スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第66話 モリスさんのお陰で完成しました #1

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「こんにちはー、モリスさん聞こえますか?」

チームの通信機でモリスさんに連絡してみたけど、そう言えばこの通信機って使うの初めてかも。
ピノさんとの直通通信機はこれまで何度か使ってるけどね……この前の間違い通信の後で。

『やあカルア君、君から通信してくるなんて珍しいじゃない。と言ってもセンサーが反応する程の想定外って訳じゃあないけどね。いや、それはそれで想定外なのかな? うーんどうなんだろう、後でちょっと整理してみようかな。それで一体どうしたんだい?』

うん、ちゃんと通じたみたいだ。長いセリフも全部聞き取れたし。

「ちょっと相談したい事があって。もし出来れば直接会って話をしたいんですけど、今からそちらにお邪魔してもいいですか?」
『うーん、僕は大歓迎だけど……ちょっとだけ待ってね』

それから通信機の向こうで誰かと話してるみたいなぽそぽそした声っぽいのが聞こえ続け、そして――
『うん、大丈夫だよ。本部の僕の部屋だから、直接跳んできちゃって構わないからね』

よかった、大丈夫だったみたいだ。
「ありがとうございます。じゃあ今から行きますね」

ええっと……ギルド本部のモリスさんの部屋は、この間行ったあそこだから……と、よし見えた。じゃあ転移っと――

「いやあカルア君、いらっしゃーい」
転移先でのモリスさんの部屋には、ニコニコ顔のモリスさんと、そして――
「久し振りねカルアくん。聞いたわよ、あれからも色々と『活躍やらか』してみんなをビックリさせてるみたいじゃない。それに……お母さんに会えてよかったわね!」
「あ……はいっ! ありがとうございますロベリーさん!」
――ロベリーさんが待っていた。

それからモリスさんに促されて3人でソファに座ると――
「さあさあ、それじゃあ早速君の『相談』ってのを僕に聞かせてくれるかい? 君がそう改まって訊いてくるような相談だ。一体どんなビックリが飛び出してくるのか、僕はもうさっきからずっとドキドキしっぱなしなんだよ?」

そんな大袈裟な。普通の質問ですよ、普通の。

「えっとですね、実は2点あって、まずは【転移】についてなんですけど――」
「ほうほう、【転移】から――ね。何と言うかこう複数の話がある時の『まずは』って、大体は簡単な方の話か次の伏線になる話――ってのが定番だけど、今回はどっちだい?」
「簡単な方――だと思います。どちらかと言うと」

そんな僕の答えにモリスさんは笑顔を絶やさない。その笑顔の横を流れる小さな汗の粒は、部屋が暑いから……?

「んふふふ。今度は『どちらかと言うと』と来たか。いいねいいね、ドキドキするね。じゃあ早速言ってみようか」
「はい、えっとですね……【転移】って行った事がある所にしか行けないんですよね?」
「うん、そうだねえ」
「それって、何故なんでしょうか?」

僕の質問を受けたモリスさんの表情は、笑顔は浮かべたままの真面目モードに。
「ああ成程その話だったかあ。うんうん、そうだよね。誰でも一度は『何故?』って思うよねえ」
「あははは……」

ワルツに訊かれるまで疑問に思わなかったなんて、言いづらい……

「かく言う僕も疑問に思った事があってね、色々と試したり推測したりしたものさ。カルア君、君は行った事が無い場所への【転移】って試した事があるかい?」
いえ、それは――
「やってみようかとも思ったんですけど、もし以前言われた『危険な実験』だったらって思って、それでやらずに来たんです」

「ああ、そうだったんだね。僕の忠告をちゃんと守ってくれてるようで嬉しいよ。そうだよね、うっかり『次元の狭間はざま』とか『石の中』とかに転移しちゃう可能性だってあるかもしれないからねえ」

うわぁ、どっちも想像したくないなあ……

「ただまあ、これに関しては実は危険は無いんだ。だって、『転移が発動しない』んだからね」

……えっ?

「発動しない……?」
「うん、実際僕もやってみたんだけど、発動も無ければ魔力消費もない――要するに何も起きなかったんだよ。それでさ、一体何故なんだろうって色々考えたんだけどね……仮説としては『【転移】の為の情報が足りないから』なんじゃあないかって思ってるんだ」

情報……が?

「ほら、【遠見】って映像だけだったでしょ? その後君が発見した『音』と『匂い』が追加された訳だけど、それ以外にも温度とか湿度とかの五感に基づくものや、雰囲気みたいな感覚的なもの――そういったその場にいないと感じられない沢山の情報が必要なんじゃないか、って思ったんだよ」

ふむふむ……

「それで行った事がある場所の場合はさ、もちろん季節や天気なんかはその時々で違うんだろうけど、その根っこの情報を無意識に自分の記憶から補完してるからじゃないかなって、そう推測したんだよ」

ああそうか……なるほど、確かにそれってすごく自然な考え方かも。

「じゃあ、もし【遠見】でもっと沢山の情報を得る事が出来たら――」

行った事が無い場所にも……

「うん、行けるかもしれないねえ」
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