スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第50話 さあここで新メンバーの登場です #3

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そんな感じの数日間だったんだけど、今日はと言えば――
「今日はもちろん氷魔法よね。さあワルツ、あなたの氷を見せてちょうだい!」
ま、当然そうなるよね。

「わたしの氷魔法は水魔法とのコンビネーション。一度に出せる水はコップ1杯くらい。それをナイフの形に凍らせて飛ばす!」
そしてその言葉通り、的に向かって飛ぶ氷のナイフ!
「おおっ、カッコイイじゃない!」
「おおっ、たくさん喋った!」
……アーシュに睨まれた。ゴメン、つい思わず。

「あと、すぐ近くのものだったら直接凍らせる」
ワルツはそう言いながら的に近付いて手を翳すと――
「うわっ、鎧が真っ白。これって霜?」
鎧は真っ白に凍りついた。その鎧に僕が思わず手を伸ばすと、ワルツから警告が飛んできた。
「触ると危ない。手が貼り付いて大惨事」
「――っ!?」
慌てて引っ込めた。

「凄いじゃないワルツ! これなら確かに魔物だって怖くないわね」
「遠ければナイフ、近ければ凍らせる。前衛でも後衛でもオケ」
「魔力量はどうなの? 連続でどれくらいできそう?」
「そんな多くない。節約大事。ナイフなら10本、凍らせるのも10回が限度」
「なるほど。どう運用するかを考えなきゃ」

氷魔法って他の魔法よりも使う魔力が多いのかな?
何だか出来る回数が少ないような……

「あのさワルツ、魔力トレーニングとかってやってる?」
ふと気になって僕が訊くと、ワルツは『当然!』って感じで答えた。
「毎日魔力が無くなるまでやってる」

まあ普通やってるよね――ってあれ? 今の答え、何か凄く違和感が……
「――じゃあ魔力が無くなってからは?」
「もちろん無くなったら終わり。やっても魔法は出ないから」

……やっぱり。
思わず顔を見合わせる僕とアーシュ。だって――

「ねえワルツ、あなた魔力トレーニングって習わなかった? 去年の授業でもやったと思うけど」
「む、記憶に無い。誰からも聞いてない。授業なら熱で休んだ時かも」
「そっそうなんだ……。じゃあ言うけど――それ全くトレーニングになってないわよ」
「!?」

愕然……
アーシュの言葉を聞いたワルツは、そうとしか表現出来ない表情で固まった。
まあ、これまでトレーニングだと思ってやってのに実は効果無かった、なんて言われんだから……ねえ。

困ったようなアーシュからの視線を受けて、僕が続きを引き取る事にした。
「あのさワルツ、魔力トレーニングっていうのは、『魔力を全部使い切った後に、更に魔力を絞り出そうとする』事なんだよ。そうする事で、魔力が足りていないのを体が自覚して、魔力量を増やそうとするんだ。魔力を全部使い切るのは、トレーニングの前準備なんだよ」

「おおおおおおお……わたし……準備で……終わってた……」

いやそんな、この世の終わりみたいな顔しなくても……
ここはきちんとフォローしとかなくちゃ。

「ええっとワルツ? そういう訳だから、つまり今の君は『全くトレーニングしてないのに既にこれだけの魔力量がある』って事なんだ。これって凄い事だと思うよ? だからさ、これからトレーニングをしたワルツは、もっともっと凄い事になると思うんだ。だからこれから頑張ればいいんだよ。きっとワルツなら大丈夫、やれるよ。頑張ろうよ。それにほら、言ってくれれば僕だって手伝うし」

何だろう、なぜ僕の口からこんなにも流れるように言葉がスラスラと?
……ああっ、これ絶対あれ! 付与術のせいだぁっ!!

「ふおおおおお、ま、マイ師匠」
いや師匠じゃないから。
そんなキラキラした目で見つめられても……
手を合わせられても……
僕の手に両手で縋りついてこられても……
これ大丈夫だよね!? 僕、ワルツに何か付与とかしちゃってないよね!?

