神すら喰らいしスキルと世界に抗う大罪スキル

てる

文字の大きさ
1 / 44

1:世の中、中々上手くいかないもんだ。大体が妖怪の所為ではと疑うのも無理なかろう

しおりを挟む
 城木 宗太しろき そうた 十四歳。
 特段容姿が良いとか頭が良いとかはなく、平凡などこにでもいる普通の少年。敢えて言うなら女の人に弱いと言う事位だろう。

 もし、『何故女性に弱いのか?』と聞かれれば、大抵は姉などの影響、もしくは知り合いの女の子の影響でそうなったとなるのが多いだろう。しかし宗太には姉はもちろんの事、妹もいない。女の子の友達はいない訳ではないが友達の影響でもない。

 影響の主は母ーー城木 涼香しろき りょうかーーが大きかったと言える。

城木家は母子家庭であった。その為母親である涼香が仕事と育児の両方をしなければならず、その姿を見て育ってきた宗太は、何か自分にも出来る事はないか、助けたいと言う思いを抱き積極的に行動した。
    そんなことがあり『女の人=助けてあげなければ』という風になったのだ。

 生きていく為にはお金が必要であり、お金を稼ぐ為には働く事が絶対と言えるだろう。母子家庭だからといって不自由な生活はさせたくないという思いから涼香は宗太のために仕事に打ち込んだ。

 土日は基本的に休みではあるが、宗太は母が仕事で疲れているからと思い、わがままを言わずにいた。それを察していた涼香は内心申し訳ない気持ちになりながらごめんね。と宗太に謝ることが多々あった。



 その日は珍しく母が出掛けよう!と言って外出した。
     母と一緒に外出するのは久しぶりで気分が高揚していた。良い一日だな。と少しどころかかなり浮かれていた。

    だからだろうか…こちらに向かって突っ込んでくる車に気づかなかったのは…



 止めどなく流れ出る血、電柱にぶつかり変形した車、そこかしこから聞こえる悲鳴。片側二車線の合わせて四車線の道路。左右の道にはお店が立ならんでいる。その所為もあり、すぐに人が集まってくるのが薄れる意識の中に見える。

その中の誰かが救急車を呼んでくれたのだろう。遠くから鳴り響く間延びしたような救急車の音を聞きながら宗太は自分より母さんを助けてくれと、ただ心の中で神に祈るしかできなかった。


 意識が朦朧とする中、救急隊員が母親の状態を確認するのが窺えた。が、確認作業をしていた救急隊員が首を左右に振り、手遅れだと沈痛な面持ちで言ったのを段々と沈みゆく意識の中で聞いた。

    その瞬間、怒りもしくはそれを超える何かーー怒りより強い感情ーーを覚えた。 


 神を憎んだ。


 身体は動かない。
    流れ出る血でTシャツは真っ赤に染まっている。

 意識は落ちる寸前。それでもたった一つの願いも聞いて貰えなかった、神と言う存在を憎んだ。

 巫山戯るなっ!と。お門違いなのはわかってはいたがそれ以外考えられなかった。
    

    強い感情を抱きながらこうして宗太は短い生涯に幕を下ろした。













 眼を開けるとそこには見知らぬ人物ーー男女ーーと天井が映った。
   見知らぬ二人は、まだ十代後半から二十代前半位と年若いように見える。


「あら、セリム 起きたの?」


 そう言い話しかけてくる女の人。最初、何言ってんだこいつ?セリムって誰だよ!とツッコもうとしたが言葉が出てこず、意味をなしていない、あーとかうーとか言う単語だけがかろうじて出てきただけだった。



「セリム、起きたのか。ママだけじゃなくパパにも顔を見せてくれ~」


 そういって近寄ってきたのは先程の女の人と一緒にいた男の人だった。危うくまたツッコみそうになるが何故か突っ込めないのでそのままスルーすることにする。

 見知らぬ男女に話しかけられながら、会話を聞いていると分かったことがある。

 俺こと宗太は、この二人の子供らしかった。
    二人は女の人がシトリア。重いという印象の無い黒っぽい紫色のセミロングで日本人に似ている綺麗な人だった。特におっぱいが大きかったのがいい。大きすぎず小さすぎない。
    俺も生前は男だしーーこの世界では赤ん坊な為まだ確認できないが、おっぱいには弱いのだろう…

 男の人はハンスと言うらしい。灰色がかった茶髪でアップバングのショートヘアと言うのだろうか…詳しくないからわからないがそんな感じの中々爽やかな感じの人物だ。

 どうゆう訳か俺はセリムとしてまったく知らない土地ーー見た感じ生前の世界とは違うーーで新たな人生を得たというのを理解した。
    多少は何故?と言う疑問もあったが、然程混乱もしなかった。

 生前あまりお金を使わないようにしていたこともあり、図書館などで本を読んだりしていた。その時に読んだ本の中に死んだ主人公が転生するという話があったのを覚えていたからかもしれない。
    そんなことを考えていると妙な引っ掛かりを覚えた。


(母さんはどうなったのか…)


 俺はこうして第二の人生を得る事が出来ている。
    ならっ…と考えた所ですぐに結論は出てしまう。

 そう都合よく物事はいかないと。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

処理中です...