94 / 109
第二部 パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される
89-2. 通い合う心②
しおりを挟む
「お前が初めて70階層に来た日。俺は面白そうな奴だと、多少は暇潰しになるかと思って気まぐれでお前を拾った。だが、お前の過去を知り、懸命に自分を変えようと努力する姿を見ているうちに、いつの間にかお前を認めて受け入れるようになっていった。ちっちぇえし危なっかしいし、しっかり面倒見てやらねぇとなって思ってた。だが、お前はどんどん強くなって、信頼できる仲間も増やしていって、すっかり頼もしくなったな。始めは気まぐれだったはずが、知らねぇうちに俺にとって欠かせない存在になってた」
「ほ、ホムラさん…」
感動のあまりエレインの目に涙が滲む。他の誰でもないホムラに認められることがどれほど嬉しいことか、目の前のこの男は分かっているのだろうか。
ホムラは小さく笑うと、月光に輝く水滴を親指で拭った。そのまま身をかがめ、エレインの目の高さまで顔を近づけた。
「好きだ。一人の女としてお前を大事に想っている。エレイン、お前のことは一生俺が守り抜く」
「ホムラさん…私も、私もっ…ホムラさんのことが、好きです。でも…」
「でも…?」
泣き笑いのような顔でエレインが懸命に応える。
だが、エレインの気持ちを聞いてホッと心が満たされたかと思ったそばから、すぐに不穏な気配を醸し出され、ホムラは眉間に皺を寄せてしまう。
「でも…私にもホムラさんを守らせてください。ホムラさんの隣で戦えるように、これからも修行してもっともっと強くなりますから」
そう言って柔らかく微笑むエレイン。一瞬、ホムラは虚をつかれたように目を見開いたが、おかしそうに喉を鳴らした。
「…くっ、守られるだけの女じゃねぇってか。悪い、少し見くびってたな。惚れ直したわ」
「えへへ…」
しばらく、二人は気持ちが通った嬉しさを噛み締めながら、穏やかな空気に包まれていた。目が合っては照れ笑いをし、再び目を合わせる。コツンと額を合わせてはどちらからともなく笑みを漏らす。
徐に、ホムラがエレインの頬に手を添えた。びくりとエレインの肩が震える。
「目、閉じろよ」
「めめめめ目!?」
「ククッ、テンパり過ぎだろうが。ファーストキスとやらの上書きだ。ロケーションがいいロマンチックな…だったか?俺なりに考えてこの場所に連れて来たんだが…嫌だったら突き飛ばすなりして抵抗しろ。しねェなら同意したとみなすぞ」
「あわわわ…そ、そんな突き飛ばすなんて…あり得ないです…」
「あァ?」
「ホムラさんを拒絶するなんてこと、あり得ないです」
顔を真っ赤にしつつもしっかりとした声でエレインがそう言うので、ホムラの瞳が激しく揺れた。
「っ!…あー、もう無理だわ。今更嫌だっつってもやめねェからな」
ホムラはエレインの腰を引き寄せ、ぐっと顎を掴んで上向かせた。エレインの揺れる瞳は潤んでいるが、その瞳に映るホムラの目もまた熱を帯びていた。
「ホムラさ…」
言い終わる前に、そっと優しく唇同士が触れ合った。
エレインは慌ててぎゅうっと目を閉じた。息も心臓も止まるかと思った。恥ずかしくて嬉しくて、足が宙に浮いてふわふわ漂っているような。天地がひっくり返ったような感覚だ。今自分はきちんと地に足をつけて立てているのだろうか。
やがてそっと離れた熱を寂しいと感じていることに気付き、また頬に熱が集まる。だが、そう思っていたのはホムラも同じだったようで。
「…悪ぃ、もう一回」
「え?んぅ」
今度は優しく触れるものではなく、唇を覆いつくすような口づけで、先ほどよりもホムラの熱を感じる。啄まれるように、何度も何度も離れては角度を変えて唇が重なる。唇を食べられているように錯覚してしまう。エレインは倒れてしまわないように必死でホムラの着物にしがみつくことしかできなかった。
