5 / 11
5
しおりを挟む
エリオットside.
学園でハンナと別れた後、エリオットはタウンハウスに戻るなり領地経営の勉強をすることにした。
もちろん、ハンナとの将来を夢見て。
ただ、少しして慌てた様子の使用人が部屋のドアを叩きながら、「エリオット様、ハンナ様が乗っていた馬車が事故に巻き込まれたみたいなんです!」
そう言ってきたことで頭の中から考えていた人生設計が吹き飛んでしまったが。
それと、真っ青になっている使用人の後ろに立つフィナの存在に心底驚きも。
「フィナ嬢……なぜ、ここに?」
警戒しているフィナがなぜタウンハウスの中にいるのだと。
しかも、目の前に。
そう思っていると「なんでってお姉様が事故にあった事を直接伝えに来たんですよぉ」というその言葉と使用人から渡されたエドモンドからの手紙に「ああ、手紙を持ってきてくれたのか」と、エリオットは今回、疑うこともせずに納得するが。
そして、フィナに詰め寄りながら「そ、そうだ! ハンナは無事なのか!? 今すぐに何処にいるか教えてくれ!」と質問も。
きっと、今は意識も回復して笑顔を見せているだろう。だからこそ彼女は自分を必要としている、そう思いながら。
そしてエリオット自身も。
「やめてあげてください!」
突然、大声を出しながらエリオットの胸に飛び込み、上目遣いで「エリオット様ぁ、どうか事故によって酷い顔になってしまったお姉様を見に行くのはやめて下さい。大切なお姉様を思う妹として……いいえ、同じ女として……」
そう言って、再びエリオットの胸に顔をうずめて泣きだすことで先ほどの考えはすぐに掻き消えてしまったが。
フィナを離すこともできずに呆然として。想像してしまいそうになってしまったので。事故で酷い顔になったハンナの顔を。
そして、それを見たエリオット自身の表情も。
行ったところで気の利いた言葉を言えるだろうか? と。
すぐにフィナの言葉も思い出してしまうが。自分が行けばフィナの言う通りハンナの心を傷つけてしまう可能性があると。
つまりは自分が行けば……
だから……
エリオットはフィナの温もりに安心感を覚えてしまい口を開く。
「……わかった。ハンナの怪我が良くなるまで待つよ」
「懸命な判断ですよぉ、エリオット様ぁ」
そして、フィナの言葉に気持ちが軽くなりも。
そうだよ。ハンナの怪我が良くなったらすぐにお見舞いに行こう。
そう考えて。
感謝をしながらフィナの頭を優しく撫でて。
◇
あれから、一カ月経った。
なのに相変わらずハンナは目覚める様子はないとの事だった。しかも、顔の傷が膿んでしまって現在大変な状態とも。
なので、エリオットは一度、ハンナの様子を見たいと口を開きかけたのだが、フィナやキリオス伯爵夫人のその説明で閉じてしまって。
そんなに人に見せられない怪我なのか……
それじゃあ、今は会いに行くのは無理だろうと。
「エリオット様は元気になった時に顔を見せれば良いのですよ。今はだからそっとしておいてあげて下さい」
そう言ってくるフィナやキリオス伯爵夫人の心遣いにも感謝しながら。
ただ、そう思いながらもエリオットは何かもやもやするものを感じてしまっていたが。ハンナのことを考えれば考えるほどに。
それは日々強くなっていって。
それこそルーカスが心配そうに声をかけてくるほどに。
「エリオット、大丈夫か?」
「ルーカス様……」
「ハンナ嬢の事を考えているのか?」
「はい、ただ酷い怪我でまだ意識が戻らないらしくて……」
「それなら余計見に行くべきじゃないか? 君は彼女の婚約者なのだろう?」
「それが、フィナ嬢やキリオス伯爵夫人に止められてしまって……」
エリオットがそう答えると、ルーカスはしばらく考えるような仕草をした後に言ってくる。
「エリオット、二人に止められても私は行くべきだと思うけどな」
「でも、ハンナは事故で酷い顔になったらしくて見たら可哀想だと……」
「それなら、いつ見に行くんだ?」
「それは……ええと」
「おい、まさか、退院するまで会わないつもりなのか? 酷い傷なら一生残るかもしれない。それなら、今行くべきじゃないのか」
「し、しかし、フィナ嬢やキリオス伯爵夫人が……」
「エリオット、君は二人と結婚するんじゃなく、ハンナ嬢と将来結婚するのだろう。それとも、本音は酷い顔になってしまったハンナ嬢に会いたくないとかじゃないだろうな?」
