好きな子に告白も出来ない男の童貞卒業物語

杉 孝子

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北野沙月です

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 身長は165cmの俺より少し低かったので、155cmというところか。ゆっくりと腰を曲げ礼をしてから、源氏名を名乗った。

「北野沙月さつきです」

「ごゆっくりお楽しみください」男が後からそう言うと部屋を出で行った。

 待合室には俺と嬢だけが残された。

「部屋へ行きましょう」俺は嬢の後について、狭い階段を上がっていった。

 二階には、見たところ五部屋ぐらいあって、閉じられたドアの窓から、薄明りが漏れていた。たぶん部屋数はもう少しあると思ったが、俺は彼女が開けた部屋に入って行った。

 この部屋も薄暗い明かりで、ただ奥にあるバスルームだけは結構明るかった。部屋とバスルームには仕切りがなく、部屋の方が少しの段差分高くなっている。

 部屋の奥には、セミダブルのベッドが置いてあり、部屋の中央に小さな丸テーブルとひとり掛けのソファー、ホテルに置いてあるような小さな冷蔵庫、衣装入れ、後は内線電話とラジカセ。ラジカセからは、俺の知らない曲が静かに流れていた。

 バスルームの方は、大きめの浴槽と隅の方に立て掛けて置いてあるビニールのマット、真ん中に穴の開いた椅子が置いてあった。

 今まで雑誌や小説でしか知らなかった世界へ俺は入った。何故かこれが現実でないような気がした。自分がソープランドに来ているのが信じられずにいた。

『ここまで来た』と思った。これからの体験の期待と不安が頭をよぎった。

 俺は一人掛けのソファーに座った。彼女が、

「ここは初めて?」と聞いた。

「俺、こんなとこ来るの初めてや」

彼女は内線電話を取ると、

「これから始めます」と電話した。

「上着かけとこうか」彼女がハンガーを出してくると、俺の上着を後ろに回って脱がしてくれた。

 ドアがノックされ、コーヒーが届いた。彼女が受け取ると、テーブルの上に置いた。

「コーヒー頼んだの」少し怪訝そうな顔で聞いてきた。

「さっきは、時間がなかったから。こっちへ持ってくるって言ってた」

 俺は、彼女を見た。たいして美人じゃないが、少しふっくらとした顔立ちで、化粧も別段派手じゃない。ショートカットの似合っている普通の女の子に見えた。派手な格好でもしていない限り、多分街中ですれ違っても風俗嬢だと思わないだろう。

 こんな子が、ソープランドで働いているなんて。金のためだろうか。彼女がここへ来るまで、どんな過去があったのだろうか。俺はそんなことを考えていた。自分も、金を払ってこれからセックスをするというのに。

 コーヒーを飲んでいる間、彼女は素早くスーツを脱いだ。スーツの下は、黒の下着だった。彼女はブラジャーを取ると、パンティー一枚の姿になった。
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