スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

文字の大きさ
121 / 278

第59話 冒険初日にみんながんばりました #4

しおりを挟む
そんな感じで狩りは進み、時間はそろそろ夕方に差し掛かる頃。森の中は暗くなるのが早いから、そろそろ――
「野営の準備を始めないとね」

うーーん、この近くに開けた場所って無いんだよねえ。どうするノルト?
「じゃああの辺りを『整地』しちゃおうか」
僕の視線で言いたい事が分かったのか、ノルトは少し離れた場所を指差した。
「そうね、じゃあノルトお願い。あたし達ここで待ってるから」
「りょーかい。あ、ネッガーだけちょっと手伝いをお願い。あの木を切り倒して椅子とテーブルにしちゃってよ」
「分かった」

ネッガーが剣を軽く横に振ると、その太い幹は剣筋そのままに切断された。
えっ、その剣ってただ折れないだけだよ? 【空間ずらし】とか付与して無いよ?
そんな僕の戸惑いとかは一切気付く事なくネッガーは作業を続ける。枝を落として……皮を剥いて……そしてあっという間に綺麗な丸太の出来上がり。
その丸太を満足げに見つめ、ネッガーはノルトに声を掛けた。
「いいぞ、乾かしてくれ」

ノルトは『了解っ』と軽く応え、そして丸太に手を翳すと――
「【分離】」
木は一瞬で乾燥――というより『木の中から程よく水分が消え去った』ってのが正しいかな。前に聞いた時、『全部の水分を【分離】させないのがポイントなんだよ』って言ってたから。

ビックリだよね、ノルトがやって見せるまで植物とかを錬成するなんて思いも付かなかったよ。でも言われてみれば『なぜ思い付かなかったんだろう』って逆に不思議に思える。

乾燥が済んだ丸太を持ってネッガーがその場を離れると、ノルトは杖を地面に突いて――そこからがいよいよ本領発揮。
「さあ始めるよー。まずは【分解】」
何とこの【分解】、ノルトのオリジナル錬成なんだ。
ノルトが言うには『ドロドロに溶かせるんだったら粉々にだって出来るでしょ? それって【分離】の考え方とそんなに変わらないじゃん』だって。

これもやっぱり『言われてみれば確かに!』って感じ。
でも今やってるこれ、見た目は【分解】っていうより【粉砕】じゃないかな?
だって、周りに生えている木が次から次へと粉々になってくんだもの。
「【分解】【分解】【分解】【分解】……」
そしてその声が止まった時――
その前にあるのは、さっきまで木だったものの山とひらけた地面だった。

でもノルトの見せ場はまだまだ終わらない。
「よし、じゃあ次は【緩解】からの【混合】」
土魔法と錬成の連続発動――
【分解】によってできた木の屑は【緩解】によって柔らかくなった地面と混ざり合い、そして目の前に広がるのはまるで畑みたいに柔らかな土の地面だけになった。

「それじゃあ最後の仕上げ、【圧縮】っと」
柔らかく盛り上がっていた土は【圧縮】されて固く平らに。こうしてさっきまで木が生い茂る森の一部だったその場所は、ちょっとした広場へとその姿を変えた。『整地』を開始してからたったの5分、土プロの本気恐るべし……

「よし、こっちも出来たぞ。後は頼む」
そう言ってネッガーが綺麗に切ってきた木の板を並べると、ここでまたまたノルトの出番。
「いくよ、【癒着】」
ここでまたノルトのオリジナル錬成、【癒着】の登場。
【癒着】は接着したい部分だけを【融解】【凝固】して一体化させる魔法だ。並べた木の板は一枚の大きな板――テーブルの天板になった。
天板が出来れば後はそれに足を付けるだけ。
「【癒着】」
こうして出来上がったテーブルの周りに切り株を椅子として並べれば――はい、テーブルセットの完成だ。

――ノルト、たった2週間でこの仕上がり。もう錬成でノルトに勝てる気がしないよ……

と、ここで陰のリーダーアーシュのチェックが入る。
「ちょっとノルト、この辺の地面濡れてるじゃないの。もうちょっと乾かしておきなさいよね」
「ああそうか、ゴメンゴメン。【分離】っと。……これどうしようか?」
【分離】によって地面の土から除去され、空中に浮かんでる綺麗な真水。それを見たアーシュは、【収納】から大きな鍋をいくつか取り出してテーブルに並べた。
「料理とか飲み水に使うから、この鍋に入れちゃって。入りきれない分は氷の塊にして隅に置いといてくれる?」
うーーん、なんて無駄がない……