「わわわ、私も手伝うわよっ!!」
アーシュ参戦。うん、こっちは多分そうなると思ってた。



ヒトツメギルドの某受付カウンター。
ピキキーーーン☆
「またこの音!? 何だろう、嫌な感じがする……」



その日の放課後――
ピノズクラブの本拠地と化した校内のとある部屋にて、ある重要情報がアイの元へと届けられた。
「会長、報告します。本日『最重要保護対象』に状況の変化あり。所属パーティが女性メンバーを追加しました」

突然起きた大きな状況の変化に、アイは若干の不安を覚える。
「その女性メンバーの情報は?」
「はい――名前はワルツ、得意魔法は氷属性、本人の属性は『小柄』『平坦口調』『単発口調(弱)』『妹系(微)』『ワンコ(微)』です」
淡々と告げられるワルツの情報。

なお、報告にある『属性』というのは、かつてとある生徒が見た目や性格等の情報を体系として纏めたものである。馴染みのある魔法に寄せて『属性』という形に纏められたその体系は、生徒達の間で強く支持され、世代に応じて多少の変更を受けつつ現在まで受け継がれている。

「それは中々の属性ね。それで『最重要保護対象』への親密度は?」
「それが――午後の実技授業から『急上昇』です」
「何ですって!? 『上昇』ではなく!?」

まさかの報告に思わず聞き返したアイ。それまでの落ち着いた雰囲気から一転、急に狼狽え始める。
だがそれも当然の事、接近後すぐの『急上昇』などあまりに危険過ぎる!

「『急上昇』です。間違いありません。加えて、『最重要保護対象』と何らかの約束を交したとの未確認情報も――」
「至急確認を。不味いわね、完全に出遅れたわ。こちらの動きを上回る程の展開性能、ここから属性を利用した追加攻勢だってあるかも。まったく、アーシュだけでも厄介だと言うのに、ここに来て何故突然……」

淡々と情報を告げるメンバーに若干の苛立ちを覚えながらも、何とか現状を整理しようとするアイ。しかしあまりに情報が足りな過ぎる。何か手を考えなければ!

「――そのアーシュさんですが、どうやら今回の件については多少防波堤の役割を果たしたようです。その何らかの約束に際し、急遽割り込んで2人ではなく3人での約束とさせたとか」

その報告に、だがアイの表情は浮かぬままだ。

「それは状況としては良し悪しの判断が付きかねるわね。逆に事態を悪化させる恐れもあるし、アーシュの親密度までもが上昇しかねない。状況のコントロールが難しいわ」

そう、予期せぬ取り合いや意地の張り合いから、状況が急展開する恐れもある。
何とか早期に事態の沈静化を図りたいところだが、片方の因子であるアーシュの突然の行動は全く読む事が出来ない。アイは思わずきそうになった溜息をぐっと飲み込んだ。

「では如何いたしましょうか」
「まず優先すべきはピノ様への状況報告ね。現時点での情報をまとめ、ギルド便にてピノ様の元に送付します。至急報告資料の作成を」
「はっ!」
「これが最後の追加メンバーとは限らない。この先、第二第三の――」

本来この台詞は事態の沈静化が完了してから発すべきもの。それをこのタイミングで発してしまったアイは――やはりまだ混乱の真っ只中にいるのだろう。



王都にてピノズクラブに襲い掛かった混乱の嵐は、『支部留めギルド便』によってここヒトツメのピノの元へと到達した。
「嘘っ、ここに来て妹属性!? 例え(微)だとしても、ひとりっ子のカルア君にとっては『妹』って初めての関係性――えっ『ワンコ』も!? こっ、これは思わぬ強敵に!?」

そしてピノは1ヶ月前の記憶を懸命に呼び起こそうと頭を抱え天を仰いだ。
「うーー思い出せ私っ! あの時一度は全員の顔を見たはずよ。その中でこの情報に該当しそうなって……」

だが――
「駄目だ思い出せないーーーっ! ううっ、私あの時はアーシュちゃんの事で頭が一杯だったから……もうっ! どうしたらいいのよーーーーっ!!」



そして通信室の外からは――
「ピノーーーっ! お願い早く戻ってきてーーーっ!! 処理が追いつかない、追いつかないからぁーーーーっ!!」
夕方のラッシュによる忙しさで、こちらは頭を抱える暇もないパルムからの、ピノを呼ぶ悲鳴のような懇願が響き続けるのだった。



▽▽▽▽▽▽
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