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34:森の調査Ⅲ
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「暴風翼か」
セリムはキーラが一人でやらせてと言うので今現在は戦闘現場からは数歩引いた所で場を静観していた。とは言え、何かあると面倒なのですぐに駆け付けられる距離で見ている。
過保護というか、セリムがキーラのことをいつもは鬱陶しくも思いつつも心配しているのは明白だった。
身体に風を纏い速度を上げる風魔法"暴風翼"セリムはこの技を見たのは初めてであった。無詠唱の特訓後に何か練習していたのは知っていたが、それが新技の開発だとは知らなかったために「中々すごいものだ」と素直に賞賛と驚愕の笑みを張り付かせていた。
纏衣は体内で魔力を巡らせて己の肉体を強化するスキルである。近接職には必須と言えるものだ。
(体外に魔力を放出し翼が消えないように留めている…のか?)
引き替えキーラの暴風翼は纏衣とは違い身体の表面に風魔法を纏うものだ。セリムは魔力を見れる訳ではないため正確な事は分からなかったが、それでも何となくは見た感じそうではと考えた。
纏衣は体内で行う強化、暴風翼は体外で行う強化
この二つを比べた時に注目すべき点は魔力の消費量である。
(常に風の衣を纏った状態での維持か、相当魔力喰うんだろうな)
事実、爆風翼は魔力をガンガン消費している。キーラは特に暴風翼を完全に御しきれていない為に余計に魔力が駄々洩れであるのだ。正直言って燃費は最悪である。
キーラもその自覚があるのかリザードマンの前面に自ら飛び出る。が、そのまま飛び込むのではなく不意を突くように上に跳躍する。リザードマンの頭上をとることに成功した。その作戦は成功したようで真正面からぶっ殺してやるぅと意気込んでいたリザードマン達は呆気にとられている。そこへ滞空中のキーラは魔法を発動する為に魔力を手に集める。
風魔法により作られた風槌とでも呼べる風の圧力が上からリザードマンを押し潰す。しかし一匹は回避をしたようで攻撃から逃れた。
「んもぉ、一気に潰されなさいよね」
モンスターも相手に理不尽な事を言っている。自覚があるかどか疑問だが、ーーあって言っているなら早く死ねといとているようなものだーー酷い言いようだが、速く倒したいのはありありと伝わってくるのでそこは触れないのがいいだろう。
風で叩き潰し動きを止めた直後、地面にクラウチングスタートのような体勢で着地したキーラは、着地と同時に手から魔力を放出し地面に魔方陣を描き出す。。地面から炎柱が立ち上り一気に焼き尽くしていく。蜥蜴の丸焼きの一丁出来上がりである。
「大分威力上がってんだな」
今の攻撃を見ていたセリムは、ミノタウロスの時に比べ魔法の威力が上がっていることに気づいた。ここ十数日の特訓の成果が出ててるのだろ。そう思うと特訓の時間は無駄ではなかった事が分かり嬉しくなり口元に小さな笑みが浮かぶ。
(俺のおかげだろうな)
えっへんと威張るがセリムのお陰もないわけではないが九割以上はキーラ自身が頑張ったのが理由だ。
