神すら喰らいしスキルと世界に抗う大罪スキル

てる

文字の大きさ
41 / 44

41:防衛戦Ⅲ

しおりを挟む
 オーガジェネラル。オーガの上位種と言われているモンスターである。オーガは成人男性ほどの身長に三十㎝近くの腕周りを持つ角の生えた赤鬼である。だが、上位種はそれよりも一回り大きく頑強な肉体を誇る。


 一方クロック・シルバーは160㎝を少し上回る程度の身長でありオーガと比べるとかなり細く映ってしまう。それは狂獣化をしても変わることはないだろう。狂獣化とは獣人だけが持つとされるに肉体を獣に近づかせ人間以上の動き、力などを実現させるスキルである。

 全身の黒毛が逆立ち始め、身体の周りに赤いオーラのようなものが出現する。それと同時に目の色が黒から赤に変わり虹彩の部分が獣のような縦割れの三白眼に、とても同一人物とは思えない見た目に変化を遂げていた。


(魔力がどんどん減っていくにゃ~)


 狂獣化の欠点とも言える所を思い、早期決着の為に動き出す。先程までとは違い速度が上昇したことで回避、攻撃ともに余裕が出来攻撃の手数が増え始める。


 ジェネラルはクロックの速度が上がったことで反応が間に合わず傷を増やしていくがスキル"硬化"等により重傷を負うことをギリギリのレベルで避けられていた。


「グオォォォォ」


 ジェネラルは叫び声をあげクロックを威嚇する。スキル"咆哮"によりジェネラルの周囲にいた者は敵味方構わず少しの間硬直状態陥ってしまう事になる。


「そんなもん効かないにゃー」


 纏衣、狂獣化の二重の強化されたクロックにはオーガジェネラルの咆哮は意味をなさずそのまま反撃に転ずる。レイピアによる刺突で、クロックから見てジェネラルの右腕を貫きそのまま剣を上へと切り上げ連続で突きを繰り出し穴を大量に開けていく。

 本来レイピアと言う武器は刺突専門であり切り上げ攻撃などは出来ないのだが、そこはやはり魔法があってこそ出来る芸当だろう。

 体内の魔力を剣身に付加し、剣の形に形成する事で刺突だけではなく斬撃も繰り出せるのである。そしてその攻撃により刺突した瞬間に魔法戦士の職業専用スキル"付加攻撃"を使い魔道具でないにも関わらず魔法が発動しジェネラルの体内で爆発が起こる。それにより体内から爆ぜ肉片をまき散らしジェネラルは息絶えた。

 幾重もの死体の前に立ち剣についた血を払い狂獣化を解き纏衣だけの強化に戻す。


(んにゃ、このオーガ強いと言うより硬かったにゃ~。と言うか、今回のモンスターは全体的に通常のランクより強いにゃ)


 クロックは攻撃力があまり高くない為強化の二重掛けをし勝利をつかんだ。だがそれは魔力の多大なる消費を犠牲にしなくてはならない為使いたくはなかったのだ。だが今更そんなことを気にしても仕方ないと割り切りポーションを飲み街への侵攻を防ぐべくモンスターを倒しに走り周り始めるのだった。



 一方その頃のキーラも苦戦を強いられていた。

 前線に出てきたのはいいが、定められたランクよりも上の相手を複数同時に相手しなければならない状況になった事、そして何より数の多さが問題だった。ゴブリン程度が相手ならそれが例えランクが上がっていても問題ないのだが、様々な種類の混成集団である現在はほぼ常に暴風翼テンペストを発動しながらでないと戦えない状況だった。そしてそれは危機的状況を作るには十分だった…

 今キーラの前にはナーガと呼ばれるBランクのモンスターが立ちふさがっていた。ナーガなどの蛇系統のモンスターの大半はそこまでステータスが高いわけではないのだが強力な毒を持つと言う意味でBランクに指定されている。

 だが、今目の前に存在するナーガはAランクに匹敵する強さを秘めていた。ステータス面では現状でもB程度のものだがそれでも通常よりも強いというのは変わらない。


「はぁ はぁ なにしてんのよ、さっさと逃げなさいよ…」


 少し前のキーラならば絶対と言えるほどあり得ない行動をとっていた。キーラの背にはモンスターとの戦闘により傷を負っている冒険者が一人いるのだ。その冒険者を護りながらナーガを含むモンスターの攻撃をぎりぎりの段階で防いでいた。防戦一方な状態だ。


(このままじゃジリ貧よ、ポーションも数ないし、どうにかしないと…)


 ナーガが口から毒を吐きキーラがそれを魔法で押し流し防ぐ、すると魔法が途切れた瞬間にナーガが配下と思われる小型の毒蛇に指示を出し、無理矢理に突っ込ませ隙を作りだそうとする。そしてそれを何とか防ぐというのがさっきから繰り返しだ。自らは決してリスクを冒さずに戦うかなり卑怯なやり方だと言えるがそれも一つのやり方なのだから認めるしかない。だがそれは現状でだけ通用するやり方だ。

 ナーガ達の横数m地点から地面が急に盛り上がりドリルのような突起が複数出現する。徐々に迫りくる土の刺山とでも言うような物体はいとも容易く蛇共を貫いた。身体中を岩により穴空きにされグラリと傾いだ。



「キシャァァァーーー」


 甲高い叫び声をあげながら息絶えていく蛇たちを見て、急に地面が盛り上がった方へと視線を移すキーラ。


「やれやれ、厄介な奴が多い事この上ないねぇ~」


 そういいながら地面が隆起した所から現れたのは無精髭を生やした長髪の四十代の男だった。


「二人とも大丈夫かい?」


 優しいと言うか気の良いおじさんみたいな声で話しかけながら近寄ってくる。道中モンスターが襲い掛かってくるのだが地面が隆起し壁が生成されたし、先程と同じく刺山を作り出し攻撃をしていく。


「あんた誰よ?」

「あなたは…」


 助けてもらったにもかかわらずこの態度はどうかと思うがこれがキーラのキーラたる所以か…それに引き替え背後にいた男の冒険者は丁寧な口調だ。


「あはは、まぁその反応は当たり前か…でも今はそれよりもモンスターをどうにかする方が先でしょ」


 照れ笑いを浮かべながら「自己紹介は後でするから」と言いキーラの背後にいた冒険者を抱え上げると戦場から離脱する無精髭を生やした気のいいおっさん。

「何なのよ」とぼやきながらもポーションで魔力を回復させると戦闘に再び加わる。そして数十分後、今回の防衛戦でもっともな難敵が出現し戦線が乱れることになるのだった。…

 防衛戦が始まり一時間程が経過したときに戦況に変化が現れた。後衛職の働きもあり戦況は若干押され味だがまだ崩れるような事はしていなかった。が、Aランクモンスターがいきなり複数出現した事により戦線は一気に乱れ始め状況が変わる。

 そんな状況の中でただ一人ーーセリムだけがこの状況を楽しんでいるかのように口元に笑みをたたえていた。…
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

処理中です...