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伍:横浜港
伍の参:横浜港/報告と評価
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「ご厚情痛み入ります」
その答えに御老も満足気に頷いたのだった。
そのやり取りを見守っていた天龍のオヤジが口を開いた。
「それじゃ今回の首尾を話せ」
「はっ」
俺は今回の面談に関して結果を伝える。
「ご報告いたします」
俺は一区切り加え、言葉を紡いだ。
「結論から言います。交渉は成功。向こうさんの了承を得ることができました」
「ほう?」
御老が感心したような声を上げる。
「面接そのものは手荒かったですが、コイツの頑張りもありうまく切り返すことができました。こちらの思いと本気を分かってもらえました」
「そうか――よくやったな。柳沢、田沼。で? 今後はどうする事になった?」
「はい。手続きとしては、榊原に対してはセブンカウンシルの担当役の引き継ぎを認める――と伝えた上でおびき出し、一気に始末をつける事になりました。先方としても榊原のような種類の人間は願い下げだそうです。その事は今回の交渉担当であった〝ガトリングのエイト〟と言う人物が特に強く申しておりました」
俺の言葉に堀坂の御老も天龍のオヤジも頷いている。
「だろうな。榊原のバカじゃ向こうさんにとっちゃ迷惑だろうぜ」
「えぇ、あそこは利権追求の場じゃありません。最終的な戦争・抗争の勃発を避けるための調整の場です。今回こいつらが交渉してきたサイレントデルタも、そのセブンカウンシルの運営と調整活動を行うことで、利益の主力としています。そこを乱されるのは本意ではないでしょう」
俺はオヤジの言葉に頷いた。
「そのとおりです。それは先方のエイトって旦那も言っておりました」
「よし分かった」
天龍のオヤジが言う。
「それじゃ具体的な手はずについては、柳沢――お前が氷室の指導を受けながら進めろ」
「畏まりました。早速進めさせていただきます。氷室のオジキにもご厄介になります」
俺がそう告げれば、天龍のオヤジが頷いている。俺の背後では氷室のオジキも聞いているだろう。そして、天龍のオヤジが更に言う。
「そうなるとだ――」
天龍のオヤジの視線は俺と隣のカツ――有勝の方へと交互に向いていた。
「お前たちの今回の仕事の出来についてだな」
〝出来〟――すなわち仕事の結果の優劣についてだ。まずは俺の方へと視線が向く。
「永慶」
「はっ」
「よくやった。仕事としてはまだ最終結果前だが、交渉役としては上出来だ。報奨金を出す。最終結果次第では今後の昇格も検討してやろう」
「ありがとうございます」
俺は礼を口にしてから頭を下げる。ステルスヤクザには裏社会としての本当の裏の顔と、表社会としての企業人としての顔がある。それぞれが評価されながらバランス良く昇進していくのがスタンダードだ。裏の顔の評価としては組織内での序列が昇進し、表の顔の評価としては昇給と昇進が影響してくる。俺は今回、オヤジからそれへの確約を得たことになるのだ。
だが、評価されるべき奴は俺だけじゃない。
それは天龍のオヤジもちゃんと分かっていた。
「お前もご苦労だったな」
天龍のオヤジの言葉は有勝へと投げかけられていた。思わぬ声かけに田沼は驚きつつも深々と頭を下げた、
「お褒めいただき、恐れ入ります」
「謙遜すんな。お前の今の身なりを見ればよく分かる。おめぇがどんだけ体を張ったのかもな」
そう問いかけるオヤジたちの視線は有勝の傷だらけの姿へと注がれていた。エイトの粒子ビームの猛攻や、金属製の頑丈なアバターボディを相手にしての大立ち回りはコイツの頑張りがあってこそ成し得たものだ。俺はオヤジたちに打ち明けた。
「交渉相手のガトリングのエイトとのやり取りで囮役として危険な役目を買ってくれたのは間違いなくコイツですから」
「囮役だと?」
「はい」
堀坂の御老が訝しげに、それでいて面白げに問いかける。
「俺がトラップを仕掛ける間、敵の主力であるガトリングのエイトとやり合って時間を稼いだだけでなく、見事に誘導してくれました。前もって打ち合わせしたわけでもないのに、俺の意図を機敏に読んでくれます」
「ほう?」
御老が感心している。有勝はと言えば、照れるでもなく得意になるでもなく、己の分をわきまえたかのように穏やかに控えるのみだ。
天龍のオヤジが問うてくる。
「コイツが居なかったらどうなってた?」
「はい、交渉は失敗してたでしょう。俺が一歩下がって俯瞰で物事を見通して仕掛けを施せたのは、間違いなく前線で体を張ってくれたコイツが居たからです」
「そうか――」
オヤジが静かに微笑みながら頷いている。そしてさらに言葉をこう続けたのだ。
