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あの日からすぐに私と王太子殿下はこちら側の非にならないような理由で婚約白紙を行なった。
その後、すぐ王妃陛下の紹介ということでラムダス様と正式に婚約も。
だからなのか、周りはほとんど騒ぐことはなかったが。実質、この国を動かしている彼女の采配、つまり異論を言うものはほぼいなかったので。
ただ、一部、この国の状況を把握する者達からは王太子殿下側に問題があったのだろうという推測は出てしまったけれど。
レイダー伯爵令嬢の存在と共に。
二人が一緒にいるところを目撃したという証言が出てきてしまったので。それも貴族らしくなく、むしろ平民のように仲睦まじくと。
まあ、今では私達も彼らのことは悪く言えないのだけれど。
何しろ、前回の事もあり、なるべくお互いに会う機会を多くしてみた結果、私達は思いのほかうまが合う事がわかり、彼らほどではないが仲睦まじい関係になれたので。
もちろん、貴族らしくお互いの領地経営の手伝いもしているけれど。
そして、休憩中は公園で恋人みたいに手を握りながら散歩を。
「いやあ、驚いてますよ。まさか、リリーナ嬢とこんなに仲良くなれるなんて」
そう言ってくるラムダス様に同意をしながら。
「私も今、同じ事を思っていましたわ。やはり、話が合うのが一番なのでしょうか?」
領地経営の手伝いをする際、彼との会話がとても楽しく、ずっとその時間が続けばと思ってしまうので。
もちろん、それ以外の時間もだけれど。
そう思っていると彼が視線をずらしながら言ってくる。
「そ、それもありますが……貴女が魅力的というのもあります」
更には頬を赤らめて。
なので私も同じように赤くなってしまったが。
「……あ、ありがとうございます」
嬉しさと恥ずかしさで俯きながら。
彼も私の方は見ていないはずなのに——と、そう思いながらも、お互いの想いは繋がった手を伝わりわかってしまう。
それは、しばらく会話がなくなってしまっても。
ただ、頭の中にふと、ある言葉が思い浮かんだらつい口を開いてしまったが。
「一年前のあの日、私は真実の愛なんてどうかしてると思っていましたが、こうやってラムダス様と出会えた事で王太子殿下達の事をもう悪く思う事ができなくなってしまいました」
そう心から思いながら。
「それは、僕も同じですよ。正直、リリーナ嬢に出会えた今はあの二人には感謝しかないですから」
ラムダス様も同じ思いだったらしくそう言ってきたことで私達はお互いに見つめ合い……
「ふふ」
「ははは」
笑ってしまって。
ただ、今でもこうやって笑えることに驚きと信じられない思いがあるけれど。
何しろ、それだけお妃教育が染み込んでしまっているので。
骨の髄までも。
まあ、だからこそ、ふと思ってしまうのだけれど。レイダー伯爵令嬢が今、どんな思いでお妃教育を受けているのだろうかと。
特に夢から醒めていくことに……
私はそう思いながらも彼女のお妃教育が上手くいく事を願うのだった。
◇
一年後
私達は王太子殿下とレイダー伯爵令嬢の婚約発表パーティーに呼ばれていた。
まあ、実際にはこのパーティーの裏の主旨は二人の婚約発表よりもロクサーヌ王国を盛り上げる兄や、他の若い貴族を各国の関わりのある要人にお披露目する場としての方が本命と言っても過言ではないのだけれど。
何しろ、王太子殿下はお飾りだという事は今回呼ばれた各国の要人も理解しているので。
国王陛下が今までやってきた行動のおかげで……と、私は兄に顔を向ける。
「エリザベス様はどうなるのですか?」
「見切りをつけられた王太子殿下と違って頑張っているから、もうちょっと様子を見るみたいだよ」
「そうですか……」と、私は現在、ターバンを巻いたダリシュ公国の要人と話をしている、王太子殿下とエリザベス様の方に視線を向ける。
王太子殿下はただ笑っているだけだけど、エリザベス様はなんとか会話ができるレベルになっているみたいね——と、少々、彼女のことを不憫に思いながら。
やはり、伯爵家で一般的なマナーしか教えられていない彼女では、短期間だとあれぐらいが限界だと考えていたので。
つまり今の彼女は——と、後で会いに行くとやはり弱気な発言を言ってきて……
だから、つい叱咤激励に混ぜながら嫌味を言ってしまったが。
