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第89話 セントラルダンジョン探索の前編 #2
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「まあいずれにしろ、他のダンジョンにそれぞれ一度は行ってみないとね。まずは結界を改良するからさ、その後どうするかは君達で話し合って決めてくれたらいいよ。ま、その為にはやっぱり君達の通信について調べる必要がある訳だから、この先やるべき事は予定通りと言えば予定通りって事かな」
セカンケイブは『そうね』と頷き、ふと先程のカルアとの会話を思い出した。
「あ、そうそう。カルアもそこに同行する事になったから、よろしくね」
「あれ? 一体どうしてそんな話になったの?」
先ほどの話の流れから、どうして歩く不確定要素であるところのカルア君を連れていく事になったのか分からない。別に顔合わせとかの必要は無さそうだけど?
「私がお願いしたのよ。他の姉妹の操化身を作って欲しいって。それをセントラルのところに置いておけば、いつでも姉妹で会う事が出来るじゃない?」
「ああ成程ね……ってちょっと待って!? それだと君達の【通信】だけじゃなくって、その操作の為の魔力も通すようにしないとダメじゃない! うわっ、どうしよ……」
クライアントからの突然の仕様変更に頭を抱えるモリス。
要望に対する難易度についての開発者の気持ちは、大抵の場合が『それ簡単に言っちゃダメなやつ!』である。本当はその逆の場合も割とあるのだが、簡単が故に記憶には残りにくいものだ。
「カルア君の付与だから時空間魔法と土魔法なのは確定だろうけど……ああ、だとすると感覚関連は【遠見】かな。で、人形を動かすところは土魔法――だけどこれは多分人形側で制御してるだけってとこか。だったら人形に送るってるのはイメージと魔力だけ? うーん、何だかんだで開けなきゃいけないポートは結構増えちゃうなぁ」
通す魔力の種類は出来るだけ減らしたい。増やした分だけリスクが高まるからだ。であるならば――
「だったら使用者登録の方が現実的かな。幸いにして通す対象は姉妹5人だけなんだし……だね、それがよさそうだ。オートカには精霊姉妹の魔力パターンを計測して貰うとしよう。そしたら後は結界具にホワイトリスト機能を追加して5人分の魔力パターンを登録しちゃえばオッケーかな。よしよし、これだったら既存のコードを流用出来るから、オートカだけじゃなく僕の作業だって簡単になりそうだ」
道は見えた。
完成へと至る道が。
「どう? 何とかなりそうかな?」
顔を上げたモリスへ、期待の中に若干の不安がこもった声を掛けるセカンケイブ。そんな彼女に返すモリスの返事は――満面の笑みである。
「君達姉妹全員の魔力パターンを結界のホワイトリストに登録する事にしたよ。そうすれば通信だけじゃなくって君達の全ての魔力が結界を通るようになるからね。これで万事解決だ!」
その自信に満ちた言葉を受け、セカンケイブは途端に表情を明るくする。『万事解決』、何て素晴らしい言葉だろう!
「いいわね、それ。だったらついでに『根幹の魔力』も結界を通るようにしてくれないかな?」
「『根幹の魔力』かぁ……んーー、調べてみてからじゃないと何とも言えないけど、まあやってみるよ。君の計測をする時に一緒に計測してみようか」
「うんっ、お願い!」
こうして精霊との話を終えてセカンケイブを後にしたモリスは、その後ギルド本部に戻ってきたクーラとも情報交換を行った。
それからマリアベルにアポイントを取り付け、翌日マリアベルの店にてセカンケイブの報告を行う事となった。――のだが、彼の秘書であるロベリーが裏からそっと手を回した結果、その報告の場にはチームカルアの全員が立ち会う事となったのである。
さあ、今日はラルが作ったダンジョンを攻略する日だ。朝いつも通り学校に集合したら、そのまま森へと出発!
そして森。奥へと進んでいった僕達はやがてダンジョンの入口に到着したんだけど、そこには――
「あれっ、モリスさん?」
一体ここで何してるの?
「いやあ、カルア君おはよう! それにみんなもおはよう。ははっ、その顔は何故僕がここにいるんだろうって考えてるね? ならば答えよう、僕は『仕事に来た』のさ。だってほら、新しいダンジョンが出来たんだよ? 当然アレが必要だろ?」
「アレ?」
――って何だろう?
そんな僕の疑問の表情が可笑しかったのか、モリスさんはフフっと笑って人差し指を立てた。
「そう、アレ。ダンジョンの入口に必ずある、『転・送・装・置』……だよ」
ああ、成程っ!
