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第二章 帝国中央編
第30話 中核都市マイルズ
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スルト村を出発して9日目。
俺はスルト村の南東に位置するマイルズと言う中核都市の門の前に来ていた。村から徒歩で10日程の距離にあるこの街は、マイルズの更に南にある帝都アルバニアと帝国西側の交易路を結ぶ交通の要所である。
「なんと立派な門構えだ…」
村を出たことが無かった俺は、外郭門、つまり街に入るための入り口に立っている訳だが、入門の列に並びながら門の造りに感動し、前世とは全く違う街のあり方に驚く。門には衛士らしき人が商人の馬車の積み荷をチェックしている。
色々興奮しつつ、俺の順番になる。
「黒髪坊主、見ない顔だな。マイルズは初めてか?」
「はい。スルト村から来ました。こちらの騎士団にご用があって参りました」
「ほう、聖地出身か。ここに名を書いて通って良し。騎士団宿舎は中央街道をまっすぐ行けばすぐわかる」
「ありがとうございます」
あまりにもすんなり通れた事に驚きつつ、後日分かった事だが、聖地の出身者は身元がはっきりとしており、罪人はおろか、その3親等までいわくがない事が証明されているらしい。さらに、聖地の出身である事が虚偽だった場合即座に判明するし、通常の身元詐称よりはるかに重い刑罰が科されることになるので、そんな嘘をついてまで聖地出身を名乗る者は皆無だという。
だから、堂々と聖地出身であることを名乗る者は、すんなり街へ入れてもらえるという事だった。
言われた通りに一直線に中央にある街道を進んだ。街を見て回りたい衝動に何度も駆られたが、この街に来たからには、まず挨拶をせねばならない人がいる。
俺の剣の師匠である父上、コーデリアさん、そして最後の一人であるボルツさんだ。元々マイルズ騎士団の団長だったらしいが、物心ついた頃には団長を辞して、マイルズ騎士団の顧問兼剣術指南役に就いていた。
騎士団宿舎入り口の前に立ち、またまた立派な建物に驚いた。騎士団は大尽なのだなと、感心していると、門の前で立ち尽くす俺に気付いた団員が声を掛けてきた。
「そこの君。ここは立ち入り禁止だ。用が無いなら行きなさい」
「あ、申し訳ありません。私はジン・リカルドと申します。こちらに所属されているボルツ・ガットラムさんにご挨拶に参ったのです」
そう言いつつ、布袋から手紙を1通差し出す。俺にとってボルツさんはただの優しい剣の師匠だが、マイルズではそれなりの地位におられる方なので、ここでは俺みたいな平民が気軽に会える訳がない。
なので出立の前日に、コーデリアさんに騎士団宛の紹介状を書いてもらっていたのだ。というか、何も言わずに突きつけられたのだが。
少しして、手紙を読んだ団員の顔がみるみる青ざめる。
「しっ、失礼しました! リカルド様! ガットラム教官は只今訓練場で指南されています、ご案内いたしますっ! どうぞお入りください!」
凄い勢いで門を開けられ中に案内される。
あの慌てた様子…何が書いてあったんだ?
案内され中に入り、奥に進んで行くに従って、騎士団員たちの気合が聞こえてくる。訓練場まで来ると大勢の騎士団員が走り込みや打ち合い、魔法の訓練をしているのが分かった。かなり熱が入っているようで、これもボルツさんの指導だろうかと俺は感心した。少し体が疼く。
案内してくれている団員が、目の前に身なりの立派な人が通りがかるのを見て、慌てて声をかけた。
「ギ、ギムル団長!」
「うん? どうした慌てて」
「申し訳ありません。こちらの方がガットラム教官にお会いしたいとの事です」
団長と呼ばれた人が、案内係に渡された手紙に目を通す。
「…ぷっ、はっはっは! 君が慌てるのも無理ないな! あぁ、それにしても相変わらずだね、コーデリアは」
そう言って俺に視線を送る。俺は団長と聞いて慌てて自己紹介した。
「突然の訪問、誠に申し訳ありません。スルト村より参りましたジン・リカルドと申します。本日はボルツ・ガットラムさんにご挨拶に参った次第です」
「ああ、君の事はコーデリアやボルツさんから何度も聞いているよ。特にコーデリアは君にご執心だったからね。初めまして、私はマイルズ騎士団長エドワード・ギムルです。よろしくジン・リカルド君」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「ボルツさんの所に私が案内するよ。ふふっ…楽しそうだ」
楽しそう?