ようやく解放された時には、エレインはくたりとホムラにもたれかかってしまった。ホムラはそんなエレインを力強く抱きしめてくれる。エレインはそのまま真っ赤に染まった顔を隠すように、ホムラの厚い胸板に額を擦り寄せた。それに気づいたホムラが、エレインの後頭部あたりを優しく撫でる。
「我慢が効かなかったわ。ま、謝る気もねぇけどな」
「うぅ…もう少し手加減してください…」
「あー……それは約束できねェな」
「えぇっ!?」
「ずっと欲しかったもんがやっと手に入ったんだ。お前は違うのかよ?」
「っ!!?ず、ずるいです…」
なんともないやり取りをして、二人で笑い合う。それだけで幸せで心が満たされる思いがした。
ようやくエレインとホムラの心が通い合い、結ばれたのであった。
◇◇◇
ホムラとエレインを照らす満月は、同じく地上も明るく照らしていた。
その眩い光から隠れるように、暗い路地裏では、フードを目深に被った男ーーーシンが聳え立つダンジョンを睨みつけていた。
(おかしい。あれから一週間以上経つが、ダンジョンを出入りする冒険者やギルドの人間があまりにもいつも通り過ぎる。憎しみに満ちたハイエルフの魂を解き放ったのだ、相応の混乱がダンジョンを襲うと考えていたが期待外れだったか?それに、ハイエルフの魂に呑まれたエレインはどうなった?)
「…考えていても仕方ない。確かめてみるか」
しばしの思案の後、そう呟いたシンは、月光を避けるようにしてさらに深い闇の中へと消えて行った
「ほ、ホムラさん…」
感動のあまりエレインの目に涙が滲む。他の誰でもないホムラに認められることがどれほど嬉しいことか、目の前のこの男は分かっているのだろうか。
ホムラは小さく笑うと、月光に輝く水滴を親指で拭った。そのまま身をかがめ、エレインの目の高さまで顔を近づけた。
「好きだ。一人の女としてお前を大事に想っている。エレイン、お前のことは一生俺が守り抜く」
「ホムラさん…私も、私もっ…ホムラさんのことが、好きです。でも…」
「でも…?」
泣き笑いのような顔でエレインが懸命に応える。
だが、エレインの気持ちを聞いてホッと心が満たされたかと思ったそばから、すぐに不穏な気配を醸し出され、ホムラは眉間に皺を寄せてしまう。
「でも…私にもホムラさんを守らせてください。ホムラさんの隣で戦えるように、これからも修行してもっともっと強くなりますから」
そう言って柔らかく微笑むエレイン。一瞬、ホムラは虚をつかれたように目を見開いたが、おかしそうに喉を鳴らした。
「…くっ、守られるだけの女じゃねぇってか。悪い、少し見くびってたな。惚れ直したわ」
「えへへ…」
しばらく、二人は気持ちが通った嬉しさを噛み締めながら、穏やかな空気に包まれていた。目が合っては照れ笑いをし、再び目を合わせる。コツンと額を合わせてはどちらからともなく笑みを漏らす。
徐に、ホムラがエレインの頬に手を添えた。びくりとエレインの肩が震える。
「目、閉じろよ」
「めめめめ目!?」
「ククッ、テンパり過ぎだろうが。ファーストキスとやらの上書きだ。ロケーションがいいロマンチックな…だったか?俺なりに考えてこの場所に連れて来たんだが…嫌だったら突き飛ばすなりして抵抗しろ。しねェなら同意したとみなすぞ」
「あわわわ…そ、そんな突き飛ばすなんて…あり得ないです…」
「あァ?」
「ホムラさんを拒絶するなんてこと、あり得ないです」
顔を真っ赤にしつつもしっかりとした声でエレインがそう言うので、ホムラの瞳が激しく揺れた。
「っ!…あー、もう無理だわ。今更嫌だっつってもやめねェからな」
