スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

文字の大きさ
179 / 278

第75話 あなたはテンプレを信じますか? #3

しおりを挟む
お昼ごはんもお腹の中でこなれ、どことなく小腹が空いてきたそんな頃、退屈と縁遠かった移動はいよいよ終わりの時を迎えた。馬車がフタツメの街に到着したんだ。僕達は馬車を降りて、歩いてフタツメの街へと入っていく。

馬車はそのままベルマリア家の御者さんの手で王都へと戻り、来週末にまた迎えに来てくれる事になっている。

「さてと、じゃあまず宿にチェックインしちゃいましょうか」

えっ、チェックインって……?
「これから宿を探すんじゃないんですか?」
だってフタツメには今着いたばかりだよ?

「学校と提携している宿があって、事前に予約しておいたの。ふふっ、冒険者らしくなくってガッカリしたかしら?」
そう悪戯っぽく微笑むクーラ先生にアーシュは胸を張る。
「それはまた今度でいいわ。だって今回のメインはダンジョン攻略だもの!」

クーラ先生は小さく頷くと歩き出した。
「じゃあ行きましょ。チェックインが終わったら、そのまま冒険者ギルドに行くわよ。この街への到着の報告とダンジョン行きの申告をしなくちゃ」
「やたっ! 冒険者ギルド! テンプレ、テンプレ!」

だからアーシュ、ギルドにそんな変な人はいな――王都にしかいないから。
テンプレとか無いからね!



チェックインの手続きを終えた僕達は、ここフタツメの冒険者ギルドにやって来た……んだけど、あれ? 昼間なのに人が多いな。みんなパリピ?

クーラ先生は慣れた感じで迷いなく受付に向かう。ここのギルドにも何度も来た事あるんだろうな。
そんなクーラ先生に僕たちもついていく……ギルド中からの視線を浴びながら。

「あれあれ? クーラさんじゃないですか。うわぁ、久し振りですね。ええっと、2年ぶりくらいですか?」
受付のお姉さんもクーラ先生の知り合いみたいで、懐かしそうにそう声を掛けてきた。

「先生を始めたのがもう1年以上前だから……そう、そんなに経ってるのね」
「早いものですねえ。ところで聞いてますよ、王都の学校で有望な冒険者を育ててるって。もしかしてひょっとすると、後ろにいるのがその生徒さん達ですか?」

そんなお姉さんの言葉に微笑み、クーラ先生は僕達に一瞬視線を向けてから本題に移る。
「ふふっ、そう、あたしの生徒達よ。明日からこの子達セカンケイブに入るから。それとあたしも付き添いでね」
お姉さんは一瞬小さく驚き、でもその表情はすぐに納得のそれへと変わり、それから受付嬢の表情へと改めた。

「はい、承りました。それで皆さん冒険者登録は?」
「済んでるわ」
「分かりました、では生徒の皆さんはギルドカードの提示とこちらへの記名をお願いします」

僕達は受付のお姉さんに言われた通り、ギルドカードを提示してダンジョンの入場リストに記帳した。

「はい、手続きは以上です。申請された入ダン期間は……はい、最長2週間ですね。では皆さんお気を付けて。クーラさんが一緒だったら万にひとつも危険はないと思いますけど」

僕達が受付が終わってカウンターを離れると、それを見計らっていたみたいな感じで、冒険者らしきオジさんが近付いてきた。
あれ、この人……近くで見ると顔が老けてるだけで案外――いやかなり若い?

「何だ何だぁ? いくらセカンケイブが不人気ダンジョンだからってよぉ、子供の遊び場なんかにされちゃあたまんねえなぁ。ボクちゃん達、怖い目に会う前にとっととおうちに帰んな」

こっ……これはまさか!?
アーシュを見ると……うわぁ、目の奥に『テンプレキターー!』って書いてある!!
そして一歩前へ――

「ふふん、何だか雑魚っぽいのが出てきたと思ったら、随分雑魚っぽい台詞を吐くじゃない。そう、これよこれ。流石テンプレの神様は偉大だわ! それであたしは、何処であんたをぶちのめしたらいいのかしら? ここ? それとも訓練室?」
「ああん!? 随分と威勢のいいお嬢ちゃんじゃねーか! いいぜ、そこまで言うんなら相手になってやる! おい! 奥の訓練室を借りるぜ?」
「――ちょっとモブキンさんっ!?」

受付のお姉さんの制止を振りきって奥へと歩いていく――えっとモブキンさんって言ったっけ?
そのモブキンさんの後をアーシュが超ウキウキした表情でついていくから、僕達も仕方なくそれに続く。
そしてその僕達の後ろにはやたらいい笑顔をした冒険者の人達も……

はぁ、テンプレって実在したんだ……
でも……テンプレの神様って何?

