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第21章 ルーヴェン侯爵家の名
その名を見つけたのは、午後の終わりだった。
その日も女子学院の事務室には、紙の擦れる音と、時おり交わされる短い会話が静かに溢れていた。
ローザは翌週の授業予定を見直し、クラウスは寄付者向けの報告文をまとめている。
リディアは机に向かい、新年度前の寄付一覧を整理していた。
学院の寄付者は増えている。
それ自体は喜ぶべきことだ。
だが人が増えれば、記録も煩雑になる。誰が何の名目で寄付したのか。
単発なのか継続なのか。礼状は出したか。次回の視察予定はあるか。
そうしたことをひとつずつ整えなければ、すぐに流れは詰まる。
リディアは新しい一覧表の空欄へ、細い字で順に書き込んでいった。
アシュベリー辺境伯家
北街区商会
クライン伯爵夫人
王都女子慈善会
慣れた手つきで紙をめくる。
そのときだった。
ルーヴェン侯爵家
その文字が目に入った瞬間、指先がぴたりと止まった。
胸の奥で、何かが静かに痛む
見間違いではない。
もう一度見ても、同じ文字がそこにあった。
ルーヴェン侯爵家。
寄付継続。
春期視察予定調整中。
たったそれだけの記載だった。
それだけなのに、目の前の空気が少しだけ遠くなる。
「リディア様?」
向かいの机から、クラウスが声をかける。
「どうかなさいましたか」
「……いいえ」
リディアはすぐに首を振った。
だが声が少しかたくなったのは、自分でも分かった。
クラウスは不思議そうにしながらも、それ以上は踏み込まない。
その気づかいがありがたくて、余計に胸が痛んだ。
ルーヴェン侯爵家。
その名を紙の上で見るだけで、まだこんなにも身体がこわばるのだと知ってしまう。
あの屋敷を出てから、たしかに少しずつ気持ちが楽になりつつある。
学院では役に立てることがあり、感謝されることも増えた。
自分の足で立ち始めているという実感も、少しずつだが芽生えている。
それでも。
その名前だけは、まだ自分の中で慣れない。
リディアは視線を落とし、もう一度一覧へ目を通した。
隣の欄には、小さく追記がある。
支援内容確認のため、後日当主来訪の可能性あり
今度は、息が止まりそうになった。
当主
つまり、レオンハルト本人が来る可能性があるということだ。
再会、という言葉が頭の中をよぎる。
もう会わないままでいられると思っていた。
少なくとも、こんなにも早く名前が近づいてくるとは思っていなかった。
「そちら