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第60話 殲滅の後にその事件は起きました #1
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翌朝――
テントを出ると、辺りは仄かな湿気を帯びた森の香りに包まれていた。
思い切り伸びをして大きく息を吸い込んで……うーーん、森の朝って感じ!
「やっと起きたわね、カルア」
「おはよーアーシュ、みんなも早いね」
今日は初狩りの二日目、午前中に少し探索してから街へ帰る予定だ。明日は普通に学校だからね。
「あっ、おはようございますクーラ先生」
そのままワイワイと朝食の支度を始めていると、クーラ先生も起きてきた。
「おはよう……早いのね」
「何故か早く目が覚めちゃったのよね。森の中にいるからかしら?」
そんなアーシュの言葉にクーラ先生は小さく肩を竦めた。
「それは寝ていても普段より気を張っているからよ、アーシュ。野営は眠りが浅いから疲れも抜けにくいの。2~3日くらいなら大丈夫だろうけど、野営が続くと少しずつ疲れが蓄積していくから、長期の仕事を請ける場合とかは注意してね」
そうか……これまで何日間も野営を続けた事は無かったけど、そう言えば確かに野営の次の日って結構疲れが溜まってたかも。
「あれ? そう言えばアイ達はまだ寝てるのかな?」
「だと思うわ。昨夜はあなた達の行動に色々考えされられたみたいだから。戦闘以外での魔法の有効性とかは特にね。……まあそれは私も一緒なんだけど」
「ああ、確かにああいった使い方って便利ですよね。僕もカルア君に教えてもらうようになってから、魔法への考え方が変わったって言うか――」
「そう……だと思ったわ……」
僕をちらっと見たクーラ先生。その視線に込められていた、『やっぱりあなたが犯人だったのね』には気付かない振り。……ノルトのあれは僕のせいじゃないから。
――僕がノルトに教えたのは、錬成の基礎とかちょっと気付いた事とかだけなんだからね。勘違いしないでよねっ。
そんな話をしていると、ようやくアイ達も起きてきた。
目の周りが少し腫れてるのは夜更かししたからかな? やっぱり夜はちゃんと寝なきゃね。
そして間もなく、テーブルには朝食のプレートが並んだ。
今日の朝食もワルツシェフ渾身の一皿。その名も『静かな森の朝ごはん ~色鮮やかな原色きのこ達の宴、ちぎってきた葉っぱを添えて~』だって。
ごちそうさま、ピリピリな感じが凄く美味しかったよ! なでなで……
朝ご飯が終わったらそれぞれテントを片付けて、テーブルセットはノルトが土に還して――
「じゃあ出発しましょう。」
森の奥へ、いざ出発!!
そして進む事およそ1時間――
ここまで時々鳥の声が聞こえてくるくらいで、森の中は凄く静か――っていうか静か過ぎない?
「クーラ先生、ちょっとこれ見て下さい」
アイからクーラ先生にそんな報告。何か見付けたのかな?
「これなんですけど……さっきから足元くらいの高さに何かが齧った後がたくさん――」
みんなが見守る中、クーラ先生が屈んでそれを確認して――
「これは……ラット? ――にしては少し大きいわね。小さなウルフくらいありそうだけど……。でもそんな大きなラットなんて――」
とここでハッと何かに気付いた様子。
「カルア君、ちょっとこの付近を【俯瞰】して魔物の反応を探して」
さっきから【俯瞰】で周囲の把握は続けてるけど、その範囲に魔物の反応はない。
じゃあちょっと範囲を広げて――あっ、これって!
「ゴブリンの……集落!?」
「やっぱり……数は分かる? あと場所は?」
「ええと、数は10匹、場所は……この方向にまっすぐ20分くらい歩いた先です」
それを聞いたクーラ先生は少し考えてから、深刻な表情で語り始めた。
「みんな、ゴブリンの集落が優先殲滅対象に指定されている事は知ってるわね? しかもこの集落はゴブラットを飼っている可能性が高いの」
ゴブラット……って確かゴブリンみたいな顔をしたラットで……
「ゴブラットは森の植物を食い荒らす害獣よ。大きさはラビットの倍以上あって繁殖力ももの凄く高い。そして――何かの切っ掛けで爆発的に繁殖して、森中の食べ物を食い尽くしてしまう事があるの」
あれ? それって昔聞いた事が――いや読んだ事がある!
「そして森を食べ尽くしたゴブラットは、次の食べ物を求めて大移動を開始する。進む先に人の住む場所があればその全てを食べ尽くしてね。ゴブラットの大群が通り過ぎた時にはそこにあった全てが消滅している。畑も家畜も――そしてそこに住む人たちもね」
そう、あの物語だ!
そんな危機に陥る寸前だった村に訪れ、その村を救ったのがあの主人公だったんだ!
「幸いこの集落はゴブリンの数も少ないし、私達だけで十分殲滅出来るわ。それにもし万が一不測の事態が起きたとしても、あなた達の事は私が命に代えてでも護るから。――という訳でみんな、今日の予定は変更よ。奴らを殲滅、駆除するわ!」
分かってるよ主人公、僕達で奴らを殲滅する。
クーラ先生にこれ以上不吉な事なんか言わせるつもりはないよ!