ルーカスにそう質問された直後、エリオットはドキッとしてしまう。ハンナの美しい顔に大きく傷が付いた姿を想像してしまいながら。酷い顔になってしまっても自分は愛せるだろうかと。
ただ、すぐにエリオットは頭を軽く振ってその考えを追い出したが。
「……そんな事はありません。でも、会おうにも彼女にどうやって会いに行けば良いのでしょう?」
自分が会いたくないわけではないのだと気持ちを出しながら。
「……ハンナ嬢はきっと領地じゃなく、腕の良い医者がいる王都の病院に入院しているはずだ。それならツテを使って私なら探す事ができるかもしれない。わかったら教えよう」
そして、ルーカスの言葉に複雑な気持ちを抱きながらも感謝をして。
「ありがとうございます」
ただ、そんなエリオットにルーカスは不満気な表情だったが。
何しろ、エリオットの雰囲気、そして態度からルーカスにとっては忌み嫌うようなものを感じたので。
エリオットは最後まで気づく事はなかったが。
学園でハンナと別れた後、エリオットはタウンハウスに戻るなり領地経営の勉強をすることにした。
もちろん、ハンナとの将来を夢見て。
ただ、少しして慌てた様子の使用人が部屋のドアを叩きながら、「エリオット様、ハンナ様が乗っていた馬車が事故に巻き込まれたみたいなんです!」
そう言ってきたことで頭の中から考えていた人生設計が吹き飛んでしまったが。
それと、真っ青になっている使用人の後ろに立つフィナの存在に心底驚きも。
「フィナ嬢……なぜ、ここに?」
警戒しているフィナがなぜタウンハウスの中にいるのだと。
しかも、目の前に。
そう思っていると「なんでってお姉様が事故にあった事を直接伝えに来たんですよぉ」というその言葉と使用人から渡されたエドモンドからの手紙に「ああ、手紙を持ってきてくれたのか」と、エリオットは今回、疑うこともせずに納得するが。
そして、フィナに詰め寄りながら「そ、そうだ! ハンナは無事なのか!? 今すぐに何処にいるか教えてくれ!」と質問も。
きっと、今は意識も回復して笑顔を見せているだろう。だからこそ彼女は自分を必要としている、そう思いながら。
そしてエリオット自身も。
「やめてあげてください!」
突然、大声を出しながらエリオットの胸に飛び込み、上目遣いで「エリオット様ぁ、どうか事故によって酷い顔になってしまったお姉様を見に行くのはやめて下さい。大切なお姉様を思う妹として……いいえ、同じ女として……」
そう言って、再びエリオットの胸に顔をうずめて泣きだすことで先ほどの考えはすぐに掻き消えてしまったが。
フィナを離すこともできずに呆然として。想像してしまいそうになってしまったので。事故で酷い顔になったハンナの顔を。
そして、それを見たエリオット自身の表情も。
行ったところで気の利いた言葉を言えるだろうか? と。
すぐにフィナの言葉も思い出してしまうが。自分が行けばフィナの言う通りハンナの心を傷つけてしまう可能性があると。
つまりは自分が行けば……
だから……
エリオットはフィナの温もりに安心感を覚えてしまい口を開く。
「……わかった。ハンナの怪我が良くなるまで待つよ」
「懸命な判断ですよぉ、エリオット様ぁ」
そして、フィナの言葉に気持ちが軽くなりも。
そうだよ。ハンナの怪我が良くなったらすぐにお見舞いに行こう。
そう考えて。
感謝をしながらフィナの頭を優しく撫でて。
◇
あれから、一カ月経った。
なのに相変わらずハンナは目覚める様子はないとの事だった。しかも、顔の傷が膿んでしまって現在大変な状態とも。
なので、エリオットは一度、ハンナの様子を見たいと口を開きかけたのだが、フィナやキリオス伯爵夫人のその説明で閉じてしまって。
そんなに人に見せられない怪我なのか……
それじゃあ、今は会いに行くのは無理だろうと。
「エリオット様は元気になった時に顔を見せれば良いのですよ。今はだからそっとしておいてあげて下さい」
そう言ってくるフィナやキリオス伯爵夫人の心遣いにも感謝しながら。
ただ、そう思いながらもエリオットは何かもやもやするものを感じてしまっていたが。ハンナのことを考えれば考えるほどに。
それは日々強くなっていって。
それこそルーカスが心配そうに声をかけてくるほどに。
「エリオット、大丈夫か?」
「ルーカス様……」
「ハンナ嬢の事を考えているのか?」
