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1:騎士
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ラインハルト=ロードガルン一行が来てからおよそ三日経ったともう。
この牢獄は地下にあるために採光の窓などない。
当然陽の傾きは分からない。だから多分経ったと言う風にしか言えない。
見張りの騎士に問いかけても当然の如く無視されるので正確な時間は知りようがない。
遠くで牢獄の扉が開く音が鳴った。
どうやら時間は合っていたようだ。
これから騎士になるのかどうか、結論を出す時間がやってくる。
騎士になれば晴れてここから出られる。
騎士にならなければ一生ここだろう。
見張り役の騎士が牢屋の前に立った。
「選択は済ませたか?」
「――あぁ」
「では、選べ。騎士になるか、ならないのか」
「俺は――」
◇ ◇ ◇
「どうした、辛気臭い顔して。喜べ、今日から娑婆の空気が吸えんだぞ」
煙管を加えたラインハルトは白々しくもそうのたまう。
結局俺は騎士になる事を選んだ。
正直ギリギリまで悩んだ。
自己保身に走る奴らの仲間になるのか、それとも一生暗い牢で過ごすのか。
どうしてもあのまま地下で過ごすのは精神的にも体力的にもきつい。食事はまともに貰えない、衛生的な問題もある。誠に遺憾だが騎士にならざる得ないと判断するしかないほどには俺の精神は未熟だ。
嫌いだなんだと言っておきながら、結局は我が身のために騎士の道を選んだ。これじゃ俺を見捨てた世の騎士と何も変わらない。
ほとほと嫌気がさしてくる。
見張りの騎士のおっさんに騎士になると告げた俺は、牢獄を出たあと、四方を騎士に囲まれた。
当然の判断だが、暴走の予兆もない段階では些か大袈裟に感じてしまうのは俺だけだろうか。
四方を固めた騎士はいづれも上級魔導騎士。
この国で三十人~五十人程度しかいない貴重な戦力だ。
何年も前の情報だから今はもっと増えてるかまたは逆に減ってるかもしれないが。
それでも貴重な戦力であるのに代わりはない。そんな戦力を四人も付けるとは警戒の程を改めて感じさせられた。
騎士に囲まれ牢を出て連れて来られたのはこの国の王であり、この国最強の騎士であるラインハルト=ロードガルンの執務室だった。
ここで王自らが騎士になるための説明や手続きなんかをやってくれるらしい。
王の癖に暇だと罵ればいいのか。
まぁ、俺が暴走しても最強の騎士様なら戦力的にも問題ないのは確かだろう。そう言う意味ではラインハルトの近くに移動させたのは理に叶っていると言える。
「娑婆の空気も何も拘束された状態で喜べるわけもねぇだろうが」
「それは仕方ないだろう。何せもし自由にして暴れられでもしたら事だからな」
そういって警戒感を滲ませるラインハルトだが、一切気負った様子はない。
腕には魔力を封じる魔封じの拘束具が付いている。
生き物にはすべからく魔力と言うものが宿っている。それを利用することで通常ではありえない現象などを生む事が出来る。
腕に嵌められた拘束具はそれを封じる為のモノだ。
破壊するのはまず不可能だ。
人間自体の腕力では当然、物にぶつけても壊れないように出来ている。この拘束具を嵌められた時点で魔力は扱えなくなり、魔力なしの存在へと変わる。
「それじゃ説明を始める。心して聞けよ」
そう言ったラインハルトはソファーの上に置いてあった封筒をテーブルの上に置いた。
「これには騎士学院への入学願書及び見習い騎士養成施設卒業願書が入っている。まず卒業願書に記入しろ。それから入学願書だ」
「拘束されたまま書けと?」
「嫌なら外せばよかろう」
「出来ねぇの分かってて言ってんだろ、このクソジジイ」
クッククとまるで悪役のような笑い声を上げる。
「ぐちゃぐちゃでも構わん。取り敢えず書け」
騎士は全部で六っつの階級が存在する。
下から、
魔導騎士見習い。
下級魔導騎士。
中級魔導騎士。
上級魔道騎士。
○帝魔導騎士。
○王魔導騎士。
これら六っつだ。
