子猫マムと雲の都

杉 孝子

文字の大きさ
7 / 9

第七章:戦いの行方

しおりを挟む
 ヴォルテンの後を追いかけようと飛び立ったマムとグリムだったが、グリムの丸っこい体ではヴォルテンに追いつくことは出来なかった。ましてゆっくりと浮かび始めたマムの速さでは、グリムの後を着いて行くこともままならない。

 ヴォルテンがいきなり向きを変えてマムに向かって急降下し始めた。彼の鋭い眼光がマムを射抜くように睨みつけ、その巨大な翼はまるで雷鳴の如く空気を切り裂いてマムに向ってくる。怖に体をこわばらせたマムは、必死に体を動かそうとしたが、思うように動けない。 
  
「マム、下がれ!」  
 グリムの声が鋭く響いた。グリムは全力で翼を広げると、その厚みのある羽でマムを守る壁のように立ち塞がった。ヴォルテンの迫力ある攻撃に、グリム自身も恐怖を感じていたが、守るべき相棒のために一歩も引かなかった。  

「そんな小さな翼で防げると思うのか!」  
 ヴォルテンが嘲笑するような声を上げると、体をさらに加速させてグリムに向かって突っ込む。稲妻に打たれたような衝撃があり、グリムの体は力を失い雲の上に落ちて行った。

「グリムー」
マムは落ちていくグリムに向って叫ぶが、気を失っているのか返事が返ってこない。

「どうにかしなくちゃ!」  
 マムは心の中で焦燥を募らせながらも、恐怖を振り払って状況を見極めようとした。目の前では、再びヴォルテンは空高くに舞い上がっている。その圧倒的なスピードと力にマムは身構える。タカコ婆さんから授けられた羽根をぎゅっと握りしめると、向きを変えて再び急降下に移ったヴォルテンに立ち向かう決心をする。

「どうか、ぼくたちに力を貸して!」  
 その時、羽根がかすかに輝き出し、マムの体がさらに軽くなる感覚があった。  羽根は徐々に虹色の光を放ち始め、その光が周囲の空間を包み込むように広がった。  

 マムは今までとは見違える速度で、ヴォルテンの攻撃を避けると、大胆にも自らヴォルテンの横から近づこうとした。  

 ヴォルテンはマムから放たれる光に目を奪われ、一瞬動きを止める。その隙に、マムは両手でヴォルテンの翼を掴もうとした。ヴォルテンの羽が数本抜け落ちたが、彼はマムの攻撃をかすめるようにして再び大空に舞い上がる。  

「うまく攻撃を避けたな。でも、お遊びは終わりだ。今度こそ最後にしてやる」
 急降下に移ったヴォルテンは、鋭く曲がった嘴を開けてマムの元に近づいてくる。

 突然、マムの横を一陣の風が吹きすぎる。黒い風は一直線にヴォルテンに向っていくと、小さなつぶてを彼に向けて打ち出した。いくつものつぶてはヴォルテンに命中し、彼はその威力に目標を誤り、雲の上に真っ逆さまに落ちていく。

 黒い風は向きを変えてマムの方へと向かって来た。
「やったー。やったーぜ、マム」

 マムの近くに来ると大きな翼を広げてタカコ婆さんが減速する。彼女の背中には、以前一緒に冒険した意地悪子リスのピコが乗っていた。ピコは口に頬張ったヒマワリの種を一つ出すと、マムに見せる。

「こんなにうまく行くとは思わなかったけど・・・」そう言ってヒマワリを齧る。
「ピコ!? なんできみがここに!」

「なんでぼくを誘ってくれないんだよ。一緒に冒険した仲間だろ。マムたちがここに行ったとタカコ婆さんから聞いたからな。ぼくが助けに来たんだよ!」ピコの声はどこか楽しげだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

松野井奏
児童書・童話
月とぼうやは眠れぬ夜にお話をします。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

ナナの初めてのお料理

いぬぬっこ
児童書・童話
ナナは七歳の女の子。 ある日、ナナはお母さんが仕事から帰ってくるのを待っていました。 けれど、お母さんが帰ってくる前に、ナナのお腹はペコペコになってしまいました。 もう我慢できそうにありません。 だというのに、冷蔵庫の中には、すぐ食べれるものがありません。 ーーそうだ、お母さんのマネをして、自分で作ろう! ナナは、初めて自分一人で料理をすることを決めたのでした。 これは、ある日のナナのお留守番の様子です。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

ふしぎなかばん

こぐまじゅんこ
児童書・童話
おかあさんがぬってくれたかばん。 あんずちゃんのおきにいりです。

サッカーの神さま

八神真哉
児童書・童話
ぼくのへまで試合に負けた。サッカーをやめようと決心したぼくの前に現れたのは……

処理中です...