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しおりを挟む※ホラー回なので苦手な人は飛ばして下さい。
若干、他の話を読んでる人達ようへのネタです。
九話から見ても問題ないようにしています。
リリスside.
ぎぎぎぎぎっ!
許さない許さない許さない!
なんでアイリスが侯爵令嬢で私が修道女なのよ!
逆でしょうがっ!
私が歯軋りしながら、湿って薄暗いシルフィード修道院の廊下を適当に掃き掃除をしていると、いつの間にか隣にいた顔以外を修道服で隠した女が私に声をかけてきた。
「赤ちゃんを父親の家に取られて悔しいのはわかるけど、そんな顔しちゃ駄目よ」
「違うわよ!」
私はそう叫んで女を睨むが、全く気にする様子もなく女は私の肩に腕を乗せて言ってきた。
「いいのよ、そんな嘘を吐かなくてもわかってるから」
「嘘じゃないわよ!赤ん坊より私は侯爵令嬢になれなくて悔しんでるのよ!」
「……ふふ、そういう事にしといてあげる。でも、赤ちゃんって可愛いわよね。お目めパッチリ開いちゃってえ」
「だから、違うって言ってるでしょうがあ!」
私は肩に乗せられている腕を振り解き、女を睨むと手をすくめてきた。
「もう、わかったわよ。赤ちゃんの話しは今はやめておきましょう。それなら今度は何の話しする?」
「しないわよお!」
「もう、恥ずかしがらないでよ」
「恥ずかしがってないからあ!」
「まあ、そうしたら私の話しね」
「聞かないから!」
「ええとね、確か机の引き出しにカマキリを入れておいたのよ」
「聞けえええっ!」
「それで、数日放置しちゃってえ」
「それ以上言わないでええ!」
「あっ、ちなみにカマキリはメスよ。それで開けたらね……」
女はそう言って頬を染めた後、私の耳元で言ってきたのだ。
「ぎゃあああああっーーーー!」
私は修道女の丁寧な説明でしっかりと想像してしまい失神してしまった。
目を覚ますと牢獄みたいな自室のベッドで寝かされており、看病をしてくれていた同室のサミーが声をかけてきた。
「大丈夫かしら、リリスさん」
「大丈夫じゃないわよ。なんなのあの話しを聞かない女は⁉︎」
「……えっ、何言ってるの?あなた突然に廊下で一人で喚いて倒れたのよ」
「はっ?いやいや、顔だけ出した修道服着た女がいたでしょう⁉︎」
「……何を言ってるのよ。今は顔を覆うタイプの修道服は誰も付けてないわよ」
私はそう言われて気づく。
確かにこの修道院は顔だけ出すタイプの修道服を着た人物なんていないのだ。
じゃあ、誰なの……。
私はそう思った時、耳元で声が聞こえてきた。
『オギャアッ』
「ひいっ!」
私は思わず叫びながら飛び上がってしまうと、サミーが驚いてしまい私を睨んできた。
「ちょっと、びっくりさせないでよ」
「こ、声が聞こえたのよ」
「はあ、疲れてるんでしょ。とりあえずもう少し横になってなさい。私はあなたが起きた事を修道長に連絡してくるから」
サミーはそう言うと私が引き止める前に部屋を出て行ってしまった。
おかげで私は窓のない牢獄の様な薄暗い部屋に一人になってしまい、恐怖感でいっぱいになってしまう。
そして、考えたくないのにさっきの声を思い出してしまったのだ。
「あれって赤ちゃんの声じゃなくてあの女の声だった……」
私はそう思った瞬間、見られている感覚がしてゾクっとしてしまう。
そして視線を感じる方に目を向けてしまい後悔してしまった。
なにせ、ベッドの足元の暗がりに顔の上部分だけを出したあの修道女が無表情でこっちをじっと見ていたのだ。
そこで私の意識はゆっくりと落ちていったのだが、意識がなくなる直前、耳元ではっきりと聞こえてきたのだ。
『ママァ、ヒマナライッショニアソボ』
あの日からリリスは急に汗水流して働く様になった。
しかも、休みはほとんど取らないのだ。
「遊ぶ暇さえ作らなきゃあいつは出てこない……」
リリスは何度もそう呟いて今日も休みをとらずに働き続けるのだった。
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