少年マンガの主人公になってしまったが未来が暗すぎた

柳秋彦

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第1章 五歳児

第3話 綴りの勉強の話

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「さて、星文の綴りの授業を始めましょう」手を合わせそう宣言するショートカットの藍色の髪の女性は俺とアルバスの家庭教師ミランダ・セブン先生だ。アカデミーを首席で卒業したばかりの若き天才らしい、それがどうして田舎で五歳児の家庭教師をしているかというと多分魔道士の資格試験の受けるための資金稼ぎだ、若く貧しい学者が貴族や金持ちの子供の家庭教師になって勉強資金を貯めるのはこの国では珍しくない。

「疲れたー、もう休みたいよー」小さな勉強机にか顔を突っ伏してるのは朝から延々と続く勉強時間にそろそろ我慢の限界のアルバスだ。
「先程休憩を取られたでしょう」
「トイレ行ってミルク飲んだだけじゃん」
「綴りの勉強が終わったらお食事の時間ですよ、あと少し頑張りましょうね」
「頑張ったらルシールがチップスのおかわりさせてくれるかもしれないぞ」俺も助け船を出してみる
「えーでも僕は今休みたいんだけど……」そう言いながらもアルバスは期待に満ちた顔をあげる
「ケチャップもいっぱいつけれるかな?」やっぱり食い気には負けるらしい

とはいえアルバスが疲れるのも無理もない、貴族の子供ともなると随分ハードスケジュールで多分朝から休憩を挟みつつも、もう二時間も算数やら読み書きの勉強もしている、五歳児にはきつい
「はい、石版は持ちましたか?今日は竜神様と十二使徒様のお話を書き取りましょう」
この世界の言語はざっと日常に用いる共用語と魔法関係の特別な言語 星文の二つに分かれている。
まあぶっちゃけると共用語は英語で星文は日本語だ、「黒龍レジェンド」の漫画でも主人公たちの名前はアルファベットで、魔法詠唱は日本語で表記されていた。これは俺にとってかなりラッキーなことでお陰で特に苦労せずに魔法書が読める。英語は少し難しいが一応前世は大学生、子供の勉強レベルは扱える、天才児と呼ばれそうだが家の兄弟揃いも揃って頭がいいらしくみんなこの年でかなりの文字が読めたそうだ……普通こういう異世界転生ものって前世知識でチート人生送れそうなのになあ家族のスペックが高く全然目立たない……とほほ
まあ俺の目標は平和に暮らすことなので目立たないことはいいことかもしれない。

「竜神様のお話って聖書の始まりに書いてるやつ?」
「そうです、私が今からゆっくり読みますのでアルバス様とコール様は石版にひらがなで書きとってください」
セブン先生は一息つくと子供ようにわかりやすく書きなおされた聖書をを開きよく通った声で読み上げる


{「むかしむかし、地の世界は四つの性質でできていました。
「火」は固まって「風」になり、「風」は下に吹き「水」になり、「水」はやがて「土」になり、「土」は昇って「火」になる
その地の世界とは別に聖霊たちの住む天の世界は星の力エーテルで出来ていました。ある日天からエーテルがひとかけら落ちそれは火を通り風に乗り水に流れ土に還ったのちに天と地の全ての力を持つ竜神様になりました。
竜神様は天と地の世界を行き来できました、竜神様が飛んだ後には星の力が散らばりそれが地上の四つの性質と交わってたくさんの命を生み出しました。
しかしあんまりにもたくさんの命が満ち溢れたため地上の世界は大騒ぎになりました。
「これではいけない」竜神様はおもい,ご自分の体から十二枚の鱗を抜きます。それは十二使徒となり竜神様は使徒たちと一緒に地上の世界に時と季節の巡りを作り命たちが順番どおりに廻るようにしました。}