ぼそっと呟いた団長の言葉を気にしつつ、俺は案内されるまま彼についていく。すると、訓練場の真ん中で3人に囲まれながら剣戟を交わすボルツさんを見つけた。
「どうしたっ! 3人いるのに闇雲に1人ずつ来てどうする! 誘導、牽制、攻撃! 相手の動きを見て、それぞれが役割を瞬時に判断せねば、一対複数での戦いの優位性はないぞ!」
縦横無尽にツーハンドソードを振るうその姿は1年程前にお会いしたままだ。所属団が違うのにも関わらず、アルバニアのスルト駐屯騎士団もあのようにボルツさんにしごかれていた。なんだか懐かしく感じる。
「ボルツさーん! お客様ですよー! 貴方の大好きなジン君が来てくれましたよー」
ギムル団長はなんだか間延びした声でボルツさんを呼ぶ。最初に抱いた印象より気さくな方のようだ。
「なにぃ!? ジンだと!? ちょっと待て!」
そう言ってボルツさんは囲んでいた3人を早々に蹴散らし、こちらに駆け寄って来て下さった。
がっしりと剣を携えて。
「―――っつ!」
俺は即座に舶刀2本を抜き、歓迎の一撃を受け止める。
ガキィン!
ギリギリと剣と剣が切り結ぶ音が、会話のBGMとなる。
「久しいなジン! よく来た! 俺の一撃を難なく受け止めるとは、力をつけたようだな!」
「わ、私を見たらすぐに斬り掛かる悪習は…な、治られていないようですね。そう何度も受け止められません―――よっ!」
気合を入れて剣をはじき返し、距離を取る。いつの間にかギムル団長は俺達から距離を取っていた。
楽しそうだと言ったのは、これだったか…
「悪習とは人聞きが悪いな。お前の成長を見るのが俺の楽しみなだけだ」
距離を取られたのを機に、ボルツさんはニヤリと笑った。
「全員休憩! これより、ここにいるジンと模擬試合をする! よく見ておけよ!」
「私は旅立ちのご挨拶に伺っただけなのですが」
「これが俺とお前の挨拶だ! はーっはっは!」
団員達はすぐさま訓練場を空け、中央にスペースが儲けられる。
ざわざわと騎士団員が声を発する中、模擬試合の準備が完了してしまう。最早逃げる事は出来なさそうだ。胡乱な目で俺を見る騎士団員に頭を下げながら、訓練場中央に歩を進めた。
「なんだあの子供。教官の知り合いか?」
「あいつの武器見た事ねぇな。お前知ってるか」
「いや、見た事ねぇが…さっきあの武器で教官の一撃受け止めてたぞ」
「さすがに教官も手加減したんだろ」
方々から俺を観察する声が聞こえるが、気にしている場合では無い。ボルツさんは基本的に手加減無しだ。
「行くぞジン!」
「お願いします!」
ボルツさんの強力な一撃が俺の頭上に襲い掛かる。
さっきは受け止めたが、あれを続けては腕が持たない。俺は舶刀を逆手に持ち替えて受け流す構えに入る。
ギャリン!
