文字サイズ
小
中
大
特大
2 / 21
2月18日(土)
朝から燃えるゴミを出し、近所の業務スーパーまで週末の買い出しを済ませてから、そろそろ2時間。娘二人を連れて、名神高速沿いに安威川を渡り、人気のパン屋さんへ散歩がてらお昼ご飯を買いに行って戻って来ても、旦那はリビングの椅子に座って考え込んでいた。
一番日当たりが良さそうな椅子に座り、いつになく真剣な表情を浮かべている。結婚する前から考えすぎる人だったけど、長女が生まれてからは家の中で不機嫌な顔を作らないようにしていたけれど、今日は少々不穏な空気を醸していた。
旦那の整った顔立ちに、真剣かつアンニュイな表情の組み合わせは非常に美しいと思うのだけど、まだ幼い子供たちには少々怖く見える気がする。
亜衣と映美と洗面所で手を洗い、さっき買って来たパンをお皿に出していると、顔の緊張を解いてキッチンまで手伝いに来てくれた。
「あなたも食べる?」
「ああ、うん。僕の分もある?」
パンの詰まった袋を見て、彼は電気ポットでお湯を沸かし始めた。「気が利かなくてごめんね」と人数分のカップを出し、娘たちの分には真新しい牛乳を開けて注いでくれた。娘たちは早々に食卓について、「いただきます」と両手を合わせ、自分たちの目の前にあるパンにかじりついた。
「芽衣も先に食べて。コーヒーは僕が入れる。紅茶の方がよかった?」
イエローラベルの箱を掲げる。「じゃあ、紅茶で」と私は椅子に座った。子供達の様子を見ながら、二人も食べているクリームパンに手をつけた。少し待っていると、康徳さんが紅茶を持って来て、隣に座った。
ちょっぴり緩慢な動きでミックスサンドを開け、ぼんやりと口に運ぶ。その視線は窓の外に向けられている。
「まだちょっと肌寒いけど、日差しは暖かかったよ。亜衣は途中で上着脱いじゃった」
「へー。午後も天気良さそうだしな......」
彼はもそもそとサンドイッチを咀嚼し、紅茶を啜った。
「公園でも行ってこようか?」
「公園」のフレーズに、亜衣がはしゃぎ始める。食事中に身体を動かし始めた長女を見て、康徳さんの目に少し生気が戻った。
「僕も行こうかな」
「え?」
「身体を動かさないと、頭も動かないし。帰りにアルプラザで、アイス買って帰ろう」
アイスのフレーズにも娘たちは大いにはしゃぐ。アルプラザまで行くと余分な散歩になってしまうけど、今の彼にはそういうものが必要らしい。
「公園はいいけど、アイスは小さいのにしてよ」
そういうと、亜衣は「えー」と抗議の声を上げる。不満げな長女に「マクドナルドのシェイクにするか」と康徳さんが提案すると、亜衣はすぐに「シェイク、シェイク」と繰り返す。
「もー。仕方ないなぁ」
私がそういうと、康徳さんと亜衣は「やったー」とハイタッチした。食べ差しのパンを食べ、しっかりとお昼ご飯と片付けを終えてから外に出る。亜衣とそう約束すると、彼女は行儀良く、しかし少し気忙しくパンを食べ始めた。隣の映美もお姉ちゃんに負けじと自分の選んだパンを食べ進める。
二人の娘を見つめる康徳さんの顔は、ちょっとだけ元気がなさそうに見えた。
一番日当たりが良さそうな椅子に座り、いつになく真剣な表情を浮かべている。結婚する前から考えすぎる人だったけど、長女が生まれてからは家の中で不機嫌な顔を作らないようにしていたけれど、今日は少々不穏な空気を醸していた。
旦那の整った顔立ちに、真剣かつアンニュイな表情の組み合わせは非常に美しいと思うのだけど、まだ幼い子供たちには少々怖く見える気がする。
亜衣と映美と洗面所で手を洗い、さっき買って来たパンをお皿に出していると、顔の緊張を解いてキッチンまで手伝いに来てくれた。
「あなたも食べる?」
「ああ、うん。僕の分もある?」
パンの詰まった袋を見て、彼は電気ポットでお湯を沸かし始めた。「気が利かなくてごめんね」と人数分のカップを出し、娘たちの分には真新しい牛乳を開けて注いでくれた。娘たちは早々に食卓について、「いただきます」と両手を合わせ、自分たちの目の前にあるパンにかじりついた。
「芽衣も先に食べて。コーヒーは僕が入れる。紅茶の方がよかった?」
イエローラベルの箱を掲げる。「じゃあ、紅茶で」と私は椅子に座った。子供達の様子を見ながら、二人も食べているクリームパンに手をつけた。少し待っていると、康徳さんが紅茶を持って来て、隣に座った。
ちょっぴり緩慢な動きでミックスサンドを開け、ぼんやりと口に運ぶ。その視線は窓の外に向けられている。
「まだちょっと肌寒いけど、日差しは暖かかったよ。亜衣は途中で上着脱いじゃった」
「へー。午後も天気良さそうだしな......」
彼はもそもそとサンドイッチを咀嚼し、紅茶を啜った。
「公園でも行ってこようか?」
「公園」のフレーズに、亜衣がはしゃぎ始める。食事中に身体を動かし始めた長女を見て、康徳さんの目に少し生気が戻った。
「僕も行こうかな」
「え?」
「身体を動かさないと、頭も動かないし。帰りにアルプラザで、アイス買って帰ろう」
アイスのフレーズにも娘たちは大いにはしゃぐ。アルプラザまで行くと余分な散歩になってしまうけど、今の彼にはそういうものが必要らしい。
「公園はいいけど、アイスは小さいのにしてよ」
そういうと、亜衣は「えー」と抗議の声を上げる。不満げな長女に「マクドナルドのシェイクにするか」と康徳さんが提案すると、亜衣はすぐに「シェイク、シェイク」と繰り返す。
「もー。仕方ないなぁ」
私がそういうと、康徳さんと亜衣は「やったー」とハイタッチした。食べ差しのパンを食べ、しっかりとお昼ご飯と片付けを終えてから外に出る。亜衣とそう約束すると、彼女は行儀良く、しかし少し気忙しくパンを食べ始めた。隣の映美もお姉ちゃんに負けじと自分の選んだパンを食べ進める。
二人の娘を見つめる康徳さんの顔は、ちょっとだけ元気がなさそうに見えた。
感想 0
あなたにおすすめの小説
専業主婦十年、夫と息子に「何もしてない」と言われたので、自分の名前で稼ぐことにした
「お母さん、何もしてないじゃん」
小学四年生の息子に言われた。翌朝、夫も言った。そっちは家にいるだけだろ、と。
専業主婦十年。渡される生活費は白い封筒の月3万円。家の通帳は見たこともない。
期限切れのファンデーションを塗り、フォロワー48人のアカウントに写真を上げた。「ダメ出しお願いします」。止まらない通知の中に、短い返信が一つ。
――ひとつずつでいいよ。
早朝の新聞配達に、時給1200円の品出し。夜は簿記の参考書を開いた。額面22万円の雇用条件通知書。初めてのPR案件は、2万5千円。
その秋、夫が昼に誰と会っているかを知った。離婚届は12月24日。
一年後、私の会社の月商は500万円、フォロワーは200万人。港区のタワーマンションの鍵は、私の名前で受け取った。
「家にいるだけだろ」と言った人が、その数字を口にする番が来る。
この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
全9話。
届かなかったメール
たった一通の届かなかったメール。
その偶然が生んだ三年間の沈黙と、すれ違った想い。そして再会の日に知る、それぞれの人生。
失われた時間は戻らない。それでも、人は過去にひとつの答えを見つけることがある。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】ツンデレ王子は、約束のステージからその先へ
アイドルグループ、dulcis〈ドゥルキス〉のメンバーとしてデビューしたサクヤ(21)
多忙なスケジュールの中、彼がどうしても譲れなかったのは、子どもの頃に通っていたダンスコンクールへのサプライズ出演だった。
そこには、初恋の人であり、ダンスの楽しさを教えてくれた恩師・才加がいる。
怪我によって夢を諦めた才加。
そんな彼女と交わした約束。
『才加も、ステージに連れて行くよ』
ツンデレで不器用な男が、夢の続きを踊る。
切ない青春ダンスストーリー。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
もてる錯覚? 44歳主婦・好美の冒険
「もてている」という錯覚。その出口で、私は本当の恋を知った。
45歳の誕生日を前に、好美は自らを納得させるように複数の男たちと情事を重ねる。
高いヒールのロングブーツと、短すぎるスカート。それは、乾いた日常と無関心な夫への、ささやかな反逆だった。
主導権を握っているつもりだった。男たちを転がしているはずだった。
――実は、都合のいい女として扱われていることに薄々気づきながらも、彼女はあえてその事実に蓋をし続けてきた。そうしなければ、自分の輪郭を保てなかったから。
けれど、22歳の大学生・優希の真っ直ぐな瞳と、包み込むような「ため口」が、彼女の頑ななプライドと虚飾を溶かしていく。
保身を捨て、一人の女として彼を求めた時、好美が見つけた「本当の居場所」とは――。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。