魔導騎士見習いとは騎士を目指す者ならば全員が始めに授かる役職だ。
これを経なければ下級魔導騎士にすらなれず、かといって騎士と名が付いていても騎士としての仕事をこなす訳ではない。
基本的には雑務みたいなものをこなすと聞いた。
騎士として認めて貰えるのは一つ上の下級になってから。
見習いから飛び級で上がる事は出来ないが、下級になり力が認められれば飛び級もあり得る。
下級騎士になってからはランクが上の騎士の一人を迎え、下級騎士同士班で行動する。
見習い騎士では下級騎士になり直ぐに行動できる様にするための準備期間だ。
班で任務をこなし力を付けていくと中級騎士への昇格チャンスが訪れる。その際に出される課題にクリアすれば晴れて中級へと上がれる。あとは同じように結果を出して課題をクリアすればランクはどんどん上がっていく。
大半の者は中級止まりが多く、上級に慣れるのは良くて三~四割程だった筈だ。
以外に多く思うが、上級は最も危険な任務に就く事が多く落命率が高い事でも知られている。その所為で上級は昇格率に反して国全体の数が少ない。
上級を突破した限られた者がなれるのが○帝魔導騎士。
○の中には各国で呼び方が違っている。
例えばこの国は雷の国では雷帝魔導騎士呼ばれる。
○帝騎士は国全体で僅か数人程しかいないと言われる。
それがどれほどランクが高いのかを窺わせる。戦力も上級とは比べ物にならないほどに高い。
最後、○王魔導騎士。
この○も国によって呼び方が違う。
ラインハルト=ロードガルンは雷王魔導騎士だ。
騎士の頂点であり、国の王。
この座に付けるのはたった一人だけだ。
このように騎士には階級があり、名ばかりのものではなく、本物の騎士になるためには見習いを卒業する必要がある。だが、ここで一つ問題がある。
俺は今まで何年も牢獄の中で過ごしてきた。そんな状態で当然養成施設に通った経験も勉強した事もない。
普通卒業試験は通っているモノだけが受けられる筈だが… 牢獄の中に居る間に法でも変わったのだろうか。
「今更なんだが、訓練施設に行った事もない俺が卒業試験って受けられるのか?」
問いかけると鳩が豆鉄砲でも食らったようた顔した後に「ホントに今更だな」と笑いだす。
「当然普通は無理だ。だがそこはホレ、儂こう見えても王だから。そこはこう権力を使って、な!」
「権力の悪用だな。この国の王がジジイで心配なってくるわ」
「おいおい、バカ言うな。権力ってのは使うためにあるんだ。一度も使わず飾っとくだけなど無駄も無駄、無駄の極みだ」
堂々と今後も権力を悪用していく発言に思わず顔が引きつる。
だが、今回の件については助かったと言える。
今から見習い養成施設に入ってたら下級魔導騎士になる頃には数年が経っている。雑務が仕事の見習いを何年も続けるつもりはない。
騎士になると決めたからにはさっさと騎士になる。
書き終わった書類をラインハルトに差しだす。
案の定拘束された状態で書いた文字はふにゃふにゃのデロデロで文字なのかどうかも怪しい。
古代石碑に書かれた字の方が上手いかもしれない。
書類を受け取ったラインハルトは眉間に皺を寄せた。
どうやら思っていた以上にデロデロな字だったらしい。だから最初に言っただろうに。
「まぁいい。今日からおよそ二ヶ月後、騎士養成訓練施設卒業試験がある。そこに参加しれもらう」
「は?」
思わず聞き返してしまった。
今から二ヶ月後っていきなり過ぎるだろう。
何せこちらは何年も牢獄の中にいたのだ。
身体はヒョロヒョロの色白。明らかに運動できるレベルじゃない。少なくとも半年程はリハビリして体力を戻してから試験をするべきだ。
俺はそう言う風に段取りが取られているモノだと思っていたのだが…
どうやら世の中早々甘いくはないと言う事か。
「悪いが、お前には一刻も早く騎士になってもらう必要がある。一応儂としてもヴィル、お前を牢獄から出すよう申請は早い内にしていたのだが中々申請が通らなくてな。
こんな時期になってしまった。まぁこれに関してはもう諦めろ」
何でこんな偉そうに言うんだコイツ。少しは人の身を心配しろよ。