そして、後味の悪さを感じる事なくスッキリした気持ちで歩いていると王妃陛下に声をかけられも。
「リリーナ、今幸せかしら?」
全て上手くいったという表情で。
「はい、王妃陛下のおかげです」
その言葉で満足そうに扇子を仰ぎも。
「あら、嬉しい事を言ってくれるじゃない。モルガン伯爵令息はきっとあなたに合うと思ったのよ」
「ふふ、それだけですか?」
更に私がそう言って微笑むと、彼女は満面の笑みを浮かべて「将来、モルガン伯爵家の海側に大きな港を作ろうと思ってるのよ。だから、太いパイプが欲しくて……。でも、よくわかったわね」と、ネタバレまでしてきて。
ただし、「モルガン伯爵家の領地経営のお手伝いをしているうちに気付きました。それに最近、ロクサーヌ王国は隣の大陸との国交にも力を入れてますものね」
私がそう言うなり小さく息を吐いてきたが。
「あらあら、やっぱりあなたを手放したのは失敗だったかしら」と、冗談半分で。
つまりはもう半分は——と、私は冗談じゃないという気持ちで口を開く。
「いいえ、エリザベス様もなかなかですし、いざとなれば兄や周りが動いてくれますから。まあ、ただ……」
「ただ?」と、首を傾げてくる彼女につい本音も。
「二人にお子様ができたらしっかりと貴族の常識を教えて下さいね」
失敗したら貴女の責任ですよと笑顔を向けて。
彼女は驚いた顔をした後に苦笑をしてきたが。
「ふふふふっ、わかったわ。必ず、常識ある子に育てるわね」と、少しだけ申しわけなさそうな表情で頷きながら——と、私達はお互いにしばらく見つめあう。
それから軽く頭を下げ、その場を後にも。
お互いの家族と合流するために。
そして、私は愛する人とも。
ただ、遠くで兄と話す王太子殿下を視界に入れるなり思わず立ち止まってしまったが。
周りに無能と言われようが操り人形と言われようが、耳に入らない限りきっと幸せなのだろう。
だけど、可哀想だとは思わない。
だって、とても楽しそうに笑っているのだもの。
王太子殿下の姿についそう思ってしまったので。
重荷を全て降ろした今は特に——と、私はそっと口を開く。愛する人の姿を視界に入れ、幸せを噛み締めながら。
「だから……どうかそのまま真実の愛という幻想の中でいつまでもお幸せにお過ごし下さいね」
fin.
その後、すぐ王妃陛下の紹介ということでラムダス様と正式に婚約も。
だからなのか、周りはほとんど騒ぐことはなかったが。実質、この国を動かしている彼女の采配、つまり異論を言うものはほぼいなかったので。
ただ、一部、この国の状況を把握する者達からは王太子殿下側に問題があったのだろうという推測は出てしまったけれど。
レイダー伯爵令嬢の存在と共に。
二人が一緒にいるところを目撃したという証言が出てきてしまったので。それも貴族らしくなく、むしろ平民のように仲睦まじくと。
まあ、今では私達も彼らのことは悪く言えないのだけれど。
何しろ、前回の事もあり、なるべくお互いに会う機会を多くしてみた結果、私達は思いのほかうまが合う事がわかり、彼らほどではないが仲睦まじい関係になれたので。
もちろん、貴族らしくお互いの領地経営の手伝いもしているけれど。
そして、休憩中は公園で恋人みたいに手を握りながら散歩を。
「いやあ、驚いてますよ。まさか、リリーナ嬢とこんなに仲良くなれるなんて」
そう言ってくるラムダス様に同意をしながら。
「私も今、同じ事を思っていましたわ。やはり、話が合うのが一番なのでしょうか?」
領地経営の手伝いをする際、彼との会話がとても楽しく、ずっとその時間が続けばと思ってしまうので。
もちろん、それ以外の時間もだけれど。
そう思っていると彼が視線をずらしながら言ってくる。
「そ、それもありますが……貴女が魅力的というのもあります」
更には頬を赤らめて。
なので私も同じように赤くなってしまったが。
「……あ、ありがとうございます」
嬉しさと恥ずかしさで俯きながら。
彼も私の方は見ていないはずなのに——と、そう思いながらも、お互いの想いは繋がった手を伝わりわかってしまう。
それは、しばらく会話がなくなってしまっても。
ただ、頭の中にふと、ある言葉が思い浮かんだらつい口を開いてしまったが。
「一年前のあの日、私は真実の愛なんてどうかしてると思っていましたが、こうやってラムダス様と出会えた事で王太子殿下達の事をもう悪く思う事ができなくなってしまいました」
そう心から思いながら。
「それは、僕も同じですよ。正直、リリーナ嬢に出会えた今はあの二人には感謝しかないですから」
ラムダス様も同じ思いだったらしくそう言ってきたことで私達はお互いに見つめ合い……
「ふふ」
「ははは」
笑ってしまって。
ただ、今でもこうやって笑えることに驚きと信じられない思いがあるけれど。
何しろ、それだけお妃教育が染み込んでしまっているので。
骨の髄までも。
まあ、だからこそ、ふと思ってしまうのだけれど。レイダー伯爵令嬢が今、どんな思いでお妃教育を受けているのだろうかと。
特に夢から醒めていくことに……
私はそう思いながらも彼女のお妃教育が上手くいく事を願うのだった。
◇
一年後
私達は王太子殿下とレイダー伯爵令嬢の婚約発表パーティーに呼ばれていた。
まあ、実際にはこのパーティーの裏の主旨は二人の婚約発表よりもロクサーヌ王国を盛り上げる兄や、他の若い貴族を各国の関わりのある要人にお披露目する場としての方が本命と言っても過言ではないのだけれど。
何しろ、王太子殿下はお飾りだという事は今回呼ばれた各国の要人も理解しているので。
国王陛下が今までやってきた行動のおかげで……と、私は兄に顔を向ける。
「エリザベス様はどうなるのですか?」
「見切りをつけられた王太子殿下と違って頑張っているから、もうちょっと様子を見るみたいだよ」
「そうですか……」と、私は現在、ターバンを巻いたダリシュ公国の要人と話をしている、王太子殿下とエリザベス様の方に視線を向ける。
王太子殿下はただ笑っているだけだけど、エリザベス様はなんとか会話ができるレベルになっているみたいね——と、少々、彼女のことを不憫に思いながら。
やはり、伯爵家で一般的なマナーしか教えられていない彼女では、短期間だとあれぐらいが限界だと考えていたので。
つまり今の彼女は——と、後で会いに行くとやはり弱気な発言を言ってきて……
だから、つい叱咤激励に混ぜながら嫌味を言ってしまったが。
そして、後味の悪さを感じる事なくスッキリした気持ちで歩いていると王妃陛下に声をかけられも。
「リリーナ、今幸せかしら?」
全て上手くいったという表情で。
「はい、王妃陛下のおかげです」
その言葉で満足そうに扇子を仰ぎも。
「あら、嬉しい事を言ってくれるじゃない。モルガン伯爵令息はきっとあなたに合うと思ったのよ」
「ふふ、それだけですか?」
更に私がそう言って微笑むと、彼女は満面の笑みを浮かべて「将来、モルガン伯爵家の海側に大きな港を作ろうと思ってるのよ。だから、太いパイプが欲しくて……。でも、よくわかったわね」と、ネタバレまでしてきて。
ただし、「モルガン伯爵家の領地経営のお手伝いをしているうちに気付きました。それに最近、ロクサーヌ王国は隣の大陸との国交にも力を入れてますものね」
私がそう言うなり小さく息を吐いてきたが。
「あらあら、やっぱりあなたを手放したのは失敗だったかしら」と、冗談半分で。
つまりはもう半分は——と、私は冗談じゃないという気持ちで口を開く。
「いいえ、エリザベス様もなかなかですし、いざとなれば兄や周りが動いてくれますから。まあ、ただ……」
「ただ?」と、首を傾げてくる彼女につい本音も。
「二人にお子様ができたらしっかりと貴族の常識を教えて下さいね」
失敗したら貴女の責任ですよと笑顔を向けて。
彼女は驚いた顔をした後に苦笑をしてきたが。
「ふふふふっ、わかったわ。必ず、常識ある子に育てるわね」と、少しだけ申しわけなさそうな表情で頷きながら——と、私達はお互いにしばらく見つめあう。
それから軽く頭を下げ、その場を後にも。
お互いの家族と合流するために。
そして、私は愛する人とも。
ただ、遠くで兄と話す王太子殿下を視界に入れるなり思わず立ち止まってしまったが。
周りに無能と言われようが操り人形と言われようが、耳に入らない限りきっと幸せなのだろう。
だけど、可哀想だとは思わない。
だって、とても楽しそうに笑っているのだもの。
王太子殿下の姿についそう思ってしまったので。
重荷を全て降ろした今は特に——と、私はそっと口を開く。愛する人の姿を視界に入れ、幸せを噛み締めながら。
「だから……どうかそのまま真実の愛という幻想の中でいつまでもお幸せにお過ごし下さいね」
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