「今日このあと調査班が、そして明日には設置班が来るけど、その前に先ず僕が直接下見をしとこうと思ってね。これから校長と会う約束があるから僕はもう少ししたら帰るけど、君達は今からダンジョンに入るんだろう? 調査班には君達の事は伝えてあるから、もし会ったら声を掛けてあげてくれよ。カルア君は会ったことあるよね。ほら、以前フィラストダンジョンでトラップの閾値を調査したメンバーだよ」
ああ、あの賑やかな人達。変な喋り方のスラシュさんと美人のジェニさんと、……ほとんど印象に残ってないけど、確かあと3人くらいいた気がする。
「今日のダンジョンの感想はまた今度聞かせてよ。じゃあみんな、頑張ってねーー」
モリスさんと別れた僕達は、そのままダンジョンの中へと入っていった。もちろんまだ転送装置は無いから、普通に歩いてね。
「さあ、一体どんなダンジョンになってるのかしらね! カルア、あんたの妹だから色々やりすぎたダンジョンになってるんじゃない?」
「妹って言ったって一緒に育った訳じゃないんだからさ、別に性格が似るとかは無いと思うよ? って僕だってやり過ぎとかしないからね?」
――そんなには。
「……まあいいわ。あんたのやり過ぎに関しては取り敢えず置いとくとして――」
――あ、置いとくんだ。
「あの娘昨日言ってたよね、中身ほとんどあんたになっちゃったって。それってもう、似るとかそういうレベルじゃない気がするわ」
「それ……魔力の話じゃ?」
「そうよ、魔力の話よ。あんたの魔力の話なの。なら何があっても不思議じゃないでしょ」
――そう言われると。
「カル師、魔力もきっと、カル師色。わたしの事も染めてみる?」
「ちょワルツ! またあんたはどさくさに……」
「あははは、でも楽しみだよね」
「ああ、早く入ろう。どんな魔物が出るのか楽しみだ」
程よく緊張感もほぐれた僕達は、入口の間の奥にある大きな扉を開く。
するとその先、僕達の目に飛び込んできたのは――
『お子様専用フロア』
と書かれたでっかい看板だった。
◇◇◇◇◇◇
お子様専用フロア
このフロアはちいさなおともだちのフロアです。
みんなでなかよくさいしゅするですよ。
こちら(地下第一階層)は15歳未満のお子様とその保護者の専用エリアです。
一般の冒険者の方はそのまま下のフロアにお進み下さいです。
[注意!]
ルール違反が多発する場合は厳正に対処するです。
セントラルダンジョン運営
◇◇◇◇◇◇
…………うん、なるほど。
セカンケイブは『そうね』と頷き、ふと先程のカルアとの会話を思い出した。
「あ、そうそう。カルアもそこに同行する事になったから、よろしくね」
「あれ? 一体どうしてそんな話になったの?」
先ほどの話の流れから、どうして歩く不確定要素であるところのカルア君を連れていく事になったのか分からない。別に顔合わせとかの必要は無さそうだけど?
「私がお願いしたのよ。他の姉妹の操化身を作って欲しいって。それをセントラルのところに置いておけば、いつでも姉妹で会う事が出来るじゃない?」
「ああ成程ね……ってちょっと待って!? それだと君達の【通信】だけじゃなくって、その操作の為の魔力も通すようにしないとダメじゃない! うわっ、どうしよ……」
クライアントからの突然の仕様変更に頭を抱えるモリス。
要望に対する難易度についての開発者の気持ちは、大抵の場合が『それ簡単に言っちゃダメなやつ!』である。本当はその逆の場合も割とあるのだが、簡単が故に記憶には残りにくいものだ。
「カルア君の付与だから時空間魔法と土魔法なのは確定だろうけど……ああ、だとすると感覚関連は【遠見】かな。で、人形を動かすところは土魔法――だけどこれは多分人形側で制御してるだけってとこか。だったら人形に送るってるのはイメージと魔力だけ? うーん、何だかんだで開けなきゃいけないポートは結構増えちゃうなぁ」
通す魔力の種類は出来るだけ減らしたい。増やした分だけリスクが高まるからだ。であるならば――
「だったら使用者登録の方が現実的かな。幸いにして通す対象は姉妹5人だけなんだし……だね、それがよさそうだ。オートカには精霊姉妹の魔力パターンを計測して貰うとしよう。そしたら後は結界具にホワイトリスト機能を追加して5人分の魔力パターンを登録しちゃえばオッケーかな。よしよし、これだったら既存のコードを流用出来るから、オートカだけじゃなく僕の作業だって簡単になりそうだ」
道は見えた。
完成へと至る道が。
「どう? 何とかなりそうかな?」
顔を上げたモリスへ、期待の中に若干の不安がこもった声を掛けるセカンケイブ。そんな彼女に返すモリスの返事は――満面の笑みである。
「君達姉妹全員の魔力パターンを結界のホワイトリストに登録する事にしたよ。そうすれば通信だけじゃなくって君達の全ての魔力が結界を通るようになるからね。これで万事解決だ!」
その自信に満ちた言葉を受け、セカンケイブは途端に表情を明るくする。『万事解決』、何て素晴らしい言葉だろう!