受け流すと同時に身を翻し、続くボルツさんの切り返しの横一閃を、後方ステップで躱した。
「その身のこなし、コーデリアそっくりだな! どこまでやれるか見物だ!」
その後も回避と受け流しに専念して攻撃のチャンスを伺い、鋭い突きを半歩身体をずらしてギリギリ回避すると同時に懐に入り、ボルツさんの腹に舶刀を突き立てた。
「すみません、ボルツさん。刃引きをしていないのです。これでご容赦を」
「くくく…はっはっは! やるなぁジン!」
ボルツさんが剣を引いて勝負あり。試合は俺に勝ちを譲ってくれたようだ。決着がつくと同時に周りから歓声が起こる。
「なんだありゃ! すげーな坊主!」
「教官から1本取ったぞ!」
「早過ぎて何やってるか見えなかった…」
「かなり腕を上げたなジン。いつか本気でやり合いたいもんだ」
「ご勘弁ください。もう怪我をしても治して下さる母上はおりませんので」
「はっはっは! それもそうだ! まぁいい、あちらで話そう」
そう言うとボルツさんは建物を指差す。
「模擬試合は終了だ! 今の試合、何が勝負を分けたのか各自で考えておけ! 後でテストするからな!」
――――はい!
団員達が訓練に戻るのを見届け、俺とボルツさん、加えてギムル団長は建物内に向かい、2人に連れられてギムル団長の執務室に通された。
「いやー、ジン君は思った以上の使い手だね。さすがボルツさんとコーデリアの弟子だ」
「恐縮です。お二人にはよくよく鍛えて頂けた私は幸運でした。ですが、まだまだ未熟です」
「どうだエドワード。なかなか出来たやつだろう?」
「ええ、その若さであれ程の使い手ながら、謙虚さもあり、恵まれた環境を認識して礼節も弁えている。是非とも我が騎士団に入って頂きたいものです」
「か、過分なご評価です…私はご指導頂いた方々の言いつけを守っているだけの、ただの平民の子供に過ぎません」
「はっはっは! そーいうとこなんだよジン。お前さんみたいなやつが、冒険者だと俺らも助かるんだけどなぁ」
「ジン君。大人子供、それに身分だのはマイルズ騎士団では関係ありません。国と民を守る力と自らを律する心、そして何より人としての魅力が無ければ、騎士にはなれません。君にはさらに、それらを束ねられる指導力も兼ね備えられるでしょう。その素質がある。…本気で我が騎士団に入る気は無いかい?」
ここまで褒めちぎられると、さすがに参るな…ギムル団長の目は本気だ。
「おいおい、エドワード。そこまで言うと流石にジンも困るだろう」
ボルツさんが助け舟を出してくれるが、ここは俺の言葉でお返しせねば失礼に当たる。呼吸を整え、しかと前を向き、ギムル団長に返事をする。
「ギムル団長。大変光栄なお誘いありがとうございます。そのお言葉だけで、私は今後もご期待に沿えるよう励むことが出来ます。…ですが、父上や母上、それに村の皆と約束したのです。冒険者になり、世界を見て回ると。そしていつか必ず村に帰ると。ですので、騎士団にお世話になる事はできません」
深々と頭を下げて謝意を示す。
すると、ギムル団長は以外にもすっきりとした顔を俺に向けた。
「はぁ…すばらしい若者だ! わかったよジン君。困らせてしまって申し訳ない事をしたね。今後何かあったら私も個人的にはなってしまうが手伝わせてくれ。あ、そうそう、それと今後はエドワードでいいからね」
「お気遣いありがとうございます。その折はよろしくお願いします! えっと…エドワードさん!」
エドワードさんはにっこりと笑う。
その後、ボルツさんに村の皆は変わらず元気でやっている事や、俺の背負っている木刀の事、新しく覚えた魔法の話などの近況報告をし、冒険者についての話に移る。
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ここまで御一読下さり誠にありがとうございます。
お名前は伏せさせて頂きますが、日頃スターをお送り頂いている読者様、大変励みになっております。本当にありがとうございます。応援頂けているという実感が筆を進める推進力となっております。
おかげさまでモチベーションを落とすことなく、第三章に入らせて頂けました。最近本棚に入れて頂ける読者様方も増え、ますますやる気になっております。
読者様がお一人でもいらっしゃる限り、必ず第一部完走いたします。
まだまだ物語は続きます。そこそこの長編になる予定です。長い目でお付き合い頂けましたら幸いです。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
詩雪
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俺はスルト村の南東に位置するマイルズと言う中核都市の門の前に来ていた。村から徒歩で10日程の距離にあるこの街は、マイルズの更に南にある帝都アルバニアと帝国西側の交易路を結ぶ交通の要所である。
「なんと立派な門構えだ…」
村を出たことが無かった俺は、外郭門、つまり街に入るための入り口に立っている訳だが、入門の列に並びながら門の造りに感動し、前世とは全く違う街のあり方に驚く。門には衛士らしき人が商人の馬車の積み荷をチェックしている。
色々興奮しつつ、俺の順番になる。
「黒髪坊主、見ない顔だな。マイルズは初めてか?」
「はい。スルト村から来ました。こちらの騎士団にご用があって参りました」
「ほう、聖地出身か。ここに名を書いて通って良し。騎士団宿舎は中央街道をまっすぐ行けばすぐわかる」
「ありがとうございます」
あまりにもすんなり通れた事に驚きつつ、後日分かった事だが、聖地の出身者は身元がはっきりとしており、罪人はおろか、その3親等までいわくがない事が証明されているらしい。さらに、聖地の出身である事が虚偽だった場合即座に判明するし、通常の身元詐称よりはるかに重い刑罰が科されることになるので、そんな嘘をついてまで聖地出身を名乗る者は皆無だという。
だから、堂々と聖地出身であることを名乗る者は、すんなり街へ入れてもらえるという事だった。
言われた通りに一直線に中央にある街道を進んだ。街を見て回りたい衝動に何度も駆られたが、この街に来たからには、まず挨拶をせねばならない人がいる。
俺の剣の師匠である父上、コーデリアさん、そして最後の一人であるボルツさんだ。元々マイルズ騎士団の団長だったらしいが、物心ついた頃には団長を辞して、マイルズ騎士団の顧問兼剣術指南役に就いていた。
騎士団宿舎入り口の前に立ち、またまた立派な建物に驚いた。騎士団は大尽なのだなと、感心していると、門の前で立ち尽くす俺に気付いた団員が声を掛けてきた。
「そこの君。ここは立ち入り禁止だ。用が無いなら行きなさい」
「あ、申し訳ありません。私はジン・リカルドと申します。こちらに所属されているボルツ・ガットラムさんにご挨拶に参ったのです」
そう言いつつ、布袋から手紙を1通差し出す。俺にとってボルツさんはただの優しい剣の師匠だが、マイルズではそれなりの地位におられる方なので、ここでは俺みたいな平民が気軽に会える訳がない。
なので出立の前日に、コーデリアさんに騎士団宛の紹介状を書いてもらっていたのだ。というか、何も言わずに突きつけられたのだが。
少しして、手紙を読んだ団員の顔がみるみる青ざめる。
「しっ、失礼しました! リカルド様! ガットラム教官は只今訓練場で指南されています、ご案内いたしますっ! どうぞお入りください!」
凄い勢いで門を開けられ中に案内される。
あの慌てた様子…何が書いてあったんだ?
案内され中に入り、奥に進んで行くに従って、騎士団員たちの気合が聞こえてくる。訓練場まで来ると大勢の騎士団員が走り込みや打ち合い、魔法の訓練をしているのが分かった。かなり熱が入っているようで、これもボルツさんの指導だろうかと俺は感心した。少し体が疼く。
案内してくれている団員が、目の前に身なりの立派な人が通りがかるのを見て、慌てて声をかけた。
「ギ、ギムル団長!」
「うん? どうした慌てて」
「申し訳ありません。こちらの方がガットラム教官にお会いしたいとの事です」
団長と呼ばれた人が、案内係に渡された手紙に目を通す。
「…ぷっ、はっはっは! 君が慌てるのも無理ないな! あぁ、それにしても相変わらずだね、コーデリアは」
そう言って俺に視線を送る。俺は団長と聞いて慌てて自己紹介した。
「突然の訪問、誠に申し訳ありません。スルト村より参りましたジン・リカルドと申します。本日はボルツ・ガットラムさんにご挨拶に参った次第です」
「ああ、君の事はコーデリアやボルツさんから何度も聞いているよ。特にコーデリアは君にご執心だったからね。初めまして、私はマイルズ騎士団長エドワード・ギムルです。よろしくジン・リカルド君」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「ボルツさんの所に私が案内するよ。ふふっ…楽しそうだ」
楽しそう?
ぼそっと呟いた団長の言葉を気にしつつ、俺は案内されるまま彼についていく。すると、訓練場の真ん中で3人に囲まれながら剣戟を交わすボルツさんを見つけた。
「どうしたっ! 3人いるのに闇雲に1人ずつ来てどうする! 誘導、牽制、攻撃! 相手の動きを見て、それぞれが役割を瞬時に判断せねば、一対複数での戦いの優位性はないぞ!」
縦横無尽にツーハンドソードを振るうその姿は1年程前にお会いしたままだ。所属団が違うのにも関わらず、アルバニアのスルト駐屯騎士団もあのようにボルツさんにしごかれていた。なんだか懐かしく感じる。
「ボルツさーん! お客様ですよー! 貴方の大好きなジン君が来てくれましたよー」
ギムル団長はなんだか間延びした声でボルツさんを呼ぶ。最初に抱いた印象より気さくな方のようだ。
「なにぃ!? ジンだと!? ちょっと待て!」
そう言ってボルツさんは囲んでいた3人を早々に蹴散らし、こちらに駆け寄って来て下さった。
がっしりと剣を携えて。
「―――っつ!」
俺は即座に舶刀2本を抜き、歓迎の一撃を受け止める。
ガキィン!
ギリギリと剣と剣が切り結ぶ音が、会話のBGMとなる。
「久しいなジン! よく来た! 俺の一撃を難なく受け止めるとは、力をつけたようだな!」
「わ、私を見たらすぐに斬り掛かる悪習は…な、治られていないようですね。そう何度も受け止められません―――よっ!」
気合を入れて剣をはじき返し、距離を取る。いつの間にかギムル団長は俺達から距離を取っていた。
楽しそうだと言ったのは、これだったか…
「悪習とは人聞きが悪いな。お前の成長を見るのが俺の楽しみなだけだ」
距離を取られたのを機に、ボルツさんはニヤリと笑った。
「全員休憩! これより、ここにいるジンと模擬試合をする! よく見ておけよ!」
「私は旅立ちのご挨拶に伺っただけなのですが」
「これが俺とお前の挨拶だ! はーっはっは!」
団員達はすぐさま訓練場を空け、中央にスペースが儲けられる。
ざわざわと騎士団員が声を発する中、模擬試合の準備が完了してしまう。最早逃げる事は出来なさそうだ。胡乱な目で俺を見る騎士団員に頭を下げながら、訓練場中央に歩を進めた。
「なんだあの子供。教官の知り合いか?」
「あいつの武器見た事ねぇな。お前知ってるか」
「いや、見た事ねぇが…さっきあの武器で教官の一撃受け止めてたぞ」
「さすがに教官も手加減したんだろ」
方々から俺を観察する声が聞こえるが、気にしている場合では無い。ボルツさんは基本的に手加減無しだ。
「行くぞジン!」
「お願いします!」
ボルツさんの強力な一撃が俺の頭上に襲い掛かる。
さっきは受け止めたが、あれを続けては腕が持たない。俺は舶刀を逆手に持ち替えて受け流す構えに入る。
ギャリン!
