スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第103話 いよいよ海合宿が始まりました #2

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サーケイブから帰ってからの毎日は、何事もない平穏な日々。
トラブルっぽい事と言えば、アイさんが僕達のクラスに突撃してきた事くらいかな。

そのアイさんは、僕のせいでゴブリンだらけの魔物部屋に放り込まれて大変だったって愚痴を言ってきたけど、魔物部屋で訓練するって決めたのは僕じゃないからね?
……セカンに部屋の手配をしたのは僕だけど。

そうそう、セカンと言えば、セカンケイブが資源ダンジョンになった事が大々的に発表されて、連日もの凄い数の冒険者が押し寄せてるんだって。これはセカンから聞いた話じゃなくて、先生が授業で言ってた。何故変化したかは不明だって。

なので早速ラルとセカンにその事を伝えると、『流石セカンお姉ちゃんです。ラルも負けてられないですよー』『もう不人気ダンジョンなんて言わせない……けど忙しすぎぃ!』だって。どっちもがんばれー。

それとフィラストダンジョン。
リフォームは順調に進み、あとは微調整って感じみたい。リフォームのお手伝いをしてたラルに『どんな感じ?』って訊いてみたら、『リーク禁止、ネタバレ禁止、ですよ』だって。

モリスさんによると、新ダンジョン『セントラルダンジョン』の発見は、セカンケイブフィーバーが落ち着いた頃に発表するみたい。『今発表すると、フタツメの街のセカンケイブ特需を潰す事になっちゃうでしょ? だからセカンケイブにたっぷりお金が落ちてから発表する事になったんだ。君達もそれまで秘密にしておいてね」だって。



そんな平穏で何事もない――
……あれっ、周りでは色々あった……?
――そんな一週間が過ぎ去り。
そして今日はいよいよ……

「みなさぁーーん、きょうはぁ、いよいよぉ……楽しい合宿の日ですよぉーーー。ええっとぉ……うん、全員揃ってますねぇーーー。じゃぁあー、外に出てぇ、大型馬車に乗ってくださぁーーい。間違ってぇ、他のクラスの馬車に乗ったらぁ、ダメですからねぇーーー」

そう、合宿に出発する日がやって来た!

今日の予定は、朝学校を出発したらずっと馬車に揺られ、夕方くらいに合宿所に到着するんだって。
途中休憩はあるだろうけど、一日中移動っていうのは大変だなあ。

……もちろん冒険者には一日中歩いて馬車を護衛する依頼とか普通にあるから、馬車に乗れる移動が大変とか言ってちゃいけないんだけど。

でも――
「ただ乗ってるだけなんて退屈よ! 護衛の練習って事にして、歩いて行きたいところよね」
なんて言ってる影のリーダーもいる事だし、まいっか。

そんな僕達が乗る馬車はというと――
中には小さな木の椅子が通路を挟んで3つ、それが6列並ぶ、なんと18人乗りの大型馬車。
後ろから見ると、|日_日_日|って感じかな。

一番乗りは譲らないって感じで先頭切って馬車に乗ったアーシュ――と、それに巻き込まれる感じですぐ後ろに続いた僕達。そうなると当然僕達の座席は一番前って事になるだよね。
だって、乗り口は馬車の一番後ろで、前から順に乗るようにって言われてるから。

「じゃあカルアが真ん中ね。どうせワルツカルアの隣がいいって言うんでしょ?」
「もちろん過ぎ。今のカル師は、共有資産」
「きょっ共有って!?……全くもうワルツってばいつもいつも……まあいいわ。じゃあ座るわよ!」
そんな僕達のすぐ後ろはノルトとネッガー。
オーディナリーダ区画って感じだ。

今回海に行くのは魔法師クラスと冒険者クラスで、他のクラスは山合宿。
だから海に向かう馬車は全部で8台で、そのうちの4台が魔法師クラス用だ。
人数に対して座席の数が多いのは、クラス用馬車の1台が故障とか馬が怪我した時とかに残りの3台に分散して乗れるように、だって。

馬車の隊列は王都を出て、街道を南に進む。
勿論アーシュが用意したパーティ用馬車みたいに快適じゃないけど、それなりに作りがしっかりしてるのか、揺れはそんなでもない。

そしてそろそろ王都を出発して1時間。
先頭の馬車が速度を緩め、やがて隊列全ての馬車が街道の端に寄せて停車した。
あ、もう休憩?
でもここ……道の上だよね?
他の馬車の邪魔になっちゃうんじゃ……

僕達の乗る馬車は回復魔法のバリー先生が引率。
一番後ろの席に座るそのバリー先生から、停車に軽くざわめく僕達に声が掛かった。

「えー、それではここから暫く馬車の揺れ軽減機能を停止します。これは、揺れ軽減にどのような魔法が使われていて、どれ程の効果があるのかを身をもって体験してもらうためです」

そっか、揺れが少なかったのはそんな機能が付いてたからなのか。

「……ちなみに冒険者クラスの馬車も同様に機能停止します。冒険者志望の皆さんは、一般の安馬車というものを体験してもらうという事で」

そんなバリー先生の話のあと、馬車は再び走り出した。でも今度はさっきまでとは全然違い、ガタゴトと揺れが激しくて音も煩い。もう馬車の箱ごと大振動大騒動って感じ。

「わわっ!」
「痛っ!」
「危なっ!」

あちこちから聞こえてくる短い悲鳴みたいな声。
走り出して暫くすると、揺れには慣れてきたみたいだけど……
「ちょっとコレ、椅子が……」
「尻が痛い」
「くぅぅ……クッションとか欲しい」
そんな声が車内のあちこちから。

そんな中、僕達オーディナリーダは軽く頷き合うと、共有ボックスからそれぞれ自分のクッションを取り出した。
「うん、やっぱこのクッションいいね」
「だね。あの馬車は凄すぎてあんまり実感出来なかったけど、今のこの揺れだとはっきり分かるよ」

そう、セカンケイブに行く時に用意した、あのクッションを。
そんな感想を言い合う僕らの後ろから聞こえだした、冷えきった低い声。

「くっ、あいつら……」
「何て用意のいい」
「羨ましいぜ」

……今は後ろ見ない事にしよう。

「カル師見て、わたし、クッションを改ぞ――」

ガタンっ!
石踏んだ!? 車体が跳ね――

「わぁーー……むふっ」

ちょうど僕の方に身を乗り出してたワルツが、僕の上に降ってきた。座席の上の僕の太ももの上に。
顔から。

「んなっ!? わわわわワルツあんたそれ狙って――!?」
「ええっと、ワルツ大丈夫?」
「大丈夫じゃない。もう少し、このまま。すぅはぁすぅはぁ」
「はっ、早く離れなさいよ!」
「無理、まーだー揺ーれーがーーあ」

ちょっ、頭をぐりぐりしないでーーーーっ!

「そんな姿勢で首を振るんじゃなーーいっ!」

アーシュ!?
走ってる車内でそんな身を乗り出したら――
ガタンっ!
また石踏んだ!? ほらやっぱりフラg――

「きーやーーあ」
むにゅっ――

今度は左からアーシュが降ってきた。
僕の後頭部に。
胸元から。

この体勢から背筋だけでアーシュを支えるなんて絶対無理。
前屈みの姿勢に押し潰された僕は、太ももの上にあるワルツの頭の上にお腹から覆い被さり、その上からアーシュが覆い被さってる。

く、苦しい……頭とお腹を上下から押さえられて……息が……息が……っ

…………もうダメ、だんだん意識が……

うう…………
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