「――それでお前ぇはコイツのことをどうしてぇんだ?」
その答えに御老も満足気に頷いたのだった。
そのやり取りを見守っていた天龍のオヤジが口を開いた。
「それじゃ今回の首尾を話せ」
「はっ」
俺は今回の面談に関して結果を伝える。
「ご報告いたします」
俺は一区切り加え、言葉を紡いだ。
「結論から言います。交渉は成功。向こうさんの了承を得ることができました」
「ほう?」
御老が感心したような声を上げる。
「面接そのものは手荒かったですが、コイツの頑張りもありうまく切り返すことができました。こちらの思いと本気を分かってもらえました」
「そうか――よくやったな。柳沢、田沼。で? 今後はどうする事になった?」
「はい。手続きとしては、榊原に対してはセブンカウンシルの担当役の引き継ぎを認める――と伝えた上でおびき出し、一気に始末をつける事になりました。先方としても榊原のような種類の人間は願い下げだそうです。その事は今回の交渉担当であった〝ガトリングのエイト〟と言う人物が特に強く申しておりました」
俺の言葉に堀坂の御老も天龍のオヤジも頷いている。
「だろうな。榊原のバカじゃ向こうさんにとっちゃ迷惑だろうぜ」
「えぇ、あそこは利権追求の場じゃありません。最終的な戦争・抗争の勃発を避けるための調整の場です。今回こいつらが交渉してきたサイレントデルタも、そのセブンカウンシルの運営と調整活動を行うことで、利益の主力としています。そこを乱されるのは本意ではないでしょう」
俺はオヤジの言葉に頷いた。
「そのとおりです。それは先方のエイトって旦那も言っておりました」
「よし分かった」
天龍のオヤジが言う。
「それじゃ具体的な手はずについては、柳沢――お前が氷室の指導を受けながら進めろ」
「畏まりました。早速進めさせていただきます。氷室のオジキにもご厄介になります」
俺がそう告げれば、天龍のオヤジが頷いている。俺の背後では氷室のオジキも聞いているだろう。そして、天龍のオヤジが更に言う。
「そうなるとだ――」
天龍のオヤジの視線は俺と隣のカツ――有勝の方へと交互に向いていた。
「お前たちの今回の仕事の出来についてだな」
〝出来〟――すなわち仕事の結果の優劣についてだ。まずは俺の方へと視線が向く。
「永慶」
「はっ」
「よくやった。仕事としてはまだ最終結果前だが、交渉役としては上出来だ。報奨金を出す。最終結果次第では今後の昇格も検討してやろう」
「ありがとうございます」
俺は礼を口にしてから頭を下げる。ステルスヤクザには裏社会としての本当の裏の顔と、表社会としての企業人としての顔がある。それぞれが評価されながらバランス良く昇進していくのがスタンダードだ。裏の顔の評価としては組織内での序列が昇進し、表の顔の評価としては昇給と昇進が影響してくる。俺は今回、オヤジからそれへの確約を得たことになるのだ。
だが、評価されるべき奴は俺だけじゃない。
それは天龍のオヤジもちゃんと分かっていた。
「お前もご苦労だったな」
天龍のオヤジの言葉は有勝へと投げかけられていた。思わぬ声かけに田沼は驚きつつも深々と頭を下げた、
「お褒めいただき、恐れ入ります」
「謙遜すんな。お前の今の身なりを見ればよく分かる。おめぇがどんだけ体を張ったのかもな」
そう問いかけるオヤジたちの視線は有勝の傷だらけの姿へと注がれていた。エイトの粒子ビームの猛攻や、金属製の頑丈なアバターボディを相手にしての大立ち回りはコイツの頑張りがあってこそ成し得たものだ。俺はオヤジたちに打ち明けた。
「交渉相手のガトリングのエイトとのやり取りで囮役として危険な役目を買ってくれたのは間違いなくコイツですから」
「囮役だと?」
「はい」
堀坂の御老が訝しげに、それでいて面白げに問いかける。
「俺がトラップを仕掛ける間、敵の主力であるガトリングのエイトとやり合って時間を稼いだだけでなく、見事に誘導してくれました。前もって打ち合わせしたわけでもないのに、俺の意図を機敏に読んでくれます」
「ほう?」
御老が感心している。有勝はと言えば、照れるでもなく得意になるでもなく、己の分をわきまえたかのように穏やかに控えるのみだ。
天龍のオヤジが問うてくる。
「コイツが居なかったらどうなってた?」
「はい、交渉は失敗してたでしょう。俺が一歩下がって俯瞰で物事を見通して仕掛けを施せたのは、間違いなく前線で体を張ってくれたコイツが居たからです」
「そうか――」
オヤジが静かに微笑みながら頷いている。そしてさらに言葉をこう続けたのだ。
「――それでお前ぇはコイツのことをどうしてぇんだ?」
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