受け流すと同時に身を翻し、続くボルツさんの切り返しの横一閃を、後方ステップで躱した。
「その身のこなし、コーデリアそっくりだな! どこまでやれるか見物だ!」
その後も回避と受け流しに専念して攻撃のチャンスを伺い、鋭い突きを半歩身体をずらしてギリギリ回避すると同時に懐に入り、ボルツさんの腹に舶刀を突き立てた。
「すみません、ボルツさん。刃引きをしていないのです。これでご容赦を」
「くくく…はっはっは! やるなぁジン!」
ボルツさんが剣を引いて勝負あり。試合は俺に勝ちを譲ってくれたようだ。決着がつくと同時に周りから歓声が起こる。
「なんだありゃ! すげーな坊主!」
「教官から1本取ったぞ!」
「早過ぎて何やってるか見えなかった…」
「かなり腕を上げたなジン。いつか本気でやり合いたいもんだ」
「ご勘弁ください。もう怪我をしても治して下さる母上はおりませんので」
「はっはっは! それもそうだ! まぁいい、あちらで話そう」
そう言うとボルツさんは建物を指差す。
「模擬試合は終了だ! 今の試合、何が勝負を分けたのか各自で考えておけ! 後でテストするからな!」
――――はい!
団員達が訓練に戻るのを見届け、俺とボルツさん、加えてギムル団長は建物内に向かい、2人に連れられてギムル団長の執務室に通された。
「いやー、ジン君は思った以上の使い手だね。さすがボルツさんとコーデリアの弟子だ」
「恐縮です。お二人にはよくよく鍛えて頂けた私は幸運でした。ですが、まだまだ未熟です」
「どうだエドワード。なかなか出来たやつだろう?」
「ええ、その若さであれ程の使い手ながら、謙虚さもあり、恵まれた環境を認識して礼節も弁えている。是非とも我が騎士団に入って頂きたいものです」
「か、過分なご評価です…私はご指導頂いた方々の言いつけを守っているだけの、ただの平民の子供に過ぎません」
「はっはっは! そーいうとこなんだよジン。お前さんみたいなやつが、冒険者だと俺らも助かるんだけどなぁ」
「ジン君。大人子供、それに身分だのはマイルズ騎士団では関係ありません。国と民を守る力と自らを律する心、そして何より人としての魅力が無ければ、騎士にはなれません。君にはさらに、それらを束ねられる指導力も兼ね備えられるでしょう。その素質がある。…本気で我が騎士団に入る気は無いかい?」
ここまで褒めちぎられると、さすがに参るな…ギムル団長の目は本気だ。
「おいおい、エドワード。そこまで言うと流石にジンも困るだろう」
ボルツさんが助け舟を出してくれるが、ここは俺の言葉でお返しせねば失礼に当たる。呼吸を整え、しかと前を向き、ギムル団長に返事をする。
「ギムル団長。大変光栄なお誘いありがとうございます。そのお言葉だけで、私は今後もご期待に沿えるよう励むことが出来ます。…ですが、父上や母上、それに村の皆と約束したのです。冒険者になり、世界を見て回ると。そしていつか必ず村に帰ると。ですので、騎士団にお世話になる事はできません」
深々と頭を下げて謝意を示す。
すると、ギムル団長は以外にもすっきりとした顔を俺に向けた。
「はぁ…すばらしい若者だ! わかったよジン君。困らせてしまって申し訳ない事をしたね。今後何かあったら私も個人的にはなってしまうが手伝わせてくれ。あ、そうそう、それと今後はエドワードでいいからね」
「お気遣いありがとうございます。その折はよろしくお願いします! えっと…エドワードさん!」
エドワードさんはにっこりと笑う。
その後、ボルツさんに村の皆は変わらず元気でやっている事や、俺の背負っている木刀の事、新しく覚えた魔法の話などの近況報告をし、冒険者についての話に移る。
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ここまで御一読下さり誠にありがとうございます。
お名前は伏せさせて頂きますが、日頃スターをお送り頂いている読者様、大変励みになっております。本当にありがとうございます。応援頂けているという実感が筆を進める推進力となっております。
おかげさまでモチベーションを落とすことなく、第三章に入らせて頂けました。最近本棚に入れて頂ける読者様方も増え、ますますやる気になっております。
読者様がお一人でもいらっしゃる限り、必ず第一部完走いたします。
まだまだ物語は続きます。そこそこの長編になる予定です。長い目でお付き合い頂けましたら幸いです。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
詩雪
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