つまるところセリムはこうじゃね?と知識が無いためかなり曖昧な教えた方をしたにも関わらず、キーラが何とか試行錯誤を繰り返し自分でやったのだ。
キーラに言わせれば、セリムのおかげ?無いわね。これは私の努力よ!と自慢げに胸を張りながら言ってのけるだろう。
残り一匹となったリザードマンに向かって炎の矢を数矢放つが、やはり先程の攻撃で警戒されたようで躱したり盾で防がれたりしてしまっている。リザードマンはそのまま攻撃に移るようで徐々に盾を構えながら詰めてきており、炎の矢が止んだ瞬間一気に突撃してくる。
いくら速度が上がっていても一気に詰められた所為で身体が反応できず盾での攻撃を受けてしまう。
「んっ!」
吹き飛ばされるキーラであったが何とか体勢を立て直し両足を地面にこすりつけ威力を圧し殺す。そうして追撃に備え敵を視界に収めるように顔を上げた直後、リザードマンはすぐの所まで迫ってきていた。キーラは慌てることなくリザードマンを見据えている。
直後キーラを中心に直径1.5メートル弱の魔方陣が地面に描かれた。バチバチと雷のよな音を立てはじめ、幾本物線上の雷線が魔方陣の内部から溢れだしている。
「雷極剣陣」
リザードマンが魔方陣に侵入すると魔方陣から雷の剣が地より勢いよく飛び出してくる。キーラを殺そう突っ込んでいたリザードマンに回避するすべなどなく串刺しになった。魔方陣が描かれている部分ーーキーラがいる箇所を除き全ての場所から雷の剣が突き出てており、まるで侵入を防ぐバリケードのようだ。リザードマンは口や剣が刺さった傷から血を流しピクピクしていたがやがて息絶えた。
戦闘が終わり気が抜けたのか「ふぅー」と一息ついて暴風翼を解く。若干ふらついてはいるようだが、倒れるような事はない。
「はぁ はぁ」
呼吸を乱しながらも決して立ち止まることなくセリムのいる所に向かって歩いていくキーラ。
「お疲れさん、すごかったじゃん」
素直に賞賛の言葉を贈る。たった数十日でここまで出来るようになっているとは思ってもみなかったのだ。だが、同時に課題もあるなと思った。
「暴風翼だっけ。最初は奇襲的な感じだったから何とかなってたけど、身体が追い付いてないから気を付けた方がいいぞ」
丁寧にアドバイスをすると、上から目線感が気に食わなかったのか「わかってるわよ」とちょっとわざわざ言わないでとでもいうように睨まれながら言われてしまった。
こうしてキーラはすさまじい速度で成長した証をセリムに見せつけたのだった。
セリムはキーラが一人でやらせてと言うので今現在は戦闘現場からは数歩引いた所で場を静観していた。とは言え、何かあると面倒なのですぐに駆け付けられる距離で見ている。
過保護というか、セリムがキーラのことをいつもは鬱陶しくも思いつつも心配しているのは明白だった。
身体に風を纏い速度を上げる風魔法"暴風翼"セリムはこの技を見たのは初めてであった。無詠唱の特訓後に何か練習していたのは知っていたが、それが新技の開発だとは知らなかったために「中々すごいものだ」と素直に賞賛と驚愕の笑みを張り付かせていた。
纏衣は体内で魔力を巡らせて己の肉体を強化するスキルである。近接職には必須と言えるものだ。
(体外に魔力を放出し翼が消えないように留めている…のか?)
引き替えキーラの暴風翼は纏衣とは違い身体の表面に風魔法を纏うものだ。セリムは魔力を見れる訳ではないため正確な事は分からなかったが、それでも何となくは見た感じそうではと考えた。
纏衣は体内で行う強化、暴風翼は体外で行う強化
この二つを比べた時に注目すべき点は魔力の消費量である。
(常に風の衣を纏った状態での維持か、相当魔力喰うんだろうな)
事実、爆風翼は魔力をガンガン消費している。キーラは特に暴風翼を完全に御しきれていない為に余計に魔力が駄々洩れであるのだ。正直言って燃費は最悪である。
キーラもその自覚があるのかリザードマンの前面に自ら飛び出る。が、そのまま飛び込むのではなく不意を突くように上に跳躍する。リザードマンの頭上をとることに成功した。その作戦は成功したようで真正面からぶっ殺してやるぅと意気込んでいたリザードマン達は呆気にとられている。そこへ滞空中のキーラは魔法を発動する為に魔力を手に集める。
風魔法により作られた風槌とでも呼べる風の圧力が上からリザードマンを押し潰す。しかし一匹は回避をしたようで攻撃から逃れた。
「んもぉ、一気に潰されなさいよね」
モンスターも相手に理不尽な事を言っている。自覚があるかどか疑問だが、ーーあって言っているなら早く死ねといとているようなものだーー酷い言いようだが、速く倒したいのはありありと伝わってくるのでそこは触れないのがいいだろう。
風で叩き潰し動きを止めた直後、地面にクラウチングスタートのような体勢で着地したキーラは、着地と同時に手から魔力を放出し地面に魔方陣を描き出す。。地面から炎柱が立ち上り一気に焼き尽くしていく。蜥蜴の丸焼きの一丁出来上がりである。
「大分威力上がってんだな」
今の攻撃を見ていたセリムは、ミノタウロスの時に比べ魔法の威力が上がっていることに気づいた。ここ十数日の特訓の成果が出ててるのだろ。そう思うと特訓の時間は無駄ではなかった事が分かり嬉しくなり口元に小さな笑みが浮かぶ。
(俺のおかげだろうな)
えっへんと威張るがセリムのお陰もないわけではないが九割以上はキーラ自身が頑張ったのが理由だ。
つまるところセリムはこうじゃね?と知識が無いためかなり曖昧な教えた方をしたにも関わらず、キーラが何とか試行錯誤を繰り返し自分でやったのだ。
キーラに言わせれば、セリムのおかげ?無いわね。これは私の努力よ!と自慢げに胸を張りながら言ってのけるだろう。
残り一匹となったリザードマンに向かって炎の矢を数矢放つが、やはり先程の攻撃で警戒されたようで躱したり盾で防がれたりしてしまっている。リザードマンはそのまま攻撃に移るようで徐々に盾を構えながら詰めてきており、炎の矢が止んだ瞬間一気に突撃してくる。
いくら速度が上がっていても一気に詰められた所為で身体が反応できず盾での攻撃を受けてしまう。
「んっ!」
吹き飛ばされるキーラであったが何とか体勢を立て直し両足を地面にこすりつけ威力を圧し殺す。そうして追撃に備え敵を視界に収めるように顔を上げた直後、リザードマンはすぐの所まで迫ってきていた。キーラは慌てることなくリザードマンを見据えている。
直後キーラを中心に直径1.5メートル弱の魔方陣が地面に描かれた。バチバチと雷のよな音を立てはじめ、幾本物線上の雷線が魔方陣の内部から溢れだしている。
「雷極剣陣」
リザードマンが魔方陣に侵入すると魔方陣から雷の剣が地より勢いよく飛び出してくる。キーラを殺そう突っ込んでいたリザードマンに回避するすべなどなく串刺しになった。魔方陣が描かれている部分ーーキーラがいる箇所を除き全ての場所から雷の剣が突き出てており、まるで侵入を防ぐバリケードのようだ。リザードマンは口や剣が刺さった傷から血を流しピクピクしていたがやがて息絶えた。
戦闘が終わり気が抜けたのか「ふぅー」と一息ついて暴風翼を解く。若干ふらついてはいるようだが、倒れるような事はない。
「はぁ はぁ」
呼吸を乱しながらも決して立ち止まることなくセリムのいる所に向かって歩いていくキーラ。
「お疲れさん、すごかったじゃん」
素直に賞賛の言葉を贈る。たった数十日でここまで出来るようになっているとは思ってもみなかったのだ。だが、同時に課題もあるなと思った。
「暴風翼だっけ。最初は奇襲的な感じだったから何とかなってたけど、身体が追い付いてないから気を付けた方がいいぞ」
丁寧にアドバイスをすると、上から目線感が気に食わなかったのか「わかってるわよ」とちょっとわざわざ言わないでとでもいうように睨まれながら言われてしまった。
こうしてキーラはすさまじい速度で成長した証をセリムに見せつけたのだった。
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