「と、言う訳で今日から役二ヶ月間でお前には卒業試験をクリア出来るように特訓を開始してもらう」
こうして俺の意思をまったく無視した強制特訓生活が幕を開けた。
この牢獄は地下にあるために採光の窓などない。
当然陽の傾きは分からない。だから多分経ったと言う風にしか言えない。
見張りの騎士に問いかけても当然の如く無視されるので正確な時間は知りようがない。
遠くで牢獄の扉が開く音が鳴った。
どうやら時間は合っていたようだ。
これから騎士になるのかどうか、結論を出す時間がやってくる。
騎士になれば晴れてここから出られる。
騎士にならなければ一生ここだろう。
見張り役の騎士が牢屋の前に立った。
「選択は済ませたか?」
「――あぁ」
「では、選べ。騎士になるか、ならないのか」
「俺は――」
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「どうした、辛気臭い顔して。喜べ、今日から娑婆の空気が吸えんだぞ」
煙管を加えたラインハルトは白々しくもそうのたまう。
結局俺は騎士になる事を選んだ。
正直ギリギリまで悩んだ。
自己保身に走る奴らの仲間になるのか、それとも一生暗い牢で過ごすのか。
どうしてもあのまま地下で過ごすのは精神的にも体力的にもきつい。食事はまともに貰えない、衛生的な問題もある。誠に遺憾だが騎士にならざる得ないと判断するしかないほどには俺の精神は未熟だ。
嫌いだなんだと言っておきながら、結局は我が身のために騎士の道を選んだ。これじゃ俺を見捨てた世の騎士と何も変わらない。
ほとほと嫌気がさしてくる。
見張りの騎士のおっさんに騎士になると告げた俺は、牢獄を出たあと、四方を騎士に囲まれた。
当然の判断だが、暴走の予兆もない段階では些か大袈裟に感じてしまうのは俺だけだろうか。
四方を固めた騎士はいづれも上級魔導騎士。
この国で三十人~五十人程度しかいない貴重な戦力だ。
何年も前の情報だから今はもっと増えてるかまたは逆に減ってるかもしれないが。
それでも貴重な戦力であるのに代わりはない。そんな戦力を四人も付けるとは警戒の程を改めて感じさせられた。
騎士に囲まれ牢を出て連れて来られたのはこの国の王であり、この国最強の騎士であるラインハルト=ロードガルンの執務室だった。
ここで王自らが騎士になるための説明や手続きなんかをやってくれるらしい。
王の癖に暇だと罵ればいいのか。
まぁ、俺が暴走しても最強の騎士様なら戦力的にも問題ないのは確かだろう。そう言う意味ではラインハルトの近くに移動させたのは理に叶っていると言える。
「娑婆の空気も何も拘束された状態で喜べるわけもねぇだろうが」
「それは仕方ないだろう。何せもし自由にして暴れられでもしたら事だからな」
そういって警戒感を滲ませるラインハルトだが、一切気負った様子はない。
腕には魔力を封じる魔封じの拘束具が付いている。
生き物にはすべからく魔力と言うものが宿っている。それを利用することで通常ではありえない現象などを生む事が出来る。
腕に嵌められた拘束具はそれを封じる為のモノだ。
破壊するのはまず不可能だ。
人間自体の腕力では当然、物にぶつけても壊れないように出来ている。この拘束具を嵌められた時点で魔力は扱えなくなり、魔力なしの存在へと変わる。
「それじゃ説明を始める。心して聞けよ」
そう言ったラインハルトはソファーの上に置いてあった封筒をテーブルの上に置いた。
「これには騎士学院への入学願書及び見習い騎士養成施設卒業願書が入っている。まず卒業願書に記入しろ。それから入学願書だ」
「拘束されたまま書けと?」
「嫌なら外せばよかろう」
「出来ねぇの分かってて言ってんだろ、このクソジジイ」
クッククとまるで悪役のような笑い声を上げる。
「ぐちゃぐちゃでも構わん。取り敢えず書け」
騎士は全部で六っつの階級が存在する。
下から、
魔導騎士見習い。
下級魔導騎士。
中級魔導騎士。
上級魔道騎士。
○帝魔導騎士。
○王魔導騎士。
これら六っつだ。
魔導騎士見習いとは騎士を目指す者ならば全員が始めに授かる役職だ。
これを経なければ下級魔導騎士にすらなれず、かといって騎士と名が付いていても騎士としての仕事をこなす訳ではない。
基本的には雑務みたいなものをこなすと聞いた。
騎士として認めて貰えるのは一つ上の下級になってから。
見習いから飛び級で上がる事は出来ないが、下級になり力が認められれば飛び級もあり得る。
下級騎士になってからはランクが上の騎士の一人を迎え、下級騎士同士班で行動する。
見習い騎士では下級騎士になり直ぐに行動できる様にするための準備期間だ。
班で任務をこなし力を付けていくと中級騎士への昇格チャンスが訪れる。その際に出される課題にクリアすれば晴れて中級へと上がれる。あとは同じように結果を出して課題をクリアすればランクはどんどん上がっていく。
大半の者は中級止まりが多く、上級に慣れるのは良くて三~四割程だった筈だ。
以外に多く思うが、上級は最も危険な任務に就く事が多く落命率が高い事でも知られている。その所為で上級は昇格率に反して国全体の数が少ない。
上級を突破した限られた者がなれるのが○帝魔導騎士。
○の中には各国で呼び方が違っている。
例えばこの国は雷の国では雷帝魔導騎士呼ばれる。
○帝騎士は国全体で僅か数人程しかいないと言われる。
それがどれほどランクが高いのかを窺わせる。戦力も上級とは比べ物にならないほどに高い。
最後、○王魔導騎士。
この○も国によって呼び方が違う。
ラインハルト=ロードガルンは雷王魔導騎士だ。
騎士の頂点であり、国の王。
この座に付けるのはたった一人だけだ。
このように騎士には階級があり、名ばかりのものではなく、本物の騎士になるためには見習いを卒業する必要がある。だが、ここで一つ問題がある。
俺は今まで何年も牢獄の中で過ごしてきた。そんな状態で当然養成施設に通った経験も勉強した事もない。
普通卒業試験は通っているモノだけが受けられる筈だが… 牢獄の中に居る間に法でも変わったのだろうか。
「今更なんだが、訓練施設に行った事もない俺が卒業試験って受けられるのか?」
問いかけると鳩が豆鉄砲でも食らったようた顔した後に「ホントに今更だな」と笑いだす。
「当然普通は無理だ。だがそこはホレ、儂こう見えても王だから。そこはこう権力を使って、な!」
「権力の悪用だな。この国の王がジジイで心配なってくるわ」
「おいおい、バカ言うな。権力ってのは使うためにあるんだ。一度も使わず飾っとくだけなど無駄も無駄、無駄の極みだ」
堂々と今後も権力を悪用していく発言に思わず顔が引きつる。
だが、今回の件については助かったと言える。
今から見習い養成施設に入ってたら下級魔導騎士になる頃には数年が経っている。雑務が仕事の見習いを何年も続けるつもりはない。
騎士になると決めたからにはさっさと騎士になる。
書き終わった書類をラインハルトに差しだす。
案の定拘束された状態で書いた文字はふにゃふにゃのデロデロで文字なのかどうかも怪しい。
古代石碑に書かれた字の方が上手いかもしれない。
書類を受け取ったラインハルトは眉間に皺を寄せた。
どうやら思っていた以上にデロデロな字だったらしい。だから最初に言っただろうに。
「まぁいい。今日からおよそ二ヶ月後、騎士養成訓練施設卒業試験がある。そこに参加しれもらう」
「は?」
思わず聞き返してしまった。
今から二ヶ月後っていきなり過ぎるだろう。
何せこちらは何年も牢獄の中にいたのだ。
身体はヒョロヒョロの色白。明らかに運動できるレベルじゃない。少なくとも半年程はリハビリして体力を戻してから試験をするべきだ。
俺はそう言う風に段取りが取られているモノだと思っていたのだが…
どうやら世の中早々甘いくはないと言う事か。
「悪いが、お前には一刻も早く騎士になってもらう必要がある。一応儂としてもヴィル、お前を牢獄から出すよう申請は早い内にしていたのだが中々申請が通らなくてな。
こんな時期になってしまった。まぁこれに関してはもう諦めろ」
何でこんな偉そうに言うんだコイツ。少しは人の身を心配しろよ。
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