きっとやり直せる。双子の妹に幸せを奪われた私は別の場所で幸せになる。

しげむろ ゆうき

文字の大きさ
8 / 9

8

しおりを挟む

 ※ホラー回なので苦手な人は飛ばして下さい。
 若干、他の話を読んでる人達ようへのネタです。
 九話から見ても問題ないようにしています。
 





 リリスside.

 ぎぎぎぎぎっ!
 許さない許さない許さない!
 なんでアイリスが侯爵令嬢で私が修道女なのよ!
 逆でしょうがっ!
 私が歯軋りしながら、湿って薄暗いシルフィード修道院の廊下を適当に掃き掃除をしていると、いつの間にか隣にいた顔以外を修道服で隠した女が私に声をかけてきた。

「赤ちゃんを父親の家に取られて悔しいのはわかるけど、そんな顔しちゃ駄目よ」

「違うわよ!」

 私はそう叫んで女を睨むが、全く気にする様子もなく女は私の肩に腕を乗せて言ってきた。

「いいのよ、そんな嘘を吐かなくてもわかってるから」

「嘘じゃないわよ!赤ん坊より私は侯爵令嬢になれなくて悔しんでるのよ!」

「……ふふ、そういう事にしといてあげる。でも、赤ちゃんって可愛いわよね。お目めパッチリ開いちゃってえ」

「だから、違うって言ってるでしょうがあ!」

 私は肩に乗せられている腕を振り解き、女を睨むと手をすくめてきた。

「もう、わかったわよ。赤ちゃんの話しは今はやめておきましょう。それなら今度は何の話しする?」

「しないわよお!」

「もう、恥ずかしがらないでよ」

「恥ずかしがってないからあ!」

「まあ、そうしたら私の話しね」

「聞かないから!」

「ええとね、確か机の引き出しにカマキリを入れておいたのよ」

「聞けえええっ!」

「それで、数日放置しちゃってえ」

「それ以上言わないでええ!」

「あっ、ちなみにカマキリはメスよ。それで開けたらね……」

 女はそう言って頬を染めた後、私の耳元で言ってきたのだ。

「ぎゃあああああっーーーー!」

 私は修道女の丁寧な説明でしっかりと想像してしまい失神してしまった。
 目を覚ますと牢獄みたいな自室のベッドで寝かされており、看病をしてくれていた同室のサミーが声をかけてきた。

「大丈夫かしら、リリスさん」

「大丈夫じゃないわよ。なんなのあの話しを聞かない女は⁉︎」

「……えっ、何言ってるの?あなた突然に廊下で一人で喚いて倒れたのよ」

「はっ?いやいや、顔だけ出した修道服着た女がいたでしょう⁉︎」

「……何を言ってるのよ。今は顔を覆うタイプの修道服は誰も付けてないわよ」

 私はそう言われて気づく。
 確かにこの修道院は顔だけ出すタイプの修道服を着た人物なんていないのだ。

 じゃあ、誰なの……。

 私はそう思った時、耳元で声が聞こえてきた。

『オギャアッ』

「ひいっ!」

 私は思わず叫びながら飛び上がってしまうと、サミーが驚いてしまい私を睨んできた。

「ちょっと、びっくりさせないでよ」

「こ、声が聞こえたのよ」

「はあ、疲れてるんでしょ。とりあえずもう少し横になってなさい。私はあなたが起きた事を修道長に連絡してくるから」

 サミーはそう言うと私が引き止める前に部屋を出て行ってしまった。
 おかげで私は窓のない牢獄の様な薄暗い部屋に一人になってしまい、恐怖感でいっぱいになってしまう。
 そして、考えたくないのにさっきの声を思い出してしまったのだ。

「あれって赤ちゃんの声じゃなくてあの女の声だった……」

 私はそう思った瞬間、見られている感覚がしてゾクっとしてしまう。
 そして視線を感じる方に目を向けてしまい後悔してしまった。
 なにせ、ベッドの足元の暗がりに顔の上部分だけを出したあの修道女が無表情でこっちをじっと見ていたのだ。
 そこで私の意識はゆっくりと落ちていったのだが、意識がなくなる直前、耳元ではっきりと聞こえてきたのだ。

『ママァ、ヒマナライッショニアソボ』


 あの日からリリスは急に汗水流して働く様になった。
 しかも、休みはほとんど取らないのだ。

「遊ぶ暇さえ作らなきゃあいつは出てこない……」

 リリスは何度もそう呟いて今日も休みをとらずに働き続けるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。

雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」 妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。 今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。 私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。

婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~

tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。 ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。

妹に婚約者を取られてしまい、家を追い出されました。しかしそれは幸せの始まりだったようです

hikari
恋愛
姉妹3人と弟1人の4人きょうだい。しかし、3番目の妹リサに婚約者である王太子を取られてしまう。二番目の妹アイーダだけは味方であるものの、次期公爵になる弟のヨハンがリサの味方。両親は無関心。ヨハンによってローサは追い出されてしまう。

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

婚約破棄の夜の余韻~婚約者を奪った妹の高笑いを聞いて姉は旅に出る~

岡暁舟
恋愛
第一王子アンカロンは婚約者である公爵令嬢アンナの妹アリシアを陰で溺愛していた。そして、そのことに気が付いたアンナは二人の関係を糾弾した。 「ばれてしまっては仕方がないですわね?????」 開き直るアリシアの姿を見て、アンナはこれ以上、自分には何もできないことを悟った。そして……何か目的を見つけたアンナはそのまま旅に出るのだった……。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。 そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。 だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。

処理中です...