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7 尊敬できる親友
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さらが日本を去る前日になってしまった。
もう会えなくなる。
やっと巡り会えた(尊敬できる親友)が遠くに行ってしまうことはやはり寂しい。
さらからの誘いで、駅前のカフェレストランで最初で最後のランチをすることになっていた。
ランチの当日。
二人で店に入って席に座ると、さらは「思い出に残るようにこの店で1番高いランチにしよう。私が奢る」
と言ってくれた。
変な遠慮はしたくない。
笑顔で
「はい!」
と言葉を返した。
1人3800円
遠慮がちな顔はしないでさらとの時を楽しみたい。
私はあまり外食することはないので値段にびっくりしてしまう。
私には贅沢すぎるほどの食事だった。
食事が済んでアイスコーヒーが運ばれてきた時、さらがゆっくり首から十字架のネックレスを外して優しい笑顔で言う。
「良かったら貰ってくれる?
もうひとつ同じものを持っているの。
だから遠慮しないで貰ってちょうだい。」
私は素直に笑顔で応えた。
綺麗にクリーニングされて磨かれている。
受け取った時、ネックレスにはさらの体温が残っていた。
明日でお別れになってしまうんだと実感する。
距離が離れてしまう分もっと親しくなれる感じもしていた。
今、私の目の前にいる人は私が待ち望んでいたまさに「尊敬できる親友」その人だった。
この時私はまだ信仰をもっているとは言えなかったが、神は私が思っているより近くに存在しているように感じていた。
思えばいじめから適応障害を発症し、引きこもり、希死念慮、サヴァンのような体験から高認合格、大学合格、そして、さらとの出会い。
私は神に祈ったこともないのに、私の願いへと導かれてきた。
神は宇宙の法則などと呼べるような無機質な存在ではない。
いつかさらが教えてくれたように意志や感情、知性を持つ存在であることに気付き始めていた。
*
ひとつの季節が終わると、次の季節が約束されていたかのように待ち構えている。
さらが結婚してボストンに住み3か月があっという間に過ぎていった。
映美はその間いろんなことをさらから教わった。
さらの口から栄光、賛美という言葉をよく聞くことに気がつく。
お寺や神社では聞いたことのないような言葉だ。
特に栄光という言葉は私の心の奥まで響いてきた。
日本人の発想の中にはなかった言葉のように思えた。
私は聖書を作り話や御伽話だとはもはや思えない。
*
ある日曜日の朝早く、突然さらからラインではなく電話がかかってきた。
「もしもし、映美 朝早くからごめんね。 今、大丈夫?」
「はい。」
「貴方に会いたいと思っているの。
ラインとか電話ではなく貴方と直接会って顔を見ながらゆっ くり話がしたいの」
あまりに急な言葉に映美は困惑する。
さらが私に会うためにわざわざ日本に来るのだろうか?
私にボストンまで来て欲しいというのだろうか?
私は学生でそんな経済的な余裕はない。
さらもわかっているはずだ。
さらは話を続ける。
「実はね。三日連続で映美の夢を見たの。
私が映美に(命を見つめる)ということについて話している夢。
あなたが私の話を真剣な顔をして何度も頷きながら聴いていた。
夢の中の映美の顔が今でもはっきり見えているの。
あまりにも鮮やかな夢だった。
このことを主人に話したら、
(映美に会うべきだ。機会を逃してはいけない)
と言われた。
私とまったく同じ意見だった。
私が日本に行ってもいいのだけれど、実は今お腹の中に新しい命が与えられたの」
「えっ、おめでとうございます」
映美は心から喜んだ。
さらが幸せでいることが素直に嬉しい。
「それでね。もしよかったら、ボストンもいろいろ案内できるし、往復のチケット代と旅行に必要なお金を贈らせてもらうからボストンまで来れる?
急なお願いでごめんね。
びっくりしたかもしれないけど...」
映美の遠慮深さは吹き飛んでいた。
「夏休みを利用していきます」と即答する。
さらが何か急いでいるようにも思えた。
数日後、日本からボストンまでの往復のチケット代と旅行費用が送られてくる。
十分すぎるお金でびっくりした。
お金を受け取ってすぐさらにラインする。
こんなにたくさんのお金ありがとうございます。
でも、絶対こんなには使わないので、残りはお返しさせて下さい。
赤ちゃんが生まれたらお金は必要です。
映美は心の奥で、さらに会うまでにイエスキリストを救い主として受け入れることをはっきりさせておくべきだと感じてしまう。
いや、やっぱりそれは違う。
さらとの関係に於いて余計な心づかいはすべて取り外すと決めている。
さらが教えてくれた心と心の会話に傷を付けたくはない。
本心からの言葉だけで話したい。
気まずくなっても正直な思いだけを大切にするんだ。
さらに会うときが来ても、自分の心がはっきりしていなければそのままでいい。
それでいい。
そうするべきなんだ。
もう会えなくなる。
やっと巡り会えた(尊敬できる親友)が遠くに行ってしまうことはやはり寂しい。
さらからの誘いで、駅前のカフェレストランで最初で最後のランチをすることになっていた。
ランチの当日。
二人で店に入って席に座ると、さらは「思い出に残るようにこの店で1番高いランチにしよう。私が奢る」
と言ってくれた。
変な遠慮はしたくない。
笑顔で
「はい!」
と言葉を返した。
1人3800円
遠慮がちな顔はしないでさらとの時を楽しみたい。
私はあまり外食することはないので値段にびっくりしてしまう。
私には贅沢すぎるほどの食事だった。
食事が済んでアイスコーヒーが運ばれてきた時、さらがゆっくり首から十字架のネックレスを外して優しい笑顔で言う。
「良かったら貰ってくれる?
