スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第103話 いよいよ海合宿が始まりました #3

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……気がついたら馬車が停まってた。
「えー、振動軽減なしの体験は以上で終了となります。大変面白い事になっている最前列の3名、振動軽減が無いとどうなるか身をもって経験しましたね? それでは自分の座席に戻ってください」

ふふっ……
クスクスクス……

小さな笑いに包まれる車内。
その中を恥ずかしそうに席に戻るアーシュ。そして身体を起こした僕のお腹の下から頭を持ち上げたワルツは、何故か満足げな笑みを浮かべて席へと戻った。

で、僕はというと――
ようやく新鮮な空気を吸い込む事が出来て意識がシャキッと。吸い込んだその空気は、溜め息に変わってすぐに出ていったんだけどね。

…………ふぅ。


その後は特に何事もなく、休憩とお昼ご飯を挟みながら馬車の列は進んでゆく。やがて――

「ねえ、あれもしかして海じゃない?」
どこからかそんな声が聞こえてきた。
そしたらみんな横の窓から外を指差して、馬車の中はもう大騒ぎ。
もちろん僕もね。

海は前にモリスさんにあちこちの転移スポットに連れていってもらった時に見た事があったけど、馬車に揺られ続けた先で見ると感じ方が違うなぁ。なんて言うか……「はるばる来たんだ!」って感じで。

……あっそうか。海の近くって事は、そろそろ合宿所に到着するんじゃない?
あとどれくらいかな。テンション上がってきた!

眠気と気だるさが吹き飛び賑やかになった馬車は、ゴトゴトと街道を進み、やがて分かれ道を左方向へ。

「今の道を右に進むとヨツツメの街です。ほら、よく見ると遠くに街が見えますよ」

あ、ホントだ。

「もう間もなく合宿所に到着です。みなさんそろそろ降りる準備を始めてください。忘れ物に気を付けて」

やがて馬車は大きな建物が建つ敷地へと入っていき、そしてその大きな建物の前で停まった。

「はい、ここが合宿所です。皆さん、馬車を降りたらクラスごとに集合してください」

着いたーーーっ!!

馬車から降りたみんなは思い思いに伸びをしたり、他の馬車に乗っていた友達と感想を言い合ったり。
オーディナリーダのみんなもそれぞれ他の友達のところに行って話をしてる。
そんなみんなの様子をぼんやり眺めてると、同じく近くでぼんやり中だったモブリックが話し掛けてきた。ちょっとぽっちゃり体系。

「そう言えばカルア、さっきお前らが使ってたあのクッション、あれどこで買ったんだ?」
「ああ、王都のすっごく大きな道具屋で買ったんだよ」
「おっ、あの店か。よし、今度俺も買ってこよ。おーいモブロー! 今度クッション買いに行こうぜー」

遠ざかっていくモブリックと入れ違いに近付いてきたのは、これまた所在なさげにしてたルルモーブさん。前髪ぱっつん。
「それでカルア君、結局あなた、アーシュとワルツのどちらを選ぶの?」

いきなり答えにくい質問、キターーーっ!

アーシュが従姉妹だっていうのは秘密だし、ワルツは何て言うか……
それに第一ピノさんが……でもそれ言うと更にややこしくなりそう。
だってピノさん、これからも先生として来る事がありそうな気がするから。

そんなアレコレが頭の中をグルグル廻ってる僕の姿に、ルルモーブさんは小さく肩を竦め、そして――
「まあ私がどうこう言う話じゃないけどね。でも、あなた達の関係を気にしてる子って結構多いのよ?」
そんな事を言い残し、『頑張ってねーーっ』と手を振りながら離れていった。


「はーーーい、魔法師クラスのみなさーん、先生ぇのところに集まってくださぁーーい」

おっ、集合だ。
先生達の準備が終わったのかな?

「それじゃあぁ、いいですかぁ、今からちょっと早口で説明しますからぁ、ちゃぁーんと聞いていてくださいねぇ」
そう前置きして、レミア先生が説明を始める。

「じゃぁあー、いきますよぉーー……キリッ……今日はこれから部屋割りして夕食となります。部屋は勿論男女別々で、男子は3階、女子は2階です。それぞれ違う階には絶対に行かないこと。夕食は1階の食堂で全員一緒にとってもらいます。お風呂は1階の大浴場です。男女それぞれ時間を区切っていますので、その時間内に入ってください」

おおっ、早口――って程じゃないけど、普通のしゃべり方! 激レア!!

「次に明日からの予定です。まず明日はヨツツメの街の見学です。街まで馬車で移動、到着後は班に分かれて自由行動です。自由行動と言っても見知らぬ街で仲間達だけで行動する訓練なので、くれぐれもふざけたり周囲の迷惑となるような行動をしちゃダメですー。昼食は各自それぞれ街でとってください。夕食は合宿所に帰って全員でとりまーす」

おおー、明日は自由行動かあ。

「その次の日からの3日間は特別講習でーす。私達は魔法師クラスなので、当然魔法の授業が中心です。ビシバシいきますからねー」

それってもしかしてレミア先生の特別授業なのかな。ワルツとネッガーの座学を得意科目に引き上げた、あの伝説の……

「その次の日はお勉強をお休みして一日海でリフレッシュですよー。でもみなさん、くれぐれもぉ日焼けには注意してくださいねぇ。回復魔法を使える人はぁ、日焼けで苦しそうな人がいたらぁ、回復してあげてくださぁい」

ここで海か……
って言うか、さっきから少しずつしゃべり方が戻って……

「その後はぁ……4日間の特別講習でぇーーす。皆さぁん、お勉強、がんばりましょおねえぇぇ。最終日にはぁ、後夜祭がありまぁーーす。花火とかもぉ、上げちゃいますからぁ、皆さん、期待しててくださいねぇーーー。そしたら合宿は終了でぇ、次の日に王都に帰りまぁーーーす」

はは、もう完全にいつものしゃべり方にもどっちゃった……
普通モード、短かったなあ……


僕の部屋は3人部屋で、ネッガーとノルトといっしょ。
普段から寮生活だからかな、二人ともこういうのは何だか慣れた感じだった。

夕飯は魚料理が美味しかった。
煮た魚とか焼いた魚とか。
もしかしてこの魚、海の魔物だったりとか?

大きなお風呂に入って、部屋で少し話をして……そしたら何だか眠くなってきたから、今日はここまで。
明日はヨツツメの街かぁ……楽し……み…………



少し時間が戻って、ここはヒトツメの街の冒険者ギルド。
朝のラッシュが終わり、ゆったりと穏やかな時間が流れる、そんな中――
ピキキーーーン☆
「えっ!? これってまさか」
突然のセンサー発動っ!

と、その次の瞬間!
ヒュォーイ、ヒュォーイ、ヒュ……
ピノの頭の中に鳴り響くこの音は――
「今度はカルアラート!? カルア君に危険が――ってあれ? 止まった?」

センサーからカルアラートと繋がるまさかのコンボに、ピノは軽く混乱した。
「何これ? カルア君の身に一体何が起こってるの!?」

カルアサンドイッチに反応したセンサー、そしてそれによる一時的な窒息に反応したアラート。当然どちらも正常な動作ではある。あるのだが――

「これ行くべき? それとも信じて待つべき? どうしよう……私どうしよう……」
まったりとした時間の中、ひとりあたふたするピノであった。



▽▽▽▽▽▽
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