スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第62話 そして僕はある事を決心しました #1

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「パーティをやるわよ!」
ある日、アーシュが突然そんな事を言い出した。
――んだけど、どういう事?
「パーティだったらもう組んでるよね?」
初めての冒険だって行ったし。

「そのパーティじゃなくって! ああええっとそのパーティではあるんだけど……そのパーティのパーティって言うかパーティになったパーティって言うか……」

そんな感じでちょっと困った様子でゴニョゴニョ言ってたアーシュだけど、やがて考えが纏まったみたいで、いつものように胸を張った。
「だ・か・らっ! パーティ結成記念パーティよっ!! もうっ紛らわしいわねっ!!」

おおーなるほど、そっちの『パーティ』かぁ。
でも、パーティって……?

「あのさアーシュ、僕パーティって出た事無くってよく知らないんだけど……パーティってどんな事をするの?」
「ああそっか……そうねえ、普通のパーティなんかだと、ホストの挨拶があって、食事しながら歓談して、ダンスがあって、ちょっとした余興みたいなのがあって、あとはご自由にどうぞって感じかしら」

ええっ、そんな感じなの?
何だか気疲れしそうな……

「でもね、それって頭の悪いマンネリ貴族の連中が好きそうな定番パーティなわけ。そんなつまらないパーティなんかやりたくないし、参加だってしたくないわ。だから私達がやるのは『食べて飲んで騒ぐ』――そんな冒険者らしさ爆発のパーティよ!!」

それがパーティ!? それじゃあヒトツメのみんなが毎晩やってたのも……
ああそうか、だから『冒険者らしさ爆発』って事か。うん、何だかすごく楽しそうだよっ!

「いい! それ、すっごくいいと思うよアーシュ! どう、みんなっ!?」
「ああ、是非俺も参加させてもらおう」
「僕もだよ。とても楽しそうだ」
「わたしも、参加、希望」

みんなも次々賛成し、アーシュはとびっきりの笑顔を見せた。
「じゃあ決定ね。やる日が決まったら伝えるわ! みんな楽しみに待っててちょうだい!」



「――パーティをやるそうだ」
マリアベルの発した緊急集合に応じ、彼女の店に駆け付けてきた『チームカルア』の面々――彼らがマリアベルから聞いた最初の一言がそれであった。

「パーティ? ああ、冒険者登録記念とかパーティ結成記念とか……そんな感じのパーティなのかな? いやあ、楽しそうで何よりだねえ」
そう微笑ましげな表情を浮かべるモリスに対し、マリアベルの表情は沈んだままだ。

「まあそういう事らしいんだ。まあそれはいいんだよ。パーティなんだから存分に楽しめばいいのさ。なんだけどさ……」
とここで言葉に詰まり、心を落ち着けるかのように一度目を閉じる。そして小さな溜め息と共に話を続けた。

「この間アーシュに魔法の話を聞いた時にさ、あの子ってばまるでカルアみたいな事を言い始めたんだよ。それで心配になって調べてみたんだけど……どうやらパーティの子らはみんなカルアの影響を強く受けちまってるらしいんだ。アーシュも……うううっ、アーシュぅ……」

「ええっと校長? ちなみに『影響』ってどんな感じに?」
マリアベルのただならぬ雰囲気、そしてその聞き捨てならぬ内容に、オートカはそう恐る恐るそう質問した。

「うう……アーシュは属性の違う魔法を組み合わせちまうし、土属性だった子はオリジナルの錬成なんて始めちまうし、氷魔法の子は温度を自由自在に制御出来るようになっちまうし、身体強化の子は強化の制御がとんでもない事になってるそうだよ。それに……パーティ全員にカルアから『壊れない魔剣』をプレゼントされたそうだ」

一言声を発するごとに表情に差す影が濃くなってゆくマリアベル。その様子に理解の色を浮かべたオートカは――
「それはまた……では今日我々が招集されたのは、以前に校長が懸念されていた例の件をいよいよ、という事ですか」
そう参加者達を見回した。

「ああそうだ。周りがカルアの能力を中途半端に知っちまう事で、カルアが怖がられて孤立しちまうかもしれない。妙なやっかみから良くない連中に目をつけられるかもしれない。……そうなる前にパーティの子達にはカルアの秘密を伝えておくべきじゃないか――とうとうそれに答えを出す時期が来ちまった……って事さ」

その言葉に全員が頷く。だがその後に発せられた――
「ただひとつ大きな誤算は、パーティの子達自身も不味い事になりつつあるって事だ。まあつまり簡単に言っちまえば、カルアが5人になっちまった――って事になるんだろうね」
――という言葉に応える者は誰もいなかった。



「という事でパーティな訳なのさ。あの子達と話をするんだったらちょうど良い機会だと思うんだけどさ、あんた達の意見を聞かせてもらおうじゃないか」

その問いに最初に口を開いたのはオートカ。
「ちなみにそのパーティ、いつどちらで開催されるんですか?」
「ああ、近々うちのホールでやるそうだよ。あの子達が使うにはちょっとばっかり広すぎるんじゃないかって思うんだがねえ」

その場所に心当たりがあるのか、モリスが含み笑いと共に口を開いた。
「あそこかあ……確か100人以上入るくらいの広さがあったよねえ。そこを5人で貸し切りとかって……ぷくくく……」
そして少しだけ表情を改めて言葉を続ける。
「でもまあ場所はともかくとして、カルア君の事を彼らに伝えるっていうのはいいんじゃないかな。僕は賛成だよ。それかいっその事、僕達もパーティに参加しちゃえば?」

そんなモリスの言葉が潤滑剤になったのか、そこから皆思い思いに口を開き始める。
「そんな訳にはいかんじゃろ。話すのはええと思うが最後の方でちょろっと時間を作る感じじゃろうな」
「ラーバルはどうだい? 自分とこの生徒の話なんだから思うところはあるんだろう?」
「もちろん私は賛成です。生徒を守る事に繋がる話なのですから」

「私もさんせーー。その子達がどんな『いい感じ』になっちゃってるのかも見てみたいし」
「オートカとブラックは?」
そう問うマリアベルに向かって二人は頷く。当然賛成の意である。
「……じゃあみんなそれで構わないね。って事だから――」

「あの、ちょっといいですか?」
そこで声を上げたのはピノ。
「何だいピノ、あんたは反対なのかい?」
「いえ、私もいい考えだと思うんですけど、ただ……」

そこでピノは言葉を止めて全員の顔を見渡し――
「最後はカルア君に決めさせてあげてもらえませんか? やっぱり自分とその友達との事ですから、カルア君自身に決断させてあげたいんです。カルア君もきっと『伝えたい』って言うとは思うんですけど、それでもやっぱり……」

ピノのその真摯な眼差しを受け、一同は軽く息を呑む。そして――

「ああ、そりゃあ確かにピノの言う通りだ。あたしらで勝手に決めて進めていい話じゃあ無かったね。……よし、カルアの奴ももう少ししたら授業が終わるだろうから、そうしたら呼びつけてそこで決めさせるとしようか」
その言葉に今度こそ全員が頷く。

「それにしてもあのピノがねえ。いやあ、これも愛の力ってやつなのかねえ……くっくっくっ」
「ううう、ベルベルさん意地悪です……」
その場の全員から自分に向けられた微笑ましげな視線に軽く身を捩るピノであった。
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