「いいわね、それ。だったらついでに『根幹の魔力』も結界を通るようにしてくれないかな?」
「『根幹の魔力』かぁ……んーー、調べてみてからじゃないと何とも言えないけど、まあやってみるよ。君の計測をする時に一緒に計測してみようか」
「うんっ、お願い!」
こうして精霊との話を終えてセカンケイブを後にしたモリスは、その後ギルド本部に戻ってきたクーラとも情報交換を行った。
それからマリアベルにアポイントを取り付け、翌日マリアベルの店にてセカンケイブの報告を行う事となった。――のだが、彼の秘書であるロベリーが裏からそっと手を回した結果、その報告の場にはチームカルアの全員が立ち会う事となったのである。
さあ、今日はラルが作ったダンジョンを攻略する日だ。朝いつも通り学校に集合したら、そのまま森へと出発!
そして森。奥へと進んでいった僕達はやがてダンジョンの入口に到着したんだけど、そこには――
「あれっ、モリスさん?」
一体ここで何してるの?
「いやあ、カルア君おはよう! それにみんなもおはよう。ははっ、その顔は何故僕がここにいるんだろうって考えてるね? ならば答えよう、僕は『仕事に来た』のさ。だってほら、新しいダンジョンが出来たんだよ? 当然アレが必要だろ?」
「アレ?」
――って何だろう?
そんな僕の疑問の表情が可笑しかったのか、モリスさんはフフっと笑って人差し指を立てた。
「そう、アレ。ダンジョンの入口に必ずある、『転・送・装・置』……だよ」
ああ、成程っ!
「今日このあと調査班が、そして明日には設置班が来るけど、その前に先ず僕が直接下見をしとこうと思ってね。これから校長と会う約束があるから僕はもう少ししたら帰るけど、君達は今からダンジョンに入るんだろう? 調査班には君達の事は伝えてあるから、もし会ったら声を掛けてあげてくれよ。カルア君は会ったことあるよね。ほら、以前フィラストダンジョンでトラップの閾値を調査したメンバーだよ」
ああ、あの賑やかな人達。変な喋り方のスラシュさんと美人のジェニさんと、……ほとんど印象に残ってないけど、確かあと3人くらいいた気がする。
「今日のダンジョンの感想はまた今度聞かせてよ。じゃあみんな、頑張ってねーー」
モリスさんと別れた僕達は、そのままダンジョンの中へと入っていった。もちろんまだ転送装置は無いから、普通に歩いてね。
「さあ、一体どんなダンジョンになってるのかしらね! カルア、あんたの妹だから色々やりすぎたダンジョンになってるんじゃない?」
「妹って言ったって一緒に育った訳じゃないんだからさ、別に性格が似るとかは無いと思うよ? って僕だってやり過ぎとかしないからね?」
――そんなには。
「……まあいいわ。あんたのやり過ぎに関しては取り敢えず置いとくとして――」
――あ、置いとくんだ。
「あの娘昨日言ってたよね、中身ほとんどあんたになっちゃったって。それってもう、似るとかそういうレベルじゃない気がするわ」
「それ……魔力の話じゃ?」
「そうよ、魔力の話よ。あんたの魔力の話なの。なら何があっても不思議じゃないでしょ」
――そう言われると。
「カル師、魔力もきっと、カル師色。わたしの事も染めてみる?」
「ちょワルツ! またあんたはどさくさに……」
「あははは、でも楽しみだよね」
「ああ、早く入ろう。どんな魔物が出るのか楽しみだ」
程よく緊張感もほぐれた僕達は、入口の間の奥にある大きな扉を開く。
するとその先、僕達の目に飛び込んできたのは――
『お子様専用フロア』
と書かれたでっかい看板だった。
◇◇◇◇◇◇
お子様専用フロア
このフロアはちいさなおともだちのフロアです。
みんなでなかよくさいしゅするですよ。
こちら(地下第一階層)は15歳未満のお子様とその保護者の専用エリアです。
一般の冒険者の方はそのまま下のフロアにお進み下さいです。
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ルール違反が多発する場合は厳正に対処するです。
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◇◇◇◇◇◇
…………うん、なるほど。
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