もうひとつ同じものを持っているの。
だから遠慮しないで貰ってちょうだい。」
私は素直に笑顔で応えた。
綺麗にクリーニングされて磨かれている。
受け取った時、ネックレスにはさらの体温が残っていた。
明日でお別れになってしまうんだと実感する。
距離が離れてしまう分もっと親しくなれる感じもしていた。
今、私の目の前にいる人は私が待ち望んでいたまさに「尊敬できる親友」その人だった。
この時私はまだ信仰をもっているとは言えなかったが、神は私が思っているより近くに存在しているように感じていた。
思えばいじめから適応障害を発症し、引きこもり、希死念慮、サヴァンのような体験から高認合格、大学合格、そして、さらとの出会い。
私は神に祈ったこともないのに、私の願いへと導かれてきた。
神は宇宙の法則などと呼べるような無機質な存在ではない。
いつかさらが教えてくれたように意志や感情、知性を持つ存在であることに気付き始めていた。
*
ひとつの季節が終わると、次の季節が約束されていたかのように待ち構えている。
さらが結婚してボストンに住み3か月があっという間に過ぎていった。
映美はその間いろんなことをさらから教わった。
さらの口から栄光、賛美という言葉をよく聞くことに気がつく。
お寺や神社では聞いたことのないような言葉だ。
特に栄光という言葉は私の心の奥まで響いてきた。
日本人の発想の中にはなかった言葉のように思えた。
私は聖書を作り話や御伽話だとはもはや思えない。
*
ある日曜日の朝早く、突然さらからラインではなく電話がかかってきた。
「もしもし、映美 朝早くからごめんね。 今、大丈夫?」
「はい。」
「貴方に会いたいと思っているの。
ラインとか電話ではなく貴方と直接会って顔を見ながらゆっ くり話がしたいの」
あまりに急な言葉に映美は困惑する。
さらが私に会うためにわざわざ日本に来るのだろうか?
私にボストンまで来て欲しいというのだろうか?
私は学生でそんな経済的な余裕はない。
さらもわかっているはずだ。
さらは話を続ける。
「実はね。三日連続で映美の夢を見たの。
私が映美に(命を見つめる)ということについて話している夢。
あなたが私の話を真剣な顔をして何度も頷きながら聴いていた。
夢の中の映美の顔が今でもはっきり見えているの。
あまりにも鮮やかな夢だった。
このことを主人に話したら、
(映美に会うべきだ。機会を逃してはいけない)
と言われた。
私とまったく同じ意見だった。
私が日本に行ってもいいのだけれど、実は今お腹の中に新しい命が与えられたの」
「えっ、おめでとうございます」
映美は心から喜んだ。
さらが幸せでいることが素直に嬉しい。
「それでね。もしよかったら、ボストンもいろいろ案内できるし、往復のチケット代と旅行に必要なお金を贈らせてもらうからボストンまで来れる?
急なお願いでごめんね。
びっくりしたかもしれないけど...」
映美の遠慮深さは吹き飛んでいた。
「夏休みを利用していきます」と即答する。
さらが何か急いでいるようにも思えた。
数日後、日本からボストンまでの往復のチケット代と旅行費用が送られてくる。
十分すぎるお金でびっくりした。
お金を受け取ってすぐさらにラインする。
こんなにたくさんのお金ありがとうございます。
でも、絶対こんなには使わないので、残りはお返しさせて下さい。
赤ちゃんが生まれたらお金は必要です。
映美は心の奥で、さらに会うまでにイエスキリストを救い主として受け入れることをはっきりさせておくべきだと感じてしまう。
いや、やっぱりそれは違う。
さらとの関係に於いて余計な心づかいはすべて取り外すと決めている。
さらが教えてくれた心と心の会話に傷を付けたくはない。
本心からの言葉だけで話したい。
気まずくなっても正直な思いだけを大切にするんだ。
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それでいい。
そうするべきなんだ。
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