場所が出来たから次はみんなで解体の時間。
最初は恐る恐るって感じだったけど、やってるうちに慣れてきたみたい。
皮、骨、肉、腱、内臓、そして……黒い魔石。
ラビットもボアも無事に解体が完了した。

食べるもの、持ち帰るもの、廃棄するものに分けたら、持ち帰るものはアーシュが【収納】し、廃棄するものはノルトが土に還した。

そんな僕達の様子を静かに見つめるクーラ先生やアイ達の表情は、今まで何度も見てきたあの人達のそれと同じで……
でもきっと大丈夫。そんな表情をしてきたみんな、今はすっごく楽しそうだから。
ほら、今朝も楽しそうだったでしょ?

解体が終われば食材も出来る。それを調理すれば食事の時間。
ここで意外な才能を見せたのがワルツだった。何と、【加熱】と【冷却】を器用に使いこなし、あっという間に全員分の夕食を一人で作っちゃった。
そんなワルツの料理は、ピノさんのとは違うちょっと変わった一品。今日のメニューは『賑やかな森の夕べ~兎と猪が踊る肉の響宴、もぎたて生レバーとともに~』だって。
その夕食を食べながらワルツから聞いたんだけど、ワルツの家って地元で有名なレストランなんだって。
そしたら今度みんなで行こうよなんて話になって……ああ、パーティって最高!!

食事の後は野営の時間。交代で見張りをしながらゆっくり休もう。
じゃあみんな、一日目お疲れさま。明日もがんばろう!



夜のテントにて――
「先生、私これ以上あれを見てたら冒険者としてダメになると思うんです。もしあれを普通って感じるようになっちゃったらって思うと……」
「僕今日自己紹介のあと一言も喋ってないんだ。いる意味あるのかな?」
「わたしも。ずっと、何故ここにいるんだろうって考えてて……」
「お願い、あと一日だけ頑張って。――ごめんね、私もまさかこんな事になるなんて思わなかったの。あの子達、すっかりカル――染まっちゃって。ちょっと前まで普通の生徒だったはずなのに……」



▽▽▽▽▽▽
『こっちもだとぉーーっ!?』
ピキキーーーン☆
「あれ、今何か……あれ?」
「ピノ、報告書の件でギルマスが呼んでるわよ?」
「あ、うん……」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

一流冒険者トウマの道草旅譚

黒蓬
ファンタジー
主人公のトウマは世界の各地を旅しながら、旅先で依頼をこなす冒険者。 しかし、彼には旅先で気になるものを見つけると寄らずにはいられない道草癖があった。 そんな寄り道優先の自由気ままなトウマの旅は、今日も新たな出会いと波乱を連れてくる。

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

極限効率の掃除屋 ――レベル15、物理だけで理を解体する――

銀雪 華音
ファンタジー
「レベル15か? ゴミだな」 世界は男を笑い、男は世界を「解体」した。 魔力も才能も持たず、万年レベル15で停滞する掃除屋、トワ。 彼が十年の歳月を費やして辿り着いたのは、魔法という神秘を物理現象へと引きずり下ろす、狂気的なまでの**『極限効率』**だった。 一万回の反復が生み出す、予備動作ゼロの打撃。 構造の隙間を分子レベルで突く、不可視の解体。 彼にとって、レベル100超えの魔物も、神の加護を受けた聖騎士も、ただの「非効率な肉の塊」に過ぎない。 「レベルは恩恵じゃない……。人類を飼い慣らすための『制限(リミッター)』だ」 暴かれる世界の嘘。動き出すシステムの簒奪者。 管理者が定めた数値(レベル)という鎖を、たった一振りのナイフで叩き切る。 これは、最弱の掃除屋が「論理」という名の剣で、世界の理(バグ)を修正する物語。気になる方は読んでみてください。 ※アルファポリスで先行で公開されます。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

不死王はスローライフを希望します

小狐丸
ファンタジー
 気がついたら、暗い森の中に居た男。  深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。  そこで俺は気がつく。 「俺って透けてないか?」  そう、男はゴーストになっていた。  最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。  その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。  設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。

処理中です...