【完結】パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される

水都 ミナト

文字の大きさ
22 / 109
第一部 ダンジョンの階層主は、パーティに捨てられた泣き虫魔法使いに翻弄される

21. 認めたくない現実は

しおりを挟む
「な、なんでお前が…生きていたのか?」

 アレク達は、まるで亡霊を見るかのように刮目してエレインを凝視していた。

「えっと…その、ひ、久しぶり…?」

 エレインが気まずそうに片手を上げると、ホムラが盛大にため息をついた。

「お前マジで…バッッカだなァ。自分を捨てた奴らによくそんなことが言えるな」
「そっ、そんなこと言われても…何を言ったらいいのか…」

 アグニに咥えられながら宙吊り状態でエレインは目を泳がせる。ちなみにアグニは2メートルほどの火竜の姿をしていた。上限と下限があるものの、ある程度のサイズにはなれると言う。その話を聞いたとき、便利だ、とエレインは感嘆した。

「ぺっ」
「ちょ、アグニちゃ…!?どわぁあっ!?」

 おろおろしていると、見かねたアグニにポイッと投げ捨てられてしまい、ホムラの足元にめり込むエレイン。

「ったく、どんくせぇな」

 今度はホムラに襟元を掴まれて、エレインはよろよろと立ち上がる。

「なっ…なんで生きて…」
「あ?当たり前だろ。俺はそう簡単に冒険者を殺したりしねぇよ。こいつは今俺が保護してる」

 瞳を揺らしながら再び尋ねるアレクに、ホムラが答える。その回答にアレクは絶句した。

 アレクがイメージしていた『破壊魔神』は、何もかもを破壊し尽くし、蹂躙し、殺戮するボスであった。だが、実際のホムラはあまりにもその想像とかけ離れていた。化け物並みに強いのは想像を超えていたのだが。

「ま、コイツが捨てられたのが俺の階層で良かったよ。そうじゃなけれりゃ、死んでただろうな。お前たちの企み通りになァ」

 急にゴッとホムラの放った殺気がアレク達に襲い掛かった。熱気を帯びた圧に、身体中からどっと汗が吹き出し、ヒュッヒュッとアレク達の呼吸は浅くなる。

「くっ…これは俺たちパーティの問題だ。お前にとやかく言われる筋合いは、ない…!」

 アレクが苦し紛れに言った言葉は、ホムラに笑い飛ばされてしまう。

「ははっ、散々コイツのことを都合よくコキ遣って、不要になったら始末する?それがダンジョンを共に生き抜いてきた仲間にすることかよ。お前らみたいなクズな冒険者は生まれて初めて見るわ」

 ホムラの口元は笑っているが、目は笑っていなかった。瞳孔が開ききり、黒目が猫のように細められ、まるで獣のようである。

「ほら、立てよ。まだ戦えんだろ?それとも何だ?ああ…調子が出ないんだろう?」
「なっ!?何故そのことが…」

 ホムラの図星を突いた言葉に、アレクは思わず目を見開いた。

「くっくっ、そうだろうなぁ…今までは強さが嵩増しされてたんだもんなァ」
「な、何を言っているんだ…?」

 ホムラの言葉に動揺したのはアレクだけではなかった。アレクが答えを求めるように仲間達を見たが、皆眉を顰めて怪訝な顔をしていた。

「ふん、まあ実感してみないと分からなねぇだろうな。おい、おチビ」
「はっ、はひ!?」

 エレインはハラハラと2人の会話を見守っていたが、急に話を振られてびくりと肩を跳ねさせた。

「お前、アイツらに補助魔法をかけろ」
「え……?」

 予想外の指示に、エレインは目を瞬かせた。アレク達も何を言っているんだとばかりに訝しんでいる。

「いいから、コイツらみたいな自惚れたバカはな、身体で実感しねぇと分からないんだよ」
「じゃ、じゃあ…いきますよ?《強化》!」

 エレインは戸惑いながらも、アレク、ロイド、ルナ、リリスに一通りの能力強化の補助魔法をかけた。

 淡い光が身体を包み、アレク達は自らの身体や手を見ている。少し懐かしい、ホッとするような心地がするのは何故なのか。

「よし、かかったな。ほら、ちょっと打ち込んでみろよ」

 補助魔法が発動したことを確認すると、ホムラは挑発するように人差し指をちょいちょいと動かした。

「アレク…」

 心配そうに眉を下げるリリスから、長剣を受け取ると、アレクは長剣を支えにしてゆっくりと立ち上がった。そして、力の流れを確認するように手を握ったり開いたりする。
 何が何だか分からないが、調

「くっ、情けをかけたこと、後悔させてやる!オラァァァ!」

 アレクはホムラの挑発に乗り、力強く床を蹴るとホムラに切りかかった。

 キィン!キィン!

 アレクの素早い太刀をホムラは片手で持った灼刀で防ぐ。

 先程と違い、アレクの踏みしめる力も、長剣を振り抜くスピードも、太刀の重さも、調が出ている。

「ふっ、やっぱり補助魔法はすげぇな。さっきと段違いじゃねぇか」
「笑っていられるのも今のうちだ。補助魔法だか何だか知らないが、これが俺の本来の力だ!」
「はっ、まだそんな自惚れたことを言うか」

 ホムラはどこか楽しそうに交戦しているが、アレクはいつもの調子が戻り、勝機があると感じていた。チラリとルナに目配せをすると。ルナは頷き、ロイドの盾に隠れて詠唱を始めた。リリスは先ほどからアレクに治癒魔法をかけてくれている。
 皆、身体から湧き上がる力を感じて気力が戻ったようだ。

(いける…!この調子なら隙をつけば勝機はある!)

 アレクが口元に笑みを浮かべると、長剣を振り下ろし、ホムラの灼刀で跳ね返されると同時に後方に大きく跳躍した。そのタイミングで、ルナが闇魔法を放った。

「…《漆黒の鎖ダークチェイン》!!」

 ルナ得意の拘束魔法が発動し、ホムラの足元に魔法陣が浮き上がる。そして数多の黒い鎖が、勢いよくホムラに絡みついた。

「うお?」

 ホムラが手足を動かすも、ギシギシと鎖が絡みついて身動きが取れない。
 好機とばかりに、アレクがホムラに勢いよく切りかかった。

「死ねェェェェェ!!!」

 が、首を狙って勢いよく振り抜かれた長剣は、ホムラの首を跳ねることなく回転しながら上空へ吹き飛んだ。

 ホムラが2本の灼角で、アレクの長剣を弾き飛ばしたのだ。

「甘いな。俺の角がただの飾りだと思っていたのか?」

 ホムラはニヤリと不敵に笑う。そして、ふんっと力を込めると、ルナの鎖を容易く引きちぎった。

「う、嘘…今までこの鎖から逃れたものは居ないのに…」

 ルナは目を見開いて驚愕している。

「さて、そろそろボーナスタイムも終了だ。おチビ!魔法を解除しろ!」
「え?あ、はいっ!」

 ホムラが叫ぶと、壁際で戦いを見守っていたエレインが慌てて杖を掲げる。

「うっ、また身体が重く…!?なんなんだ一体…?」

 エレインが魔法を解除すると、アレクは先程まで感じていた力の源が無くなったような気分になった。
 そんな様子を見ながら、ホムラは呆れたように首を振っている。

「はぁー…だからずっと言ってるじゃねぇか。お前らがいつも自分の力だと過信していたのは、エレインの補助魔法で底上げされた能力だったってこった」
「は?さっきから何を言っている…?」
「今の状態が本来のお前らの力量ってことだよ。全部懇切丁寧に説明しねぇと理解できねーのか?」

 ホムラがマジか…とがくりと肩を落とすが、アレクはそれどころではなかった。
 エレインが補助魔法とやらを発動した時、身体がいつものように軽くしなやかに動いた。が、解除された途端、再び鉛のように鈍くなってしまった。

(は…?コイツが言っていることが本当なら…今までの俺たちの力は…?)

 ようやく行き着いた、認めたくない現実にアレクは絶句した。

「待って…じゃあ、今までエレインは…ダンジョンに居る間、ずっと私たちに補助魔法っていうのをかけ続けていたってことなの…?」

 アレクが飲み込んだ言葉を代弁するように、リリスが震える声で言った。その言葉に、アレク、ロイド、ルナ、そしてエレインがぴくりと反応する。自ずと視線がエレインに集まり、エレインは気まずそうに俯いた。
 その反応は、肯定を意味していた。

「そうらしいぜェ?ま、お前らはそんな話を聞き入れもしなかったし、エレインの力を侮っていたから、増幅された能力を過信しちまったんだな」
「そんな…馬鹿な…」

 散々使えないと揶揄してきたエレインの魔法が、今までのダンジョン攻略を支えていたなんて。
 受け入れ難い現実を突きつけられ、アレクを始め、他の3人も力無くと膝をついたのだった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした

黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――役立たずの【地図製作者(マッパー)】として所属パーティーから無一文で追放された青年、レイン。死を覚悟した未開の地で、彼のスキルは【絶対領域把握(ワールド・マッピング)】へと覚醒する。 地形、魔物、隠された宝、そのすべてを瞬時に地図化し好きな場所へ転移する。それは世界そのものを掌に収めるに等しいチートスキルだった。 魔力制御が苦手な銀髪のエルフ美少女、誇りを失った獣人の凄腕鍛冶師。才能を活かせずにいた仲間たちと出会った時、レインの地図は彼らの未来を照らし出す最強のコンパスとなる。 これは、役立たずと罵られた一人の青年が最高の仲間と共に自らの居場所を見つけ、やがて伝説へと成り上がっていく冒険譚。 「さて、どこへ行こうか。俺たちの地図は、まだ真っ白だ」

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

無自覚チートで無双する気はなかったのに、小石を投げたら山が崩れ、クシャミをしたら魔王が滅びた。俺はただ、平穏に暮らしたいだけなんです!

黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ、平凡な人生を終えたはずのサラリーマン、ユウキ。彼が次に目覚めたのは、剣と魔法の異世界だった。 「あれ?なんか身体が軽いな」 その程度の認識で放った小石が岩を砕き、ただのジャンプが木々を越える。本人は自分の異常さに全く気づかないまま、ゴブリンを避けようとして一撃でなぎ倒し、怪我人を見つけて「血、止まらないかな」と願えば傷が癒える。 これは、自分の持つ規格外の力に一切気づかない男が、善意と天然で周囲の度肝を抜き、勘違いされながら意図せず英雄へと成り上がっていく、無自覚無双ファンタジー!

処理中です...