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第28話 シェリルとドレス選び
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遂に今日は、獣王国立学園の運動祭。
残念ながらマリアンヌは子供たちの親でも、獣王国の王族でもないので王宮で留守番だ。
一緒に練習に励んできた子供たちの勇姿が見れないことはとても残念だが、しょぼくれるマリアンヌを憐れんだラルフが、「お前の分まで俺があいつらの頑張りを目に焼き付けてくるさ」と項垂れた頭を軽く撫でて言ってくれた。
妹扱いされてないかしら?と少し気にはなったが、マリアンヌは大きく頷いてくれぐれもみんなによろしくとラルフを見送った。
運動祭の来賓として参加するのは、王子のラルフと国王のレナードの二人だ。王妃は未だ外遊中であり、姫のシェリルは病弱なので否応なしに留守番だった。
というわけで、マリアンヌとシェリルは暇を持て余しており、せっかくの機会だと以前街で訪問したドレス店の店員を呼びつけてドレス選びをすることとなった。もちろん店には事前に申し入れをして快諾してもらっている。
「ふわぁ…マリンちゃん綺麗~」
「ふふ、ありがとう。少し可愛らし過ぎないかしら?」
「そんなことないよー!じゃあこっちは?こっちも着て見せて!」
ドレス店の店員がめいいっぱいドレスを持ち込んでくれたので、マリアンヌの部屋は色鮮やかなドレスで溢れていた。
ふわりとしたシルエットのドレス、スラリとしたマーメイドドレス、レースをふんだんに使用したものに、宝石を縫い込んだものまで実に様々である。
女の子の憧れが詰まったドレスを前に、目を輝かせたのはマリアンヌだけではなかった。シェリルはそれはそれは大喜びで、耳をパタパタさせながら、先程から着せ替え人形のごとくマリアンヌに何着も試着させていた。
マリアンヌは陸上でドレスを着ることに慣れていないので、少しくたびれてしまったが、可愛い可愛いシェリルの頼みとあれば、時間が許す限りドレスを着倒すつもりである。
「あっ!マリンちゃん!これ!これこれ!絶対これ!」
「え…?これは…」
シェリルが指差したのは、シルバーの上品なドレスだった。
首から胸元にかけては透け感のある薄手の生地で覆われており、胸元にはビーズで美しい模様が刺繍されている。上半身は身体のラインを引き立たせるようにぴっちりとしつらえられていて、金の糸が織り込まれたドレスはうっとりするほどに美麗である。
腰の辺りから緩やかに折り返されて地面に広がるような裾はレース生地でこれまた透け感があるが、嫌らしさはない。全てがバランス良くまとまっている上物だと感じられた。
それに、なんだかこのドレスは…ーーー
「ラルフお兄様みたいだと思わない?」
「そ、そうね…」
シェリルの言う通り、色合いといい厳かな雰囲気といい、まるでラルフを表すようなドレスである。
「早く着て見せて!きっと似合うわ!」
シェリルのキラキラ輝く瞳にたじろぎながらも、マリアンヌはにこやかに佇むテディの手を借りてドレスに袖を通した。
(…驚くほどピッタリね。肌触りもいいし、締め付けも思ったほど苦しくないわ。それに動きやすいし、今まで試着した中だとダントツね)
「ふわぁぁあ…素敵…素敵すぎる…」
「マリアンヌ様お美しいです…」
着心地を確かめるようにヒラリと身を翻すと、シェリルだけでなくテディまでもぽーっと頬を染めてうっとりしている。
「ぜっったいに買いましょう!マリンちゃんが買わないなら私が買うわ!!!」
「え、ええ…私も気に入ったし、いただくとするわ」
「やったーーー!!」
ぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねるシェリルに苦笑しつつ、マリアンヌは店員に買い取るドレスの指示をした。海王国を出る時に持ってきたお金は既に換金してある。それなりには蓄えていたので、ドレスを買うには十分足りた。
結局マリアンヌは、シルバーのドレス以外に、淡い桃色のドレスと、深い海底のような紺色のドレスを購入した。
これまで必要な際は、王宮のクローゼットからドレスを借りていたが、これで自分のドレスを身に纏うことが叶う。
とても満足がいく買い物ができたのだが…
(このシルバーのドレスは着どころが難しいわ…)
ましてやラルフの前で着ると含みを持たせてしまうに違いない。
