神すら喰らいしスキルと世界に抗う大罪スキル

てる

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40:防衛戦Ⅱ

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 都市アルス防衛戦。それは後衛職である魔法を主体に使う者達によるの攻撃により幕を上げた。

 衛職の者がある程度離れた位置に陣取り、そこから魔法を放ち数の利を減らすと言うのが初手だ。


「我の求めたるは炎 集いて闇を照らし 敵を撃て」  「ファイーボール」

「我が求めたるは炎 重装なる一撃により 敵を穿て」「フレイムランス」

「我の求めたるは水 命の源にて大いなる一部 呑み込め」「ウォーターボール」

「我の求めるのは風 空を乱舞し 全てを断ち切らん」「ウィンドカッター」

「我の求めたるは風 大気を掛け 舞え」「ストームウィンド」


 数十人を超える人数で魔法が一気に放たれる。色とりどりの魔法は端から見れば綺麗に見えることだろう。花火がうち上がっているようにでも見えるかもしれない。だが、魔法を向けられた者達にとっては綺麗などとは思えない。迫りくるは彩り豊かな死の雨だ。

 今回参加しているのは一番低いのでDランクであり高いのはAランクだ。高位の者は無詠唱の使い手もおり詠唱なしで魔法を行使している。いくつもの魔法がモンスターに向かい放たれ着弾と同時に爆発、死体を量産する…筈だった。

 煙が晴れ状況を確認する者たち。既に前衛職の者たちは身を潜めていた森から抜け出し一気に窮迫していく。
 奇襲によって混乱している所を奇襲によってさらに乱し、倒しやすくするのだ。


「ばかなっ! 効いていないのか!?」
「冗談だろ」


 後衛組は現在の状況を見てバカなと驚愕に染まった声を上げ立ち尽くしていた。眼前に広がっているのは無傷とは言えないが然程ダメージを受けた様子も見受けられないモンスターの集団だったのだ。

 今回の防衛戦は偶にあるものとは違い、多数の種類のモンスターが集団で攻めこんできているのだ。それを鑑みて今回は長期戦になるかもと予測し魔力、体力を温存して放つと言う事にしてあった。だが、それを踏まえてもいくら何でもモンスターサイドに被害が出なさ過ぎていた。

 その所為でその場にいた者たちは驚愕を露わにしてしまったのだ。それは前衛組の冒険者も変わらない事だった。


 魔法の奇襲攻撃が放たれそれを合図に一気にモンスターの大群に窮迫していく前衛組。だが煙が晴れその現状を眼にしたものは速度を緩めてしまう。


「おいおい、何で効いてないんだよ…」
「知るかよっ! いいから走れ、結局は俺たちがやんなきゃいけないんだから」


 身も蓋もないことを言われそうだなと無理矢理に納得し再び走り出す者達。

 モンスターの集団は魔法の攻撃を受け集団の一部が侵攻方向を変え襲い掛かってきていた。一部とは言え、都市アルスから進路を変更することに成功したわけだが、あくまで一部なのだ。

 そうしてお互いに距離を詰めながら戦闘に入っていった。その頃セリムは、走る速度を落としていた。とは言え別段ビビッていたりするわけではなく、後衛組が放った魔法で殆どダメージを与えられなかったのを目撃しそれに違和感を覚えモンスターの集団を観察していたのだ。


(ざっと見た所ステータスが普通の奴よりも高いな…)


 鑑定が使える範囲まで迫りステータスを確認する。そこで見えたのは通常のランクのモンスターよりもステータスが上昇しているモンスターだった。

 例を挙げるなら通常Dランクに属するゴブリン。だが今回侵攻に加わっているゴブリンはDではなく限りなくCにも劣らないステータスを有しているのだ。


(これは、ワンランクずつ上がっていると考えた方がいいのかもな)


 現状を把握しそれを隣にいるキーラに伝える。特に教える義理もないのだが、親切心だ。


「キーラ、こいつらの事は通常のモンスターと考えると痛い目にあうぞ」

「そんなの見れば分かるわよっ」


 大きなお世話よといいながら先に行ってしまうキーラ。本当か?と心配しながらも接近してくる集団と戦闘を開始するのだった。




 突進してくる狼型のモンスターの攻撃をぎりぎりで回避しすれ違う。その瞬間に尻尾を掴み向かってくるモンスターに投げつける。投げつけられた奴と当たった奴はグシャと言う音を立てぶつかった瞬間にお互いに潰しあい死に絶える。


(所詮ステータスが上がってても雑魚は雑魚か)


 がっかりだと言う思いを抱きながらも次々とモンスターを殺していく。殴り掛かってくるオーガ。通常はCランクモンスターだがBランクに近いステータスを誇っている。だがそんなものはセリムには関係なかった。スキル"硬化"を使い正面から拳をぶつけ合う。お互いの拳がぶつかり合いオーガの腕が音を立てる。