テントを出ると、辺りは仄かな湿気を帯びた森の香りに包まれていた。
思い切り伸びをして大きく息を吸い込んで……うーーん、森の朝って感じ!
「やっと起きたわね、カルア」
「おはよーアーシュ、みんなも早いね」
今日は初狩りの二日目、午前中に少し探索してから街へ帰る予定だ。明日は普通に学校だからね。
「あっ、おはようございますクーラ先生」
そのままワイワイと朝食の支度を始めていると、クーラ先生も起きてきた。
「おはよう……早いのね」
「何故か早く目が覚めちゃったのよね。森の中にいるからかしら?」
そんなアーシュの言葉にクーラ先生は小さく肩を竦めた。
「それは寝ていても普段より気を張っているからよ、アーシュ。野営は眠りが浅いから疲れも抜けにくいの。2~3日くらいなら大丈夫だろうけど、野営が続くと少しずつ疲れが蓄積していくから、長期の仕事を請ける場合とかは注意してね」
そうか……これまで何日間も野営を続けた事は無かったけど、そう言えば確かに野営の次の日って結構疲れが溜まってたかも。
「あれ? そう言えばアイ達はまだ寝てるのかな?」
「だと思うわ。昨夜はあなた達の行動に色々考えされられたみたいだから。戦闘以外での魔法の有効性とかは特にね。……まあそれは私も一緒なんだけど」
「ああ、確かにああいった使い方って便利ですよね。僕もカルア君に教えてもらうようになってから、魔法への考え方が変わったって言うか――」
「そう……だと思ったわ……」
僕をちらっと見たクーラ先生。その視線に込められていた、『やっぱりあなたが犯人だったのね』には気付かない振り。……ノルトのあれは僕のせいじゃないから。
――僕がノルトに教えたのは、錬成の基礎とかちょっと気付いた事とかだけなんだからね。勘違いしないでよねっ。
そんな話をしていると、ようやくアイ達も起きてきた。
目の周りが少し腫れてるのは夜更かししたからかな? やっぱり夜はちゃんと寝なきゃね。
そして間もなく、テーブルには朝食のプレートが並んだ。
今日の朝食もワルツシェフ渾身の一皿。その名も『静かな森の朝ごはん ~色鮮やかな原色きのこ達の宴、ちぎってきた葉っぱを添えて~』だって。
ごちそうさま、ピリピリな感じが凄く美味しかったよ! なでなで……
朝ご飯が終わったらそれぞれテントを片付けて、テーブルセットはノルトが土に還して――
「じゃあ出発しましょう。」
森の奥へ、いざ出発!!
そして進む事およそ1時間――
ここまで時々鳥の声が聞こえてくるくらいで、森の中は凄く静か――っていうか静か過ぎない?
「クーラ先生、ちょっとこれ見て下さい」
アイからクーラ先生にそんな報告。何か見付けたのかな?
「これなんですけど……さっきから足元くらいの高さに何かが齧った後がたくさん――」
みんなが見守る中、クーラ先生が屈んでそれを確認して――
「これは……ラット? ――にしては少し大きいわね。小さなウルフくらいありそうだけど……。でもそんな大きなラットなんて――」
とここでハッと何かに気付いた様子。
「カルア君、ちょっとこの付近を【俯瞰】して魔物の反応を探して」
さっきから【俯瞰】で周囲の把握は続けてるけど、その範囲に魔物の反応はない。
じゃあちょっと範囲を広げて――あっ、これって!
「ゴブリンの……集落!?」
「やっぱり……数は分かる? あと場所は?」
「ええと、数は10匹、場所は……この方向にまっすぐ20分くらい歩いた先です」
それを聞いたクーラ先生は少し考えてから、深刻な表情で語り始めた。
「みんな、ゴブリンの集落が優先殲滅対象に指定されている事は知ってるわね? しかもこの集落はゴブラットを飼っている可能性が高いの」
ゴブラット……って確かゴブリンみたいな顔をしたラットで……
「ゴブラットは森の植物を食い荒らす害獣よ。大きさはラビットの倍以上あって繁殖力ももの凄く高い。そして――何かの切っ掛けで爆発的に繁殖して、森中の食べ物を食い尽くしてしまう事があるの」
あれ? それって昔聞いた事が――いや読んだ事がある!
「そして森を食べ尽くしたゴブラットは、次の食べ物を求めて大移動を開始する。進む先に人の住む場所があればその全てを食べ尽くしてね。ゴブラットの大群が通り過ぎた時にはそこにあった全てが消滅している。畑も家畜も――そしてそこに住む人たちもね」
そう、あの物語だ!
そんな危機に陥る寸前だった村に訪れ、その村を救ったのがあの主人公だったんだ!
「幸いこの集落はゴブリンの数も少ないし、私達だけで十分殲滅出来るわ。それにもし万が一不測の事態が起きたとしても、あなた達の事は私が命に代えてでも護るから。――という訳でみんな、今日の予定は変更よ。奴らを殲滅、駆除するわ!」
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