ことあるごとに結婚しましょうと嘆願してきたが、いざ彼を想起させるドレスを身に纏うとなると腰が引けるマリアンヌであった。
残念ながらマリアンヌは子供たちの親でも、獣王国の王族でもないので王宮で留守番だ。
一緒に練習に励んできた子供たちの勇姿が見れないことはとても残念だが、しょぼくれるマリアンヌを憐れんだラルフが、「お前の分まで俺があいつらの頑張りを目に焼き付けてくるさ」と項垂れた頭を軽く撫でて言ってくれた。
妹扱いされてないかしら?と少し気にはなったが、マリアンヌは大きく頷いてくれぐれもみんなによろしくとラルフを見送った。
運動祭の来賓として参加するのは、王子のラルフと国王のレナードの二人だ。王妃は未だ外遊中であり、姫のシェリルは病弱なので否応なしに留守番だった。
というわけで、マリアンヌとシェリルは暇を持て余しており、せっかくの機会だと以前街で訪問したドレス店の店員を呼びつけてドレス選びをすることとなった。もちろん店には事前に申し入れをして快諾してもらっている。
「ふわぁ…マリンちゃん綺麗~」
「ふふ、ありがとう。少し可愛らし過ぎないかしら?」
「そんなことないよー!じゃあこっちは?こっちも着て見せて!」
ドレス店の店員がめいいっぱいドレスを持ち込んでくれたので、マリアンヌの部屋は色鮮やかなドレスで溢れていた。
ふわりとしたシルエットのドレス、スラリとしたマーメイドドレス、レースをふんだんに使用したものに、宝石を縫い込んだものまで実に様々である。
女の子の憧れが詰まったドレスを前に、目を輝かせたのはマリアンヌだけではなかった。シェリルはそれはそれは大喜びで、耳をパタパタさせながら、先程から着せ替え人形のごとくマリアンヌに何着も試着させていた。
マリアンヌは陸上でドレスを着ることに慣れていないので、少しくたびれてしまったが、可愛い可愛いシェリルの頼みとあれば、時間が許す限りドレスを着倒すつもりである。
「あっ!マリンちゃん!これ!これこれ!絶対これ!」
「え…?これは…」
シェリルが指差したのは、シルバーの上品なドレスだった。
首から胸元にかけては透け感のある薄手の生地で覆われており、胸元にはビーズで美しい模様が刺繍されている。上半身は身体のラインを引き立たせるようにぴっちりとしつらえられていて、金の糸が織り込まれたドレスはうっとりするほどに美麗である。
腰の辺りから緩やかに折り返されて地面に広がるような裾はレース生地でこれまた透け感があるが、嫌らしさはない。全てがバランス良くまとまっている上物だと感じられた。
それに、なんだかこのドレスは…ーーー
「ラルフお兄様みたいだと思わない?」
「そ、そうね…」
シェリルの言う通り、色合いといい厳かな雰囲気といい、まるでラルフを表すようなドレスである。
「早く着て見せて!きっと似合うわ!」
シェリルのキラキラ輝く瞳にたじろぎながらも、マリアンヌはにこやかに佇むテディの手を借りてドレスに袖を通した。
(…驚くほどピッタリね。肌触りもいいし、締め付けも思ったほど苦しくないわ。それに動きやすいし、今まで試着した中だとダントツね)
「ふわぁぁあ…素敵…素敵すぎる…」
「マリアンヌ様お美しいです…」
着心地を確かめるようにヒラリと身を翻すと、シェリルだけでなくテディまでもぽーっと頬を染めてうっとりしている。
「ぜっったいに買いましょう!マリンちゃんが買わないなら私が買うわ!!!」
「え、ええ…私も気に入ったし、いただくとするわ」
「やったーーー!!」
ぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねるシェリルに苦笑しつつ、マリアンヌは店員に買い取るドレスの指示をした。海王国を出る時に持ってきたお金は既に換金してある。それなりには蓄えていたので、ドレスを買うには十分足りた。
結局マリアンヌは、シルバーのドレス以外に、淡い桃色のドレスと、深い海底のような紺色のドレスを購入した。
これまで必要な際は、王宮のクローゼットからドレスを借りていたが、これで自分のドレスを身に纏うことが叶う。
とても満足がいく買い物ができたのだが…
(このシルバーのドレスは着どころが難しいわ…)
ましてやラルフの前で着ると含みを持たせてしまうに違いない。
ことあるごとに結婚しましょうと嘆願してきたが、いざ彼を想起させるドレスを身に纏うとなると腰が引けるマリアンヌであった。
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