「お昼ごはんの時間も竜神様が作ったの?」
いい加減集中力が切れたのかアルバスがおしゃべりタイムに入った
「そうですよ、朝も昼も夜も命たちが順序よく生活ができるように作られた竜神様と使徒様達のご厚意なのです」
「でもさあ先生は僕たちとごはん食べる時間が違うよね、ルシールとカレンもいつも僕たちが食べ終わってから食べに行くよ、なんで竜神神はみんなのごはんの時間をバラバラに作ったの?」
こうなったら質問ぜめは止まらない。
「えっとそれはですね……」セブン先生が言葉に詰まる。彼女が俺たちの家庭教師になってから半年、セブン先生の性格は大体わかってきた、これはどうやったらわかりやすい説明ができるかと必死に考えている表情だ。
多分前世の俺と同い年ぐらいのセブン先生は最初に会った時の印象は猫みたいだな、だった。スッキリしたショートカットに小さな顔に涼やかなグレーの猫目が目立つ。何より背が高く痩せていてそれでいてスタイルがよくシャム猫を思わせるようなしなやかさあった。とはいえ初対面の彼女は子供相手にガチガチに緊張していてまさに借りてきた猫状態だった。
「お、お初にお目にかかります、コール様、アルバス様。私はミランダ・セブンと申します、っい、以後お見知り置きを……」そう言って頭を下げる彼女を見て
「新しい先生あんまり先生っぽくないね」とアルバスが耳打ちしてきた。

初めての授業ではホーン夫人と#_乳母__ナニー_#のルシールが心配して一緒の部屋で見守る中顔が見えないほどの大量の本や巻物を両腕に抱えて勉強部屋に入ってきた。
「大丈夫ですか?!」と俺が思わず席を立った程だ。
ルシールがすかさず手伝いにいき机の上に並べるのを手伝う。
「荷物が多いのならメイドに言いつければ手伝いましたのに……」ホーン夫人が呆れていう。
「すいません、人を教えるのは初めてなので、おぼっちゃま達が気にいる教材がわからなくて……いっそ今日選んでもらおうかと……」
「僕たちが選ぶ?!」アルバスの素っ頓狂な声が上がった。ホーン夫人に睨まれ慌てて彼は口をふさぐ。この世界で子供、特に正式名がつけられる前の子供というのは随分地位低く、皆に守られる存在の同時に不完全な存在と言われて「子供は見られるもので聴かれるものではない」との言葉の通り、意見を伺われることはまず無い、たとえ辺境伯の子息といえども大人の言うこと聞くのは当たり前、という感じだった。でもアルバスは幼いながらプライドが高く、嫌なものは嫌とはっきりと口に出す。実はセブン先生の前にも家庭教師がいたのだがアルバスと折り合いが悪く相手も経歴の長い老先生だったので自分のやり方をがんとして譲らず、授業のたびにアルバスが癇癪を起こし勉強にならなかったのでルシールが兄さんに相談して先生を変えてもらったのだ。仮にも辺境伯、経験値豊富な先生だって探せただろうにわざと若い先生を探してきた兄さんの意図がその瞬間わかった気がした。

実際俺もセブン先生でよかったと思う。アルバスより前世で積んだ人生経験があるのでいいこの振りはできたし子供の勉強なので教えられずに出来たが、それでも高圧的な態度の先生より真剣に向き合ってくれる先生の方が楽しい。セブン先生は俺が授業内容から外れた本に関する質問をしても答えてくれる、「コール様は聡明な方ですね」と頭を撫でてくるのはこっ恥ずかしいが。

「これは私の個人的な意見ですが、竜神様達は命が一つ一つ違う生き方をするのをわかっていらっしゃったのだと思います。だからきっちり決めるのでは無くわかりやすい大きな流れを作るだけでその時間をどう使うのかは一人ひとりに任せたのだと思います。」
「つまり竜神様はごはんの時間を作らなかったの?」
「そうですね、すみません先程は私が間違っていました。竜神様は時間は作りましたけどごはんの時間を作ったのは私達ですね」
「というか作ったのはルシールだね、僕だったら一時間ごとにごはんの時間にするよ」
「それじゃ食べすぎだろ」
「アルバス様は本当に食いしん坊ですね」セブン先生はクスクス笑う。

前世よりお金持ちになったもの自由がなくなった生活だがこれでも楽しい毎日だと思う。絶対に将来この生活を壊されたりしないように頑張ろう。

ーーーー
主人公のキャラがまだ薄いので次回は主人公中心の話をします
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