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第七話 変わりゆく日々 3
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その日の夜、就寝準備を終えたルイ様は、ベッドに入らずに「少し待っていてくれ」と言い残して足速に部屋を出て行ってしまった。
こんなことは初めてなので戸惑いつつも、言いつけ通りに部屋でソワソワと帰りを待っていると、程なくしてルイ様が戻ってきた。手には小さな木箱を持っている。
「アリエッタ、少し座ってくれないか」
「はい」
ルイ様に促されるがまま、室内のソファに腰を下ろす。すると、あろうことかルイ様は私の足元に片膝をついたではないか。えっ!
「る、ルイ様⁉︎」
狼狽える私に微笑みかけ(尊い)、ルイ様はカパッと木箱の蓋を開けた。そこには銀の指輪が上品な光を放ちながら収まっていた。
「これをアリエッタに贈らせて欲しい」
「えっ、え……」
ルイ様は指輪を取り出すと、私の左手を取って流れる所作で指輪を嵌めてくれた。
僅かに震える手を上げて、指輪を光に翳す。光を反射して、薬指に嵌められた指輪がキラリと光った。
「この指輪の内側には、余の魔力を込めた魔石が仕込まれている。きっと、余の力がアリエッタの危機を救うだろう」
「……ありがとうございます」
フェリックスの飛行訓練の後、ルイ様は用があると言ってウェインさんとカロン爺を訪ねに行った。まさか、こんな素敵な贈り物を用意してくれていたなんて。喜びと感動で、ジンと胸が熱くなる。
その一方で、少しむず痒い気持ちも芽生えてしまう。
人間界で、婚姻を結んだ男女は結婚指輪を交換する。そしてそれぞれ左手の薬指に指輪を嵌めるのだけれど……人間界の慣習をどこまで知っているのだろうか。
チラリとルイ様の表情を読もうと盗み見るも、すぐにその視線に気づいたルイ様に笑みを返されてしまう。グハッ。相変わらずのキラースマイル……!
そっと指輪に触れると、僅かに熱を感じる気がする。きっと、ルイ様の魔力が巡っているのだろう。なんだかいつでもルイ様と一緒にいるようで、ドキドキしてしまう。
「これで、いつも一緒だぞ」
「……ぐう」
言葉で明言されてしまった。
嬉しそうに無邪気に笑うルイ様には、それ以上の思惑はなさそうね。変に勘繰らずに素直に受け取っておこう。
「本当にありがとうございます。嬉しいです」
「いいのだ。余が贈りたかったのだからな。受け取ってくれてありがとう」
そういえば、ルイ様から贈り物をいただくのは初めてかもしれない。
以前、地下で見つけたルイ様のぬいぐるみは、私の部屋のガラスケースに大事に保管されている。みんなの承諾を得て預かることになったけれど、あくまでも預かっているだけでいただいたわけではない。
指輪を抱きしめるように胸の前で左手を握り締める。
「大事にしますね」
「ああ、いつもつけていてくれると嬉しい」
特別な贈り物をいただき、どうしても気持ちは高揚してしまう。浮ついた心を隠すように、ルイ様に就寝を促して、少し渋られつつも無事に入眠を見届けた。
その後の私は、側近の面々がルイ様の寝顔参拝に訪れるたびに目ざとく指輪に気付かれてしまい、居た堪れない気持ちになったのだった。なんでバレるの? と思ったけれど、「ルイ様の魔力を感じるんだものお。ふふっ、ルイ様ったら独占欲が強いんだからあ」というミーシャお姉様の言葉で疑問は解決した。恥ずかしいことこの上ない。
こんなことは初めてなので戸惑いつつも、言いつけ通りに部屋でソワソワと帰りを待っていると、程なくしてルイ様が戻ってきた。手には小さな木箱を持っている。
「アリエッタ、少し座ってくれないか」
「はい」
ルイ様に促されるがまま、室内のソファに腰を下ろす。すると、あろうことかルイ様は私の足元に片膝をついたではないか。えっ!
「る、ルイ様⁉︎」
狼狽える私に微笑みかけ(尊い)、ルイ様はカパッと木箱の蓋を開けた。そこには銀の指輪が上品な光を放ちながら収まっていた。
「これをアリエッタに贈らせて欲しい」
「えっ、え……」
ルイ様は指輪を取り出すと、私の左手を取って流れる所作で指輪を嵌めてくれた。
僅かに震える手を上げて、指輪を光に翳す。光を反射して、薬指に嵌められた指輪がキラリと光った。
「この指輪の内側には、余の魔力を込めた魔石が仕込まれている。きっと、余の力がアリエッタの危機を救うだろう」
「……ありがとうございます」
フェリックスの飛行訓練の後、ルイ様は用があると言ってウェインさんとカロン爺を訪ねに行った。まさか、こんな素敵な贈り物を用意してくれていたなんて。喜びと感動で、ジンと胸が熱くなる。
その一方で、少しむず痒い気持ちも芽生えてしまう。
人間界で、婚姻を結んだ男女は結婚指輪を交換する。そしてそれぞれ左手の薬指に指輪を嵌めるのだけれど……人間界の慣習をどこまで知っているのだろうか。
チラリとルイ様の表情を読もうと盗み見るも、すぐにその視線に気づいたルイ様に笑みを返されてしまう。グハッ。相変わらずのキラースマイル……!
そっと指輪に触れると、僅かに熱を感じる気がする。きっと、ルイ様の魔力が巡っているのだろう。なんだかいつでもルイ様と一緒にいるようで、ドキドキしてしまう。
「これで、いつも一緒だぞ」
「……ぐう」
言葉で明言されてしまった。
嬉しそうに無邪気に笑うルイ様には、それ以上の思惑はなさそうね。変に勘繰らずに素直に受け取っておこう。
「本当にありがとうございます。嬉しいです」
「いいのだ。余が贈りたかったのだからな。受け取ってくれてありがとう」
そういえば、ルイ様から贈り物をいただくのは初めてかもしれない。
以前、地下で見つけたルイ様のぬいぐるみは、私の部屋のガラスケースに大事に保管されている。みんなの承諾を得て預かることになったけれど、あくまでも預かっているだけでいただいたわけではない。
指輪を抱きしめるように胸の前で左手を握り締める。
「大事にしますね」
「ああ、いつもつけていてくれると嬉しい」
特別な贈り物をいただき、どうしても気持ちは高揚してしまう。浮ついた心を隠すように、ルイ様に就寝を促して、少し渋られつつも無事に入眠を見届けた。
その後の私は、側近の面々がルイ様の寝顔参拝に訪れるたびに目ざとく指輪に気付かれてしまい、居た堪れない気持ちになったのだった。なんでバレるの? と思ったけれど、「ルイ様の魔力を感じるんだものお。ふふっ、ルイ様ったら独占欲が強いんだからあ」というミーシャお姉様の言葉で疑問は解決した。恥ずかしいことこの上ない。
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