「はい、ただ酷い怪我でまだ意識が戻らないらしくて……」
「それなら余計見に行くべきじゃないか? 君は彼女の婚約者なのだろう?」
「それが、フィナ嬢やキリオス伯爵夫人に止められてしまって……」
エリオットがそう答えると、ルーカスはしばらく考えるような仕草をした後に言ってくる。
「エリオット、二人に止められても私は行くべきだと思うけどな」
「でも、ハンナは事故で酷い顔になったらしくて見たら可哀想だと……」
「それなら、いつ見に行くんだ?」
「それは……ええと」
「おい、まさか、退院するまで会わないつもりなのか? 酷い傷なら一生残るかもしれない。それなら、今行くべきじゃないのか」
「し、しかし、フィナ嬢やキリオス伯爵夫人が……」
「エリオット、君は二人と結婚するんじゃなく、ハンナ嬢と将来結婚するのだろう。それとも、本音は酷い顔になってしまったハンナ嬢に会いたくないとかじゃないだろうな?」
ルーカスにそう質問された直後、エリオットはドキッとしてしまう。ハンナの美しい顔に大きく傷が付いた姿を想像してしまいながら。酷い顔になってしまっても自分は愛せるだろうかと。
ただ、すぐにエリオットは頭を軽く振ってその考えを追い出したが。
「……そんな事はありません。でも、会おうにも彼女にどうやって会いに行けば良いのでしょう?」
自分が会いたくないわけではないのだと気持ちを出しながら。
「……ハンナ嬢はきっと領地じゃなく、腕の良い医者がいる王都の病院に入院しているはずだ。それならツテを使って私なら探す事ができるかもしれない。わかったら教えよう」
そして、ルーカスの言葉に複雑な気持ちを抱きながらも感謝をして。
「ありがとうございます」
ただ、そんなエリオットにルーカスは不満気な表情だったが。
何しろ、エリオットの雰囲気、そして態度からルーカスにとっては忌み嫌うようなものを感じたので。
エリオットは最後まで気づく事はなかったが。
431
あなたにおすすめの小説
(完)婚約解消からの愛は永遠に
青空一夏
恋愛
エリザベスは、火事で頬に火傷をおった。その為に、王太子から婚約解消をされる。
両親からも疎まれ妹からも蔑まれたエリザベスだが・・・・・・
5話プラスおまけで完結予定。
当店では真実の愛は取り扱っておりません
鍛高譚
恋愛
「平民だから、言うことを聞くと思った?」
「……ふざけるのも大概にしてください。平民なめんな。」
公爵家令嬢ココア・ブレンディは、突然の婚約破棄を告げられる。
理由は“真実の愛”に目覚めたから──?
しかもそのお相手は、有力商会の娘、クレオ・パステル。
……って、えっ? 聞いてませんけど!? 会ったことすらないんですが!?
資産目当ての“真実の愛”を押しつけられた商人令嬢クレオは、
見事な啖呵で公爵家の目論見を一刀両断!
「商人の本気、見せてあげます。取引先ごと、手を引いていただきますね」
そして、婚約を一方的に破棄されたココアは、クレオとまさかのタッグを組む!
「ココア様、まずはお友達からよろしくなのです」
「ええ。ではまず、資本提携から始めましょうか」
名門貴族と平民商人――立場を超えて最強の令嬢コンビが誕生!
没落寸前のブラック公爵家を、“商売と優雅さ”でじわじわ追い詰める痛快ざまぁ劇!
――平民を侮る者には、優雅で冷酷な報いを。
“真実の愛”では買えない未来が、ここにある。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
婚約者に突き飛ばされて前世を思い出しました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢のミレナは、双子の妹キサラより劣っていると思われていた。
婚約者のルドノスも同じ考えのようで、ミレナよりキサラと婚約したくなったらしい。
排除しようとルドノスが突き飛ばした時に、ミレナは前世の記憶を思い出し危機を回避した。
今までミレナが支えていたから、妹の方が優秀と思われている。
前世の記憶を思い出したミレナは、キサラのために何かすることはなかった。
【短編完結】記憶なしで婚約破棄、常識的にざまあです。だってそれまずいって
鏑木 うりこ
恋愛
お慕いしておりましたのにーーー
残った記憶は強烈な悲しみだけだったけれど、私が目を開けると婚約破棄の真っ最中?!
