スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第39話 逆襲のフィラストダンジョンです #3

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ピノさんの案内でギルマスの執務室へとやって来た。
ピノさんは僕を案内してから扉の前でUターン。きっとこれから胃薬とお茶の準備なんだろう。あ、お茶じゃなくて白湯さゆかな。その方が胃に優しいだろうから。

「さてカルア君、報告したい事があるとか……?」
「はい。――もう始めちゃっても大丈夫ですか?」
「ちょっと待て……すうぅぅぅ……はあぁぁぁ。よし、では話してくれ」

僕は小さく頷くと、ギルマスに今日あった事を報告した。
赤く光るダンジョンをそのまま進んで行った事、途中魔物が出てこなかった事、コアの間で金属バットが出てきて倒した事、そのあと転送の間に戻ったら普通にトラップで魔物部屋に転送された事、金属バットの下の階に進めた事、下の部屋は金属バットだけの魔物部屋だった事、その下に進む階段がまた出たけど進めなかった事、そして最後に――スキルが進化した事。

話が進むにつれ、ギルマスの顔は徐々に下を向き、存在感は薄くなっていき、最後――スキルの進化を伝えた頃には全身真っ白になって俯いていた。
まるで燃え尽きたみたいに。

新生ホワイトギルマスブラック――とか言ったら怒られそう……

やがてギルマスは左手をそっと前に差し出し……いつのまにか部屋に入ってきていたピノさんがその手のひらにそっと一包。
続けて差し出された白湯でそれを流し込んだギルマスは、小さく息を吐いてからピノさんにそっと一言。
「……モリス氏を呼んでくれ」



「――やあ呼んだかい? って呼んだんだよね。だって僕、呼ばれたから来た訳だし。と言う事で今日もまた跳んで来た訳だけど、ブラック君、君、顔色が良くないねえ。何かやな事でもあったのかい――って、ちょっと待ってくれよ。今回僕のセンサーは無反応だったよ? まさか、まさかだけど……カルア君、また何かやっちゃったのかい?」

やって来て早々いつも通りハイテンションなモリスさん。そのモリスさんに真っ白なギルマスがポツリと呟いた。
「スキルが……進化したそうだ」

モリスさんは一瞬――二瞬――三瞬――視線を彷徨わせて、それから少し考える素振りを見せてから少し引き攣った笑顔を浮かべた。
「ごめん、ちょっとこれ聞き間違いかな? いや、よく聞こえなかったのかな? ――すまないけどもう一度、いいかい?」

その様子がまるで目に入っていないかのようなギルマスは、ただただ噛んで含めるようにもう一度言い直す。
「カルア君の、スキルが、進化した、そうだ」
「は、ははは、はは…………うっそ!?」
ようやく受け入れたモリスさん――の様子に少しだけ生気を取り戻したギルマスが言葉を続けた。
「この先を一人で聞きたくなかったのでな――そこで一旦話を止めてあなたを呼んだのだ」

――という事で、もう一度初めから経緯を説明。

「成程……ダンジョンを先に進むのは別におかしな事じゃない。魔物だって出てきたのを倒しただけ。階段は……まあ行けるようになったから行っただけって言えるかな? で、スキルの進化は別にカルア君が起こした行動って訳じゃないし。うん、これはセンサーに引っ掛からなくても仕方ないか」

「……モリスさん、問題はそこじゃない。そろそろ現実逃避は終わりにしないか?」
「ふん、一人で聞くのが嫌だからって僕を巻き込んだくせに」
「それは勿論すまないとは思っている。だが、より大事おおごとになってから聞くよりはいいだろう?」
「そうだけどさ。それはそうだけどさ! でもやっぱりねぇ…………。ああもうっ、よし! もう切り替えた! 切り替えたよ僕は! そうさ、確かにこうしてたって仕方ない。それじゃあカルア君、教えてくれるかい。――君のスキルが一体どうなったのかを」

って訊かれたけど、でも――

「実は僕も怖くってまだ見てないんです。――ちょっと待ってください、今見ますから……ええっと……コアスティールDp2デプスツー?」
「コアスティールDp2デプスツー? 何だろう、名前からしてコアスティールが何かパワーアップした感じかなぁ。デプスは深さ? ――なら階層の事なのかな? うーん、何だろうねえ。ちなみにゲートはそのままかい?」
「はい、ゲートのままです」
「それはよかった。そっちまで進化とかしてたら収拾がつかなくなりそうだからね。うん、きっとゲートは大丈夫! って事で今はコアスティールだ。それで――スキルに何か変わった感じはあるかい?」

変わった感じは……なさそう、かな?

「残りの金属バットは進化したスキルで【スティール】したんですけど、その時は別に変わった感じとか無かったと思います」
「ふーむ、なら何が変わったんだろうねえ。まさか冗談で言ったダンジョンコアの【スティール】? いや、それこそまさかだよ。流石にダンジョンコアがそんな簡単な訳なんて無いよね。でもカルア君、だからってダンジョンコアに向かって【スティール】したりしないでくれよ? 大丈夫だとは思うけど、一応念の為ね」
「はい、気を付けます」

もしスティール出来ちゃったら……どうなるんだろう?
――やらないけど?

「そうすると残るは何だろうねえ。今まで【スティール】出来なかった魔物にも出来るようになってるとか? うん、それだったら可能性はあるか。君はまだこの付近の魔物にしか遭遇していないからね」
「はい、ダンジョンと森の魔物だけです」
「とすると、魔道具のスティールでも早いうちに他の魔物を試したほうがいいか――いや、もうどこかの機関でやってるだろうな。って事でブラック君、取り敢えず今日はここまでって事にしようよ。いいかな?」

「いや、後もう一点だけ。大量の金属バット素材があるらしいのだが、世に出していいものかどうか」
「別にそれはいいんじゃない? ついでに地下2階への行き方も公表しちゃいなよ。どうせ時空間魔法の適性が無きゃ行けないんだし、大した騒動にはならないでしょ。それに、カルア君もまだ【固定】は出来ないんだから、ほっといたら【ボックス】の中で全部腐っちゃうよ?」

【ボックス】の中で糸を引く金属バット――うわっ、嫌な想像しちゃった!!

「分かった、ではそうするとしよう」
「うんうん、じゃあ僕は今度こそ戻るから。カルア君とピノ君も、またねえぇぇ……」

結局最後はいつもみたいに喋りながら【転移】で帰って行ったモリスさん――今日も色々とありがとうございました。
そして――

「ねえ、カルア君」
「何でしょうピノさん?」
「金属バット、今日の晩ごはん用に一体確保ですよ。ふふふ、金属バットってどんな料理が合うかしら。色々挑戦してみたいな」

はは、ピノさんの中では金属バットは既に食材扱いだった。

「なら残りは全て買い取りでいいかな? 報告は全て終わったようだし、金属バットは解体部屋に出していってくれ。それで今回魔石はどうする? これまでのものと一緒にここで保管するか?」
「いえ、今回の分は持っておく事にします。ベルベルさんのところでも使うかもしれないし」
「そうだな、確かにその方がいいだろう。では今回は以上だ。報告ご苦労」



そして今日の晩御飯……
出てきたのは金属バットのフルコースだった。
金属バットのサラダに始まり、金属バットのスープ、金属バットの角煮、金属バットのステーキ、金属バットの炊き込みご飯……
どれもすっごく美味しかった。
金属バットの肉が美味しいのか、ピノさんの調理技術が凄いのか――多分その両方なんだろうな。
でもピノさん、金属バットのパフェはちょっとやりすぎじゃない……かな?

そして今日も寝る前に魔力トレーニング――なんだけど、魔力が増えちゃったから空っぽにするのが凄く大変。効率よく魔力を消費するにはどうしたらいいんだろう……
今度ベルベルさんに訊いてみようっと。
何て事を考えながら魔力を使い続けて何とか魔力を使い切った。さあ、後は寝落ちするまで……



そして次の朝。
「何で急にこんなに魔力が増えてるのぉーーっ!?」



▽▽▽▽▽▽
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