 拳がつぶたかと思えば徐々に手首が曲がりだす。自身より小さなそれも人間に力で負けていると言う信じられない事実に元々肌の色が赤であったにも関わらず、さらに赤くなりながりセリムを潰そうと潰れた拳に力を込める。だか、そんな全力全開のパワーの元押し込んだ拳は最終的には腕が吹き飛ぶことでオーガの敗北が決まった。腕が抉れ叫び声をあげるオーガ。


「るせーよ」


 その一声とともに反時計回りに回転し右足でオーガを蹴り飛ばす。ただでさえ筋力が一万近くあり加えて硬化、風魔法を付加し切れ味を増している。強くなっているとはいえオーガごときが耐えられるはずもない。吹っ飛ばされたオーガは一瞬にして切断され血肉をまき散らした。

 オーガを始末し地面に着地すると同時に魔法を使用する。地面から螺旋を描いた炎の刺とでも言うべきものが噴き出しモンスターどもを複数纏めて焼き殺していく。


「なんだよ、あれ…」


 戦闘中だと言うのに冒険者の数人はセリムの戦いっぷりについつい見とれてしまっていた。


「喋って‥なっいでたたかえよっ!」


 近くにいた冒険者からイラつきのこもった声を掛けられるが見惚れていた冒険者の男は中々戦闘に戻ろうとしなかった。


(ホントなんだよあれ…あいつ確かDランクじゃなかったのか…)


 男が見惚れてしまうのも無理はないだろう。狼モンスターの尻尾をすれ違いざまに掴み投げ、オーガと正面切って殴りあって仕留める。

 おおよそ普通の人間にはできることではない出来事が目の前で起こっていたのだから…そうこうしている間にもセリムは次々に死体を量産していく。振動魔法で分解に酷似した現象を引き起こしたり、素手で殴り風穴を開けたり燃やしたりなどと低ランク冒険者の動きとは思えない動きで一人突き進んでいく。それを少し離れた所でクロックは視ていた。


(何にゃ!? セリムはすごいにゃ~)


 気の抜けたような真剣身に欠ける口調であるクロックだが目つきは鋭く細められており、その表情からはふざけた感じは感じられない。それもその筈でクロック率いる数十人は二手に分かれた集団の都市に向かう方を引き受けているのだ。それに加え今回のモンスターの集団はいつもとは違いかなり手ごわいと言う印象がありあまり余裕をこいてはいられなかった。


「んにゃー 何にゃこいつら やたら強いにゃ」


 文句を垂れながらクロックはオーガの上位種オーガジェネラルと戦っていった。通常はBランク相当なのだが今戦っているのはAランクに匹敵する強さを有しており、同時に周りのモンスターの相手もしながらと言う事で中々攻めきれずにいた。


 クロック・シルバー。
 猫の獣人の彼女は獣人の特徴でもある高い身体能力の内、速度を生かした戦い方をする冒険者である。レイピアと呼ばれる細い剣を刺突武器を使っている。時には魔法も使いながら戦うのだが、獣人は身体能力が高い代わりに魔力量が少なく、数の多い戦闘はクロック自身得意ではない。加えて速度を重視したスタイルのクロックは攻撃力がそこまで高いわけではなかった為に苦戦を強いられていた。

 オーガジェネラルの拳を回避し突きを繰り出すクロック。何突きもするがスキルなのかあまりダメージが入らなく、そして反撃をしようとすると、決まって連携でも取っているかのように邪魔が入りその所為もあり攻撃が中々聞かなかった。


「んにゃ~ 硬いにゃ」


 硬いとは言うが一対一ならば倒すのにそれほど時間はかからなかっただろう。多数の高ランクモンスターとの戦闘の所為で時間がかかってしまっているのだ。だが、さすがはAランク冒険者と言うべきか多数のモンスターを相手にしているのに殆ど傷を負っておらず回避している。

 獣人の身体能力に加え身体強化を使っているのでそれほど難しくはないのだが消費魔力を考えればあまり回避だけしていると言うのは時間と魔力のロスにつながるのでそろそろ攻めに入りたいところだ。

 攻撃を回避し突きを繰り出す。偶に魔法で牽制をしながら戦闘を続ける。


「これ使っちゃうと魔力ガンガン持っていかれるから使いたくなかったにゃ…」


 そう言うとクロックの髪の毛、耳、尻尾などがピンっと立ち上がった。目は獣の如く縦に割れたものに変わり、口元から覗く牙も鋭く尖っている。身体全体を覆うように周りには赤いオーラのようなものが沸きだし、クロックを包むようにして纏わりつき始めた。

 クロックが使ったのは獣人だけが使える自身を強化する術、狂獣化。これにより戦いは新たなる局面へと向かう。


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