待って待って何にも分からない!目の前の人の顔も名前も、私の腕をつかみ上げている人のことも!
うわーーうわーーどうしたらいいんだ!
メンタルつよつよ女子がふわ~り、さっくりかる~い感じの婚約破棄でざまぁしてしまった。でもメンタルつよつよなので、ザクザク切り捨てて行きます!
真実の愛を見つけた王太子殿下、婚約破棄の前に10年分の王家運営費1.5億枚を精算して頂けます?
ぱすた屋さん
恋愛
「エルゼ、婚約を破棄する! 私は真実の愛を見つけたのだ!」
建国記念祭の夜会、王太子アルフォンスに断罪された公爵令嬢エルゼ。
だが彼女は泣き崩れるどころか、事務的に一枚の書類を取り出した。
「承知いたしました。では、我が家が立て替えた10年分の王家運営費――金貨1億5800万枚の精算をお願いします」
宝石代、夜会費、そして城の維持費。
すべてを公爵家の「融資」で賄っていた王家に、返済能力などあるはずもない。
「支払えない? では担保として、王都の魔力供給と水道、食料搬入路の使用を差し止めます。あ、殿下が今履いている靴も我が家の備品ですので、今すぐ脱いでくださいね?」
暗闇に沈む王城で、靴下姿で這いつくばる元婚約者。
下着同然の姿で震える「自称・聖女」。
「ゴミの分別は、淑女の嗜みですわ」
沈みゆく泥舟(王国)を捨て、彼女を「財務卿」として熱望する隣国の帝国へと向かう、爽快な論理的ざまぁ短編!
【短編】将来の王太子妃が婚約破棄をされました。宣言した相手は聖女と王太子。あれ何やら二人の様子がおかしい……
しろねこ。
恋愛
「婚約破棄させてもらうわね!」
そう言われたのは銀髪青眼のすらりとした美女だ。
魔法が使えないものの、王太子妃教育も受けている彼女だが、その言葉をうけて見に見えて顔色が悪くなった。
「アリス様、冗談は止してください」
震える声でそう言うも、アリスの呼びかけで場が一変する。
「冗談ではありません、エリック様ぁ」
甘えた声を出し呼んだのは、この国の王太子だ。
彼もまた同様に婚約破棄を謳い、皆の前で発表する。
「王太子と聖女が結婚するのは当然だろ?」
この国の伝承で、建国の際に王太子の手助けをした聖女は平民の出でありながら王太子と結婚をし、後の王妃となっている。
聖女は治癒と癒やしの魔法を持ち、他にも魔物を退けられる力があるという。
魔法を使えないレナンとは大違いだ。
それ故に聖女と認められたアリスは、王太子であるエリックの妻になる! というのだが……
「これは何の余興でしょう? エリック様に似ている方まで用意して」
そう言うレナンの顔色はかなり悪い。
この状況をまともに受け止めたくないようだ。
そんな彼女を支えるようにして控えていた護衛騎士は寄り添った。
彼女の気持ちまでも守るかのように。
ハピエン、ご都合主義、両思いが大好きです。
同名キャラで様々な話を書いています。
話により立場や家名が変わりますが、基本の性格は変わりません。
お気に入りのキャラ達の、色々なシチュエーションの話がみたくてこのような形式で書いています。
中編くらいで前後の模様を書けたら書きたいです(^^)
カクヨムさんでも掲載中。
私を見下していた婚約者が破滅する未来が見えましたので、静かに離縁いたします
ほーみ
恋愛
その日、私は十六歳の誕生日を迎えた。
そして目を覚ました瞬間――未来の記憶を手に入れていた。
冷たい床に倒れ込んでいる私の姿。
誰にも手を差し伸べられることなく、泥水をすするように生きる未来。
それだけなら、まだ耐えられたかもしれない。
だが、彼の言葉は、決定的だった。
「――君のような役立たずが、僕の婚約者だったことが恥ずかしい」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる