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第二部 パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される
89-1. 通い合う心①
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その後、「あ、そろそろ夕飯を獲りに行きますよ。今日からはエレインも現場復帰ですからね」と空気を読んだのか読めていないのか、アグニの言葉によりエレインはダンジョンで久々の狩りに奮闘した。それはもう、邪念を払うかの如く奮闘した。
獲物を仕留めて70階層に帰還してからも、アグニと夕飯の支度をし、出来上がったご飯をみんなで食べ、エレインが食器を片づけて、と忙しなく夕飯時の時間は過ぎていった。その間、ホムラは何やら考え込んでいた様子だが、エレインは先ほどの失態が恥ずかしくて声をかけれずにいた。
「おやすみなさい~」
そしてあっという間にアグニがあくびをしながら自分のベッドに入りスヤスヤと寝入ってしまった。
エレインも寝支度をして眠ってしまおうかと考えていると、ずっと部屋の隅で顎に手を当てて考えに耽っていたホムラが立ち上がり、エレインの前に立ち塞がった。
「あ、えっと…ホムラさんも、もうおやすみになりますか…?」
目を泳がせながらエレインが尋ねると、ホムラは静かにエレインの手を取った。
「ちょっと付き合え」
「ひぇ…?」
急に手を握られてしまい、どうにか喉から声を絞り出すも変な返事をしてしまった。ホムラは肯定と受け取ったようで、エレインの手を引いてダンジョン内への転移の魔法陣に乗った。
ブン、と景色が流れたかと思うと、あっという間にどこかの階層に転移した。
「ここは…」
「49階層だ」
49階層は、階層の中心に巨大な瀑布が存在する階層だ。滝の周囲は滝がもたらす豊かな水により鬱蒼とした森が茂っている。
そしてこの階層の空にはダンジョンの外と同じ空が擬似的なものとして映し出されている。
「わあー!綺麗な月!今日は満月みたいですね」
雲一つない快晴、欠けることなくまん丸に満ちた月が天を明るく照らしている。星々は月に主役を譲り、控えめながらも美しく輝いている。
ホムラとエレインがやって来たのは瀑布をも見下ろす高い崖の上。49階層全体が望め、景色が素晴らしい。崖の上にはそれなりの広さがあるが、一歩足を踏み間違えれば崖下へ真っ逆さまという危険な場所でもある。
エレインははしゃぎすぎないように気をつけながらも、やはり少しの恐怖心があるため、空いた手でホムラの着物の裾を遠慮がちに掴んだ。
それに気づいたホムラが小さく笑い、握ったままだった手に込める力を強めた。
エレインの心臓は飛び跳ね、弾かれたようにホムラを仰ぎ見る。月光に照らされたホムラの表情はとても柔らかくて優しい。緋色の瞳に月が反射して見える。
「お前に三つ詫びなきゃならねぇことがある」
「…なんでしょう?」
ホムラはエレインを真っ直ぐに見つめたまま、話し始めた。
「まずは、あの日75階層でお前を守ると誓ったのに、ハイエルフの魂からお前を守ることができなかった。本当にすまなかった」
「いえ、あれは仕方がないかと…ドリューさんでさえ初めて見るものだったらしいですし…」
エレインからすれば、あの実体のない黒い靄から逃げる術はなかったように思える。結果的にホムラをはじめとする仲間たちの奮闘により、危機を脱することができた。謝られることではないし、むしろ感謝の気持ちしか抱いていない。
「エレイン、お前あの日の会話は全て聞いていたって言ったよな」
「あ…は、はい」
あの言葉のことかとエレインは期待半分、不安半分でホムラの言葉を待つ。ドキドキと胸の鼓動が忙しない。
「…悪りィ、正直に話すと何を口走ったか覚えてねェんだわ。これが二つ目」
「あ…そう、ですか」
エレインはホムラの言葉を受け、しょんぼりと肩を落とした。これで『惚れた女』発言の真意が分からなくなってしまった。淡い期待をしていただけに、少々落ち込んでしまう。
「それで、その…三つ目は…?」
おずおずとエレインがホムラに問うと、ホムラは僅かに瞳を揺らし、躊躇いがちに口を開いた。
「…72階層でのこと、覚えてるか?」
「72階層…あ、氷雪の階層ですね。私が川に引き摺り込まれた…」
「あの時、溺れたお前に人工呼吸をした」
「人工…呼吸……人工呼吸!?」
エレインは思わず叫ぶような声をあげてしまい、慌てて片手で口を覆う。
「黙っていて悪かった。蘇生措置だしあえて言うことでもねぇかと思ってな…だが、お前は…その、ウォンの口吸いも接吻に含むと考えているみてぇだし」
「え、ってことは、私のファーストキスの相手はホムラさん?」
「あーーー…お前の基準で言うとそうなるわな」
人工呼吸、それをファーストキスと言っていいのか甚だ疑問なホムラであるが、面と向かってキスに換算されるとどうも居心地が悪い。ましてや仮死状態の相手に一方的にした行為である。
だが、エレインはじわじわと恥ずかしさと嬉しさが込み上げていた。
(まさか、ホムラさんがファーストキスの相手だなんて…!嬉しい、けど覚えてないのが惜しすぎる…)
あわあわと一人感情の起伏が激しいエレインを見て、ホムラはフッと笑みを漏らした。
「これでお前に詫びなきゃならねぇことは全部だ。こっからはまた別の話だ。聞いてくれるか?」
「へ?はい、もちろん」
エレインは未だに頭の中が騒がしかったが、しっかり聞かねばと、居住まいを正してホムラを見上げた。ホムラは相変わらず優しい目でエレインを見つめている。
獲物を仕留めて70階層に帰還してからも、アグニと夕飯の支度をし、出来上がったご飯をみんなで食べ、エレインが食器を片づけて、と忙しなく夕飯時の時間は過ぎていった。その間、ホムラは何やら考え込んでいた様子だが、エレインは先ほどの失態が恥ずかしくて声をかけれずにいた。
「おやすみなさい~」
そしてあっという間にアグニがあくびをしながら自分のベッドに入りスヤスヤと寝入ってしまった。
エレインも寝支度をして眠ってしまおうかと考えていると、ずっと部屋の隅で顎に手を当てて考えに耽っていたホムラが立ち上がり、エレインの前に立ち塞がった。
「あ、えっと…ホムラさんも、もうおやすみになりますか…?」
目を泳がせながらエレインが尋ねると、ホムラは静かにエレインの手を取った。
「ちょっと付き合え」
「ひぇ…?」
急に手を握られてしまい、どうにか喉から声を絞り出すも変な返事をしてしまった。ホムラは肯定と受け取ったようで、エレインの手を引いてダンジョン内への転移の魔法陣に乗った。
ブン、と景色が流れたかと思うと、あっという間にどこかの階層に転移した。
「ここは…」
「49階層だ」
49階層は、階層の中心に巨大な瀑布が存在する階層だ。滝の周囲は滝がもたらす豊かな水により鬱蒼とした森が茂っている。
そしてこの階層の空にはダンジョンの外と同じ空が擬似的なものとして映し出されている。
「わあー!綺麗な月!今日は満月みたいですね」
雲一つない快晴、欠けることなくまん丸に満ちた月が天を明るく照らしている。星々は月に主役を譲り、控えめながらも美しく輝いている。
ホムラとエレインがやって来たのは瀑布をも見下ろす高い崖の上。49階層全体が望め、景色が素晴らしい。崖の上にはそれなりの広さがあるが、一歩足を踏み間違えれば崖下へ真っ逆さまという危険な場所でもある。
エレインははしゃぎすぎないように気をつけながらも、やはり少しの恐怖心があるため、空いた手でホムラの着物の裾を遠慮がちに掴んだ。
それに気づいたホムラが小さく笑い、握ったままだった手に込める力を強めた。
エレインの心臓は飛び跳ね、弾かれたようにホムラを仰ぎ見る。月光に照らされたホムラの表情はとても柔らかくて優しい。緋色の瞳に月が反射して見える。
「お前に三つ詫びなきゃならねぇことがある」
「…なんでしょう?」
ホムラはエレインを真っ直ぐに見つめたまま、話し始めた。
「まずは、あの日75階層でお前を守ると誓ったのに、ハイエルフの魂からお前を守ることができなかった。本当にすまなかった」
「いえ、あれは仕方がないかと…ドリューさんでさえ初めて見るものだったらしいですし…」
エレインからすれば、あの実体のない黒い靄から逃げる術はなかったように思える。結果的にホムラをはじめとする仲間たちの奮闘により、危機を脱することができた。謝られることではないし、むしろ感謝の気持ちしか抱いていない。
「エレイン、お前あの日の会話は全て聞いていたって言ったよな」
「あ…は、はい」
あの言葉のことかとエレインは期待半分、不安半分でホムラの言葉を待つ。ドキドキと胸の鼓動が忙しない。
「…悪りィ、正直に話すと何を口走ったか覚えてねェんだわ。これが二つ目」
「あ…そう、ですか」
エレインはホムラの言葉を受け、しょんぼりと肩を落とした。これで『惚れた女』発言の真意が分からなくなってしまった。淡い期待をしていただけに、少々落ち込んでしまう。
「それで、その…三つ目は…?」
おずおずとエレインがホムラに問うと、ホムラは僅かに瞳を揺らし、躊躇いがちに口を開いた。
「…72階層でのこと、覚えてるか?」
「72階層…あ、氷雪の階層ですね。私が川に引き摺り込まれた…」
「あの時、溺れたお前に人工呼吸をした」
「人工…呼吸……人工呼吸!?」
エレインは思わず叫ぶような声をあげてしまい、慌てて片手で口を覆う。
「黙っていて悪かった。蘇生措置だしあえて言うことでもねぇかと思ってな…だが、お前は…その、ウォンの口吸いも接吻に含むと考えているみてぇだし」
「え、ってことは、私のファーストキスの相手はホムラさん?」
「あーーー…お前の基準で言うとそうなるわな」
人工呼吸、それをファーストキスと言っていいのか甚だ疑問なホムラであるが、面と向かってキスに換算されるとどうも居心地が悪い。ましてや仮死状態の相手に一方的にした行為である。
だが、エレインはじわじわと恥ずかしさと嬉しさが込み上げていた。
(まさか、ホムラさんがファーストキスの相手だなんて…!嬉しい、けど覚えてないのが惜しすぎる…)
あわあわと一人感情の起伏が激しいエレインを見て、ホムラはフッと笑みを漏らした。
「これでお前に詫びなきゃならねぇことは全部だ。こっからはまた別の話だ。聞いてくれるか?」
「へ?はい、もちろん」
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