ホムラはエレインの腰を引き寄せ、ぐっと顎を掴んで上向かせた。エレインの揺れる瞳は潤んでいるが、その瞳に映るホムラの目もまた熱を帯びていた。
「ホムラさ…」
言い終わる前に、そっと優しく唇同士が触れ合った。
エレインは慌ててぎゅうっと目を閉じた。息も心臓も止まるかと思った。恥ずかしくて嬉しくて、足が宙に浮いてふわふわ漂っているような。天地がひっくり返ったような感覚だ。今自分はきちんと地に足をつけて立てているのだろうか。
やがてそっと離れた熱を寂しいと感じていることに気付き、また頬に熱が集まる。だが、そう思っていたのはホムラも同じだったようで。
「…悪ぃ、もう一回」
「え?んぅ」
今度は優しく触れるものではなく、唇を覆いつくすような口づけで、先ほどよりもホムラの熱を感じる。啄まれるように、何度も何度も離れては角度を変えて唇が重なる。唇を食べられているように錯覚してしまう。エレインは倒れてしまわないように必死でホムラの着物にしがみつくことしかできなかった。
ようやく解放された時には、エレインはくたりとホムラにもたれかかってしまった。ホムラはそんなエレインを力強く抱きしめてくれる。エレインはそのまま真っ赤に染まった顔を隠すように、ホムラの厚い胸板に額を擦り寄せた。それに気づいたホムラが、エレインの後頭部あたりを優しく撫でる。
「我慢が効かなかったわ。ま、謝る気もねぇけどな」
「うぅ…もう少し手加減してください…」
「あー……それは約束できねェな」
「えぇっ!?」
「ずっと欲しかったもんがやっと手に入ったんだ。お前は違うのかよ?」
「っ!!?ず、ずるいです…」
なんともないやり取りをして、二人で笑い合う。それだけで幸せで心が満たされる思いがした。
ようやくエレインとホムラの心が通い合い、結ばれたのであった。
◇◇◇
ホムラとエレインを照らす満月は、同じく地上も明るく照らしていた。
その眩い光から隠れるように、暗い路地裏では、フードを目深に被った男ーーーシンが聳え立つダンジョンを睨みつけていた。
(おかしい。あれから一週間以上経つが、ダンジョンを出入りする冒険者やギルドの人間があまりにもいつも通り過ぎる。憎しみに満ちたハイエルフの魂を解き放ったのだ、相応の混乱がダンジョンを襲うと考えていたが期待外れだったか?それに、ハイエルフの魂に呑まれたエレインはどうなった?)
「…考えていても仕方ない。確かめてみるか」
しばしの思案の後、そう呟いたシンは、月光を避けるようにしてさらに深い闇の中へと消えて行った
0
あなたにおすすめの小説
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした
黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――役立たずの【地図製作者(マッパー)】として所属パーティーから無一文で追放された青年、レイン。死を覚悟した未開の地で、彼のスキルは【絶対領域把握(ワールド・マッピング)】へと覚醒する。
地形、魔物、隠された宝、そのすべてを瞬時に地図化し好きな場所へ転移する。それは世界そのものを掌に収めるに等しいチートスキルだった。
魔力制御が苦手な銀髪のエルフ美少女、誇りを失った獣人の凄腕鍛冶師。才能を活かせずにいた仲間たちと出会った時、レインの地図は彼らの未来を照らし出す最強のコンパスとなる。
これは、役立たずと罵られた一人の青年が最高の仲間と共に自らの居場所を見つけ、やがて伝説へと成り上がっていく冒険譚。
「さて、どこへ行こうか。俺たちの地図は、まだ真っ白だ」
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる