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第四・一章 ドルムンド防衛戦
第100話 ドルムンド防衛戦Ⅶ
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「本陣より伝令! 中央軍全軍前進! 左翼手筈通りにとの指示です!」
「同じく本陣より伝令! 右翼敵魔人兵開放! その数1000! 全てが第三の魔人兵です!」
「報告します! わが軍後方に控えておりました『破砕の拳』4名、右翼に合流するとの事です!」
矢継ぎ早に飛ぶ報告を受け、左翼軍長アスケリノは即座に自軍へ指示を下す。
「全隊へ通達。敵中央を壁とし、敵右翼をこれへ押しつけます。これより重傷者を除いて戦線離脱は許しません。殲滅するつもりで戦いなさい」
「御意!」
「重装歩兵隊に通達。敵中央に向け2時方向に斜陣展開、前進です」
「はっ!」
「魔法師隊は引き続き重装歩兵隊後方で迎撃です」
「はっ」
「歩兵隊1から9番は重装歩兵隊の右に展開。3隊3列となり、重装歩兵隊より流れてくる敵兵を討ち取りつつ押し上げて下さい。10番は重装歩兵隊の後方で支援を、鼠一匹通してはなりません」
「はっ」
「全騎馬隊へ通達。重装歩兵隊の左へ移動。突撃態勢を維持し、敵が右に流れるよう威圧し続けて下さい。作戦通り、敵本陣の動きをくれぐれも見逃さぬように」
「御意っ!」
落ち着いて指示を出しているように見えるアスケリノだったが、内心は若干の焦りがあった。
理由は新たな魔人兵が強軍だった事と、中央軍の前進がほぼ同時だった事だ。
当初中央軍は、右翼の戦況を見てから攻め上がる算段だったはず。檻の解放と同時に進軍したという事は、本陣は瞬時に右翼劣勢になると判断したからに他ならない。ならば、右翼が崩壊する前に敵中央を叩き、撤退させようとしている可能性が高い。
また、左翼後方に控えていた『破砕の拳』が右翼に移動したのもそれを裏付けていた。
「ローベルト殿、どうかご無事で…敵本陣は中央と左翼にお任せあれ」
アスケリノの予想通りに、右翼はひっ迫した状況にあった。
◇ ◇ ◇ ◇
「うわぁ!」
「馬が怖がってるぞ!」
「こいつ力強――がはっ!」
第三の魔人兵が繰り出す攻撃は右翼騎馬隊の突撃力を上回り、馬ごと跳ね返される者、馬を壊される者が多数となり、その機動力は完全に殺されていた。右翼軍長のローベルトは、もはや騎馬を生かせる戦況ではないと判断。馬を降り全隊白兵戦へ切り替える指示を出した。
「全騎馬隊下馬! 馬を捨て白兵戦に切り替える! 魔人兵には小隊で当たれ!」
「軍長! 後ろです!」
「ぐっ! こいついつの間に!」
ガキィン!
食らえば致命傷は免れぬであろう一撃を、ローベルトの剣がギリギリ受け止める。
体勢を切り替え反撃を試みるが、ヒョイと後方へ躱され、にじり寄る魔人兵は言葉を発した。
『ケケケ、オマエエライ? ケケケッ! シネ!』
『エモノ、オレノエモノ!』
『ソノケンタカソウダ! ヨコセ!』
「おのれっ…」
いつの間にか後ろを取られていたローベルトは、さらに左右合わせ3体に囲まれる。明らかに先鋒の魔人兵より頭が良く、強い。言葉も発する程の知能もあるようだった。
騎馬での突撃に失敗し、隊列が乱れたところをピンポイントで狙われたのだ。
「軍長!」
ズバッ!
「ぎゃぁっ!」
ローベルトの援護に入ろうとした帝国兵が、その後ろにいた魔人兵に背中から容赦のない一撃を食らい絶命。
だが、仲間の死を悼んでいる状況ではない。眉一つ動かさず、ローベルトは剣を構えた。
「舐められたものだ。奇襲が失敗した時点でもう俺は獲れんぞ!」
全身を強化し、正面の魔人兵に斬りかかる。体勢万全の一撃は魔人兵の剣を弾き、切り返しの一閃で深々と敵を切り裂いた。
『ゲヒャッ!』
切り裂いた魔人兵を蹴飛ばし、勢いそのままに左右にいた魔人兵に襲い掛かる。
キンキンキンッ―――シュバッ!
「はぁっ!」
ドシュッ!
『ミギャァァァア!』
激しく打ち合うも、その技量は騎士団長ローベルトに及ぶところなし。左の魔人兵を切り倒し、右にいた魔人兵の頭に深々と剣を突き刺した。
断末魔を上げながら消えゆく魔人兵を見据え、ローベルトは辺りを見回す。しかし、その後ろから忍び寄る魔人兵に気付くのが一歩遅れた。
「なっ!? うぐっ!」
避けざまに剣の切っ先が左腕を掠める。その瞬間、
「どっせい!」
大剣がローベルトの眼前を覆い、魔人兵は真っ二つどころか、ぐちゃぐちゃにひしゃげた。
「すまぬ助かった、アッガス殿」
「いえ、致命傷を負ったはずの敵が立ち上がっては油断も致し方がないでしょう。まさにゾンビですな」
ローベルトを襲ったのは最初に仕留めたはずの魔人兵だった。そしてそのローベルトの危機を救ったのは『鉄の大牙』リーダーのアッガス。騎馬隊が下馬したと同時にこの戦場に参戦していた。
「我々の他に魔女と拳も到着しているはずです。―――ああ、あちらですな。はっはっは、分かりやすい」
アッガスが笑いながら示した方向には水柱が立ち、その上にはローブ姿の女が立っていた。
「人は水の上に立てるのだな」
「魔女の水は特別ですよ。ああやって、魔法術師にも関わらず前線に立つのです」
「なるほど…高い場所から戦場全体を見渡しつつ、攻撃と仲間への指示を出すのか。だが遠距離攻撃への対処は―――」
とローベルトが言いかけた時、水柱を攻撃して女を引きずり降ろそうとしていた複数の魔人兵が、標的を本人に切り替え、持っていた武器や遠距離魔法で直接攻撃に打って出た。しかし、
パンパンパンパンパン!
女の周囲に漂っていた水球が全ての攻撃を遮断する。同時に水球も消えてなくなるが、女が手をかざすと即座に水球が補充され、再度空中に漂い始めた。
その姿を見てローベルトはつぶやく。
「あれが『喚水の冠帯』の所以か…まさに絶対防御だな」
「ええ、フロールが傷を受けたという話は冒険者仲間から聞いたことがありませんな。そしてあちらを」
再度アッガスの指した方へ眼を向けると、水柱の下から魔女に攻撃を行った魔人兵が、次々と殴り飛ばされている。
「『破砕の拳』も左から到着したようです。4人の内3人が武闘士で1人が暗潜士という馬鹿なパーティーですが、その攻撃力は言わずもがなです。全て拳でねじ伏せる事を信条にしている、気持ちのいい奴らですな」
「しかし、剣での切り口も易々と再生する魔人兵相手に拳は不利なのでは? 確かに魔人兵を吹き飛ばす膂力は見事ではあるが―――」
だが、ローベルトの杞憂はすぐさま霧散する。『破砕の拳』のメンバーが放つ一撃一撃は魔人兵をひしゃげさせ、潰し、体の一部を吹き飛ばしていた。あれほどの威力ならば、剣で切るよりはるかにダメージがあるだろう。
「騎士団はもっと鍛えねばならんな…」
「鉄の大牙も負けておられませぬ。ローベルト殿、ウチの魔導師が上位魔法で隙を作ります、魔女と拳を含め冒険者を盾とし、前線の立て直しを。このままでは騎士団に死人が溢れます」
アッガスの言葉にローベルトが頷こうとした瞬間、
「回復部隊より伝令! 右翼被害深刻! このままでは復帰間に合わず! 前線を縮小されたしとの事です!」
「了解だ! どうやらブレイアムもそうしろと言っているようだ。アッガス殿、頼みます」
「お任せを。―――グレオール!」
「はいはい。一応魔法陣の準備は出来ていますよ。本当に全力でいいので? 私その場で倒れますよ?」
「頼む。あとは俺たちに任せろ。それに―――」
「俺らが運んでやるよ! ついでに武具も後ろに持ってきた!」
いつの間にか傍にいた地人が腕をまくり、ニッと笑う。
「だそうだ。仲間を頼む、地人の戦士達」
「任せろ!」
話は決まり、即座にローベルトが指示を飛ばした。
「全隊! 即座に後退し小隊を組みなおせ! 同時に中隊を編成! 負傷者は後衛で回復! 武具の損傷の激しい者は交換しておけ!」
ローベルトの指示は即座に全隊へ通達され一斉に騎士団が後退を始める。これに呼応し、『鉄の大牙』リーダーのアッガスも喉を強化し、大声を張り上げた。
「魔女! 拳! ウチのがデカいのをかます! 騎士団の殿を頼む!」
「それと魔女! 敵の足止めを頼む! 一瞬でいい!」
離れた前線で大暴れしていた2つのパーティーはアッガスの大声を聞き、後退を始める。
「弟子たち、引くぞ」
「へぃ!」
「足止めね…グレオールの陣魔法かしら? うふっ、楽しみだわ~」
『喚水の冠帯』リーダーのフロールは後退しながら、水柱の上で魔法を発動する。
「ヌルヌルはお好きかしら? ―――愛の営み!」
発動と同時に、撤退する騎士団と背を追う魔人兵の間に粘液が帯状に広がる。すると粘液は魔人兵側に急速に広がっていき、魔人兵はその場で転げまわるという、戦場にあるまじき事態が繰り広げられた。走っていた勢いのまま滑り転げて、岩に衝突するものもいた。
『ドワァァァ!』
『ヌルヌルゥ!』
『ナニコレェー』
「あっはっは! サイコー! 私ってば天っ才!」
安全な水柱の上で、笑って転げるフロール。
同時に魔法陣に魔力を込めたグレオールは、目の前に魔法陣を浮かび上がらせた。
「またふざけた魔法名を…天才が聞いてあきれます! 粘液ごと燃やし尽くしてあげますよ! ハイクさん、見ておきなさい! 魔法陣を使えば自身の持つ魔力出力を越えた威力を発揮することができます!」
「やったれー! グレオール先生!」
応援する生徒ハイクに呼応し、グレオールの目の前の魔法陣が赤く光り輝く。
「陣魔法師万歳!―――広域爆炎魔法!」
ズドォォォォン!
魔法陣から放たれた巨大な爆炎が、戦場全体を包み込んだ。
「同じく本陣より伝令! 右翼敵魔人兵開放! その数1000! 全てが第三の魔人兵です!」
「報告します! わが軍後方に控えておりました『破砕の拳』4名、右翼に合流するとの事です!」
矢継ぎ早に飛ぶ報告を受け、左翼軍長アスケリノは即座に自軍へ指示を下す。
「全隊へ通達。敵中央を壁とし、敵右翼をこれへ押しつけます。これより重傷者を除いて戦線離脱は許しません。殲滅するつもりで戦いなさい」
「御意!」
「重装歩兵隊に通達。敵中央に向け2時方向に斜陣展開、前進です」
「はっ!」
「魔法師隊は引き続き重装歩兵隊後方で迎撃です」
「はっ」
「歩兵隊1から9番は重装歩兵隊の右に展開。3隊3列となり、重装歩兵隊より流れてくる敵兵を討ち取りつつ押し上げて下さい。10番は重装歩兵隊の後方で支援を、鼠一匹通してはなりません」
「はっ」
「全騎馬隊へ通達。重装歩兵隊の左へ移動。突撃態勢を維持し、敵が右に流れるよう威圧し続けて下さい。作戦通り、敵本陣の動きをくれぐれも見逃さぬように」
「御意っ!」
落ち着いて指示を出しているように見えるアスケリノだったが、内心は若干の焦りがあった。
理由は新たな魔人兵が強軍だった事と、中央軍の前進がほぼ同時だった事だ。
当初中央軍は、右翼の戦況を見てから攻め上がる算段だったはず。檻の解放と同時に進軍したという事は、本陣は瞬時に右翼劣勢になると判断したからに他ならない。ならば、右翼が崩壊する前に敵中央を叩き、撤退させようとしている可能性が高い。
また、左翼後方に控えていた『破砕の拳』が右翼に移動したのもそれを裏付けていた。
「ローベルト殿、どうかご無事で…敵本陣は中央と左翼にお任せあれ」
アスケリノの予想通りに、右翼はひっ迫した状況にあった。
◇ ◇ ◇ ◇
「うわぁ!」
「馬が怖がってるぞ!」
「こいつ力強――がはっ!」
第三の魔人兵が繰り出す攻撃は右翼騎馬隊の突撃力を上回り、馬ごと跳ね返される者、馬を壊される者が多数となり、その機動力は完全に殺されていた。右翼軍長のローベルトは、もはや騎馬を生かせる戦況ではないと判断。馬を降り全隊白兵戦へ切り替える指示を出した。
「全騎馬隊下馬! 馬を捨て白兵戦に切り替える! 魔人兵には小隊で当たれ!」
「軍長! 後ろです!」
「ぐっ! こいついつの間に!」
ガキィン!
食らえば致命傷は免れぬであろう一撃を、ローベルトの剣がギリギリ受け止める。
体勢を切り替え反撃を試みるが、ヒョイと後方へ躱され、にじり寄る魔人兵は言葉を発した。
『ケケケ、オマエエライ? ケケケッ! シネ!』
『エモノ、オレノエモノ!』
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「おのれっ…」
いつの間にか後ろを取られていたローベルトは、さらに左右合わせ3体に囲まれる。明らかに先鋒の魔人兵より頭が良く、強い。言葉も発する程の知能もあるようだった。
騎馬での突撃に失敗し、隊列が乱れたところをピンポイントで狙われたのだ。
「軍長!」
ズバッ!
「ぎゃぁっ!」
ローベルトの援護に入ろうとした帝国兵が、その後ろにいた魔人兵に背中から容赦のない一撃を食らい絶命。
だが、仲間の死を悼んでいる状況ではない。眉一つ動かさず、ローベルトは剣を構えた。
「舐められたものだ。奇襲が失敗した時点でもう俺は獲れんぞ!」
全身を強化し、正面の魔人兵に斬りかかる。体勢万全の一撃は魔人兵の剣を弾き、切り返しの一閃で深々と敵を切り裂いた。
『ゲヒャッ!』
切り裂いた魔人兵を蹴飛ばし、勢いそのままに左右にいた魔人兵に襲い掛かる。
キンキンキンッ―――シュバッ!
「はぁっ!」
ドシュッ!
『ミギャァァァア!』
激しく打ち合うも、その技量は騎士団長ローベルトに及ぶところなし。左の魔人兵を切り倒し、右にいた魔人兵の頭に深々と剣を突き刺した。
断末魔を上げながら消えゆく魔人兵を見据え、ローベルトは辺りを見回す。しかし、その後ろから忍び寄る魔人兵に気付くのが一歩遅れた。
「なっ!? うぐっ!」
避けざまに剣の切っ先が左腕を掠める。その瞬間、
「どっせい!」
大剣がローベルトの眼前を覆い、魔人兵は真っ二つどころか、ぐちゃぐちゃにひしゃげた。
「すまぬ助かった、アッガス殿」
「いえ、致命傷を負ったはずの敵が立ち上がっては油断も致し方がないでしょう。まさにゾンビですな」
ローベルトを襲ったのは最初に仕留めたはずの魔人兵だった。そしてそのローベルトの危機を救ったのは『鉄の大牙』リーダーのアッガス。騎馬隊が下馬したと同時にこの戦場に参戦していた。
「我々の他に魔女と拳も到着しているはずです。―――ああ、あちらですな。はっはっは、分かりやすい」
アッガスが笑いながら示した方向には水柱が立ち、その上にはローブ姿の女が立っていた。
「人は水の上に立てるのだな」
「魔女の水は特別ですよ。ああやって、魔法術師にも関わらず前線に立つのです」
「なるほど…高い場所から戦場全体を見渡しつつ、攻撃と仲間への指示を出すのか。だが遠距離攻撃への対処は―――」
とローベルトが言いかけた時、水柱を攻撃して女を引きずり降ろそうとしていた複数の魔人兵が、標的を本人に切り替え、持っていた武器や遠距離魔法で直接攻撃に打って出た。しかし、
パンパンパンパンパン!
女の周囲に漂っていた水球が全ての攻撃を遮断する。同時に水球も消えてなくなるが、女が手をかざすと即座に水球が補充され、再度空中に漂い始めた。
その姿を見てローベルトはつぶやく。
「あれが『喚水の冠帯』の所以か…まさに絶対防御だな」
「ええ、フロールが傷を受けたという話は冒険者仲間から聞いたことがありませんな。そしてあちらを」
再度アッガスの指した方へ眼を向けると、水柱の下から魔女に攻撃を行った魔人兵が、次々と殴り飛ばされている。
「『破砕の拳』も左から到着したようです。4人の内3人が武闘士で1人が暗潜士という馬鹿なパーティーですが、その攻撃力は言わずもがなです。全て拳でねじ伏せる事を信条にしている、気持ちのいい奴らですな」
「しかし、剣での切り口も易々と再生する魔人兵相手に拳は不利なのでは? 確かに魔人兵を吹き飛ばす膂力は見事ではあるが―――」
だが、ローベルトの杞憂はすぐさま霧散する。『破砕の拳』のメンバーが放つ一撃一撃は魔人兵をひしゃげさせ、潰し、体の一部を吹き飛ばしていた。あれほどの威力ならば、剣で切るよりはるかにダメージがあるだろう。
「騎士団はもっと鍛えねばならんな…」
「鉄の大牙も負けておられませぬ。ローベルト殿、ウチの魔導師が上位魔法で隙を作ります、魔女と拳を含め冒険者を盾とし、前線の立て直しを。このままでは騎士団に死人が溢れます」
アッガスの言葉にローベルトが頷こうとした瞬間、
「回復部隊より伝令! 右翼被害深刻! このままでは復帰間に合わず! 前線を縮小されたしとの事です!」
「了解だ! どうやらブレイアムもそうしろと言っているようだ。アッガス殿、頼みます」
「お任せを。―――グレオール!」
「はいはい。一応魔法陣の準備は出来ていますよ。本当に全力でいいので? 私その場で倒れますよ?」
「頼む。あとは俺たちに任せろ。それに―――」
「俺らが運んでやるよ! ついでに武具も後ろに持ってきた!」
いつの間にか傍にいた地人が腕をまくり、ニッと笑う。
「だそうだ。仲間を頼む、地人の戦士達」
「任せろ!」
話は決まり、即座にローベルトが指示を飛ばした。
「全隊! 即座に後退し小隊を組みなおせ! 同時に中隊を編成! 負傷者は後衛で回復! 武具の損傷の激しい者は交換しておけ!」
ローベルトの指示は即座に全隊へ通達され一斉に騎士団が後退を始める。これに呼応し、『鉄の大牙』リーダーのアッガスも喉を強化し、大声を張り上げた。
「魔女! 拳! ウチのがデカいのをかます! 騎士団の殿を頼む!」
「それと魔女! 敵の足止めを頼む! 一瞬でいい!」
離れた前線で大暴れしていた2つのパーティーはアッガスの大声を聞き、後退を始める。
「弟子たち、引くぞ」
「へぃ!」
「足止めね…グレオールの陣魔法かしら? うふっ、楽しみだわ~」
『喚水の冠帯』リーダーのフロールは後退しながら、水柱の上で魔法を発動する。
「ヌルヌルはお好きかしら? ―――愛の営み!」
発動と同時に、撤退する騎士団と背を追う魔人兵の間に粘液が帯状に広がる。すると粘液は魔人兵側に急速に広がっていき、魔人兵はその場で転げまわるという、戦場にあるまじき事態が繰り広げられた。走っていた勢いのまま滑り転げて、岩に衝突するものもいた。
『ドワァァァ!』
『ヌルヌルゥ!』
『ナニコレェー』
「あっはっは! サイコー! 私ってば天っ才!」
安全な水柱の上で、笑って転げるフロール。
同時に魔法陣に魔力を込めたグレオールは、目の前に魔法陣を浮かび上がらせた。
「またふざけた魔法名を…天才が聞いてあきれます! 粘液ごと燃やし尽くしてあげますよ! ハイクさん、見ておきなさい! 魔法陣を使えば自身の持つ魔力出力を越えた威力を発揮することができます!」
「やったれー! グレオール先生!」
応援する生徒ハイクに呼応し、グレオールの目の前の魔法陣が赤く光り輝く。
「陣魔法師万歳!―――広域爆炎魔法!」
ズドォォォォン!
魔法陣から放たれた巨大な爆炎が、戦場全体を包み込んだ。
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