そして訓練室に到着すると、もう超ウッキウキで待ちきれないって感じのアーシュが、クーラ先生に訊ねた。
「クーラ先生、ここは当然あたしがやっちゃっていいんでしょ?」

肩を竦めてアーシュに返すこの答えは――
「……そうね。ここはアーシュに任せるわ。あなたが一番手加減が上手そうだから」

ああ、選定理由……

そして部屋の中央に立つ、ええっと……モブ……モブ、キンさん?
「けっ、いつでもかかってきな。泣いて謝るまで遊んでやるからよぉ!」

アーシュはそんなモブ何とかさんから少し離れた場所に移動すると、右手を軽く突き出した。
「じゃあ遠慮なく……正面から【光球】、右から【火球】、左から【水球】、後ろから【風刃】、下から【投石】、上から――は、もういいか」

はは、全方位からの全属性攻撃……
床の上でピクピクしているモブさん、いとあはれ。
でもテンプレの神様への信仰に目覚めたらしいアーシュはテンプレ道を突き進むようだ。
「【回復】……さあ、もう治ったんだから早く起き上がりなさい」

その声に恐る恐る起き上がったモブさんに、アーシュが下したテンプレの審判は――
「よし、じゃあ2周め行くわよ? 正面から【火球】、右から【水球】、左から――」
「うっうわああぁぁぁ!? 待て! ちょっと待て――いや待って下さい!! 俺が悪かった! 謝る、謝るから!!」

あ、そのセリフ……テンプレだと――
「まだ1回目じゃない。ほら、もっと根性見せなさいよ!」
――ってなるよね。

涙でグチャグチャになった顔を絶望の色で染めたモブさんは、アーシュに言っても無駄だって思ったのか、懇願の相手を僕達に変えた。
「悪かった! なあ、あんた達からも言ってくれよ。頼むからもう終わりにしてくれ!!」

ああ、トコトンテンプレだ、この人……

その姿にアーシュが下した最後の慈悲は――
「終わりにして欲しいの? ……うーん、まあ考えてあげてもいいかな」
「ホントか!? ならお願いだ、もう終わりにしてくれ! 頼む!!」
「そう、分かったわ。じゃあお望み通り、とどめを差してあげるっ! 【水流】!!」
「そっ、その終わりじゃなーーーーいっ!!!!」

そんな叫びと共に訓練室の奥へと流されていく……えっと……モ、モ、何だっけ?
あなたの勤勉なテンプレ精神、僕は忘れない。きっと……多分……もしかしたら。



その何とかさんの最期を見届けるや、訓練室の入り口にビッシリ並んだ冒険者の皆さんが一斉に歓声を上げた。

「ぶふぁはははははっ」
「ひぃーっひひ、あのモブキンの顔……ぎゃははははははっ」
「はあーーーぁっ、はっ、腹イテー!!」
「いやあ、あいつは逸材だって思ってたけどマジで大したバカ野郎だぜ! まさか地獄以上オーバーヘルの連れに手を出すなんてよぉ」
「おうっ! 流石は勇者モブキンだぜ」
「「「「「どわっはははははは!!」」」」」

どうやらあの人、『地元じゃ有名人』だったみたい。
冒険者の皆さんは一頻り大笑いし、やがて十分満足した様子で声を上げた。
「おーい、誰かそろそろモブキンを拾ってきてやれよ。今日はあいつの健闘に乾杯だ。皆で奢ってやろうぜ」
「だな。よし、俺が行ってくる。誰か手伝ってくれ」

そして僕達に向き直ってグッと親指を突き上げた。
「お前ら、さっきはうちのバカが済まなかったな。それにアーシュって言ったか? 魔法凄かったぜ。あれだったらまず大丈夫だろうが、セカンケイブ頑張れよ!」
「「おお! 気を付けてなー!」」
「「頑張れよー!」」
「「応援してるぞー!」」

ははっ、ここのギルドの人達もみんな楽しそうだ……
やっぱり冒険者って、いいよねっ!!



▽▽▽▽▽▽
このお話が面白いと感じてくれた方、「いいね」をお願いします。
続きが気になる方、「お気に入り」登録はいかがですか。
作者に一言ツッコみたい方やモノ申したい方、「感想コメント」お気軽にどうぞ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

一流冒険者トウマの道草旅譚

黒蓬
ファンタジー
主人公のトウマは世界の各地を旅しながら、旅先で依頼をこなす冒険者。 しかし、彼には旅先で気になるものを見つけると寄らずにはいられない道草癖があった。 そんな寄り道優先の自由気ままなトウマの旅は、今日も新たな出会いと波乱を連れてくる。

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

極限効率の掃除屋 ――レベル15、物理だけで理を解体する――

銀雪 華音
ファンタジー
「レベル15か? ゴミだな」 世界は男を笑い、男は世界を「解体」した。 魔力も才能も持たず、万年レベル15で停滞する掃除屋、トワ。 彼が十年の歳月を費やして辿り着いたのは、魔法という神秘を物理現象へと引きずり下ろす、狂気的なまでの**『極限効率』**だった。 一万回の反復が生み出す、予備動作ゼロの打撃。 構造の隙間を分子レベルで突く、不可視の解体。 彼にとって、レベル100超えの魔物も、神の加護を受けた聖騎士も、ただの「非効率な肉の塊」に過ぎない。 「レベルは恩恵じゃない……。人類を飼い慣らすための『制限(リミッター)』だ」 暴かれる世界の嘘。動き出すシステムの簒奪者。 管理者が定めた数値(レベル)という鎖を、たった一振りのナイフで叩き切る。 これは、最弱の掃除屋が「論理」という名の剣で、世界の理(バグ)を修正する物語。気になる方は読んでみてください。 ※アルファポリスで先行で公開されます。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ㊗️HOTランキング4位!(2/2) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

処理中です...