそうに聞こえるところが逆に恐ろしいな。だがそれを実現している付与を聞くと――本当の意味で恐ろしいな。それでその剣、試し切りなどはしてみたかね?」
「はい。薪割りが前よりも簡単になりました」
「…………」

あれ?
ギルマス、顎に手を当てて何か考え込んでる……?

「その答えからは理解し難いというか理解し辛いというか……これはやはり実際に見てみない訳にはいかんか……。カルア君、その魔剣は私でも使用出来るのかね?」
あ、それは……
「僕の魔力にだけ反応するようにしちゃったので、僕しか……」
「そうか、分かった。では試し斬りは君にお願いしよう。これから訓練室に移動するぞ」
「あっはい、分かりました」
「そういう事だからピノ君、訓練室の人払いを頼む」
「はい、すぐに」
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