20 / 109
第一部 ダンジョンの階層主は、パーティに捨てられた泣き虫魔法使いに翻弄される
19. エレインのいないパーティ③
しおりを挟む
リリスは、中央神殿の礼拝堂で両手を組んで神に祈りを捧げていた。
ウィルダリアの中央神殿は、この街で最も大きくて立派な神殿である。多くの人が参拝に訪れ、各々信じるものに祈りを捧げる。ウィルダリアには、各地から多様な民族が集まるため、唯一神を持たず多神教である。それぞれ自由に神殿での時を過ごしているのだ。
リリスも定期的に中央神殿でパーティの無事を祈っていたのだが、今日の用事はそれだけではなかった。
ダンジョンで見殺しにしたエレインの冥福を祈っているのだ。
リリスもアレク達同様、エレインはパーティのお荷物だとずっと思って来た。実際、アレクの足を引っ張る存在を疎ましく思っていた。
だが、いざエレインを排除してみればどうだ。自らが人の命を見殺しにしたということが、リリスの心に重石のようにのしかかってきた。
あまりにも自分勝手な感情に、リリスは自嘲しつつも、せめて安らかに眠って欲しいと、エレインをダンジョンに置き去りにしたあの日以降毎日祈りを捧げている。
祈り終え、リリスは静かに目を開けた。
(毎日祈っているのに、不安が増していくのはなぜでしょうか。ーーー何か良くないことが起こるような、とても不吉な予感がします)
リリス達のパーティは恐らく5日後には、再びダンジョンに潜り、70階層の階層主に挑戦する。これまで負け知らずであり、アレクをはじめ、ロイドもルナも勝利を疑っていない様子だ。
だが、どうしてもリリスは、いつものように勝てるビジョンが見えないのだった。
◇◇◇
その日の夜。各々やるべきことを終えたアレク達は、行きつけの酒屋で夕食を取っていた。
「ルナはポーションや外套の仕入作業が完了した。褒めてもいい」
「ふふっ、ありがとうございます。助かりました」
得意げなルナの頭をリリスが撫でる。ルナは気持ちよさそうに目を細めている。
「色々買ったから結構お金がかかった」
「そうだな、ロイド!ダンジョンでの稼ぎはどうだった?」
ルナの言葉に、ジョッキを傾けていたアレクがロイドに問いかけた。
「…採ってきたぞ」
ロイドはというと、仏頂面で魔石をテーブルの上に放り投げるようにして転がした。
「おいおいおい、たったの3個かよ!?」
それを見たアレクが文句を垂れるが、それにカチンときたのは勿論ロイドだ。
「あのなぁ!これだけ取るのに俺がどれだけ苦労したか…文句があるなら自分で採りに行けよ!使いっ走りはもうごめんだ!俺は二度と小遣い稼ぎの魔石狩りなんてしない!」
バン!と力強くジョッキをテーブルに置き、その勢いでビールの泡が溢れてジョッキに泡の筋ができた。
「な、なんだよ。そんなに怒ることねぇじゃねーか。魔石は換金して盾の支払いに充ててくれ」
「ああ、そうさせてもらう。俺が採ってきたんだから当たり前だがな」
いつもと違う様子のロイドに、アレクは戸惑いがちに他の2人に視線をやる。ルナとリリスも驚いた顔をしていた。
「ま、まあ、今日は飯を食ったらお開きにするか。俺の剣も今日武器屋に預けて来たんだが、仕上がりに後4日はかかるらしい。剣と盾の準備が整ったらいよいよ70階層攻略だ!それまでは各々好きに過ごして英気を養ってくれ」
「ルナは承知した」
「…ああ」
「分かりましたわ」
少しギクシャクしたまま、アレク達はそれぞれの宿へと帰って行った。
そして、あっという間に5日の時が流れーーー
いよいよ70階層のボスの間の前へとやって来たのだった。
ウィルダリアの中央神殿は、この街で最も大きくて立派な神殿である。多くの人が参拝に訪れ、各々信じるものに祈りを捧げる。ウィルダリアには、各地から多様な民族が集まるため、唯一神を持たず多神教である。それぞれ自由に神殿での時を過ごしているのだ。
リリスも定期的に中央神殿でパーティの無事を祈っていたのだが、今日の用事はそれだけではなかった。
ダンジョンで見殺しにしたエレインの冥福を祈っているのだ。
リリスもアレク達同様、エレインはパーティのお荷物だとずっと思って来た。実際、アレクの足を引っ張る存在を疎ましく思っていた。
だが、いざエレインを排除してみればどうだ。自らが人の命を見殺しにしたということが、リリスの心に重石のようにのしかかってきた。
あまりにも自分勝手な感情に、リリスは自嘲しつつも、せめて安らかに眠って欲しいと、エレインをダンジョンに置き去りにしたあの日以降毎日祈りを捧げている。
祈り終え、リリスは静かに目を開けた。
(毎日祈っているのに、不安が増していくのはなぜでしょうか。ーーー何か良くないことが起こるような、とても不吉な予感がします)
リリス達のパーティは恐らく5日後には、再びダンジョンに潜り、70階層の階層主に挑戦する。これまで負け知らずであり、アレクをはじめ、ロイドもルナも勝利を疑っていない様子だ。
だが、どうしてもリリスは、いつものように勝てるビジョンが見えないのだった。
◇◇◇
その日の夜。各々やるべきことを終えたアレク達は、行きつけの酒屋で夕食を取っていた。
「ルナはポーションや外套の仕入作業が完了した。褒めてもいい」
「ふふっ、ありがとうございます。助かりました」
得意げなルナの頭をリリスが撫でる。ルナは気持ちよさそうに目を細めている。
「色々買ったから結構お金がかかった」
「そうだな、ロイド!ダンジョンでの稼ぎはどうだった?」
ルナの言葉に、ジョッキを傾けていたアレクがロイドに問いかけた。
「…採ってきたぞ」
ロイドはというと、仏頂面で魔石をテーブルの上に放り投げるようにして転がした。
「おいおいおい、たったの3個かよ!?」
それを見たアレクが文句を垂れるが、それにカチンときたのは勿論ロイドだ。
「あのなぁ!これだけ取るのに俺がどれだけ苦労したか…文句があるなら自分で採りに行けよ!使いっ走りはもうごめんだ!俺は二度と小遣い稼ぎの魔石狩りなんてしない!」
バン!と力強くジョッキをテーブルに置き、その勢いでビールの泡が溢れてジョッキに泡の筋ができた。
「な、なんだよ。そんなに怒ることねぇじゃねーか。魔石は換金して盾の支払いに充ててくれ」
「ああ、そうさせてもらう。俺が採ってきたんだから当たり前だがな」
いつもと違う様子のロイドに、アレクは戸惑いがちに他の2人に視線をやる。ルナとリリスも驚いた顔をしていた。
「ま、まあ、今日は飯を食ったらお開きにするか。俺の剣も今日武器屋に預けて来たんだが、仕上がりに後4日はかかるらしい。剣と盾の準備が整ったらいよいよ70階層攻略だ!それまでは各々好きに過ごして英気を養ってくれ」
「ルナは承知した」
「…ああ」
「分かりましたわ」
少しギクシャクしたまま、アレク達はそれぞれの宿へと帰って行った。
そして、あっという間に5日の時が流れーーー
いよいよ70階層のボスの間の前へとやって来たのだった。
0
あなたにおすすめの小説
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした
黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――役立たずの【地図製作者(マッパー)】として所属パーティーから無一文で追放された青年、レイン。死を覚悟した未開の地で、彼のスキルは【絶対領域把握(ワールド・マッピング)】へと覚醒する。
地形、魔物、隠された宝、そのすべてを瞬時に地図化し好きな場所へ転移する。それは世界そのものを掌に収めるに等しいチートスキルだった。
魔力制御が苦手な銀髪のエルフ美少女、誇りを失った獣人の凄腕鍛冶師。才能を活かせずにいた仲間たちと出会った時、レインの地図は彼らの未来を照らし出す最強のコンパスとなる。
これは、役立たずと罵られた一人の青年が最高の仲間と共に自らの居場所を見つけ、やがて伝説へと成り上がっていく冒険譚。
「さて、どこへ行こうか。俺たちの地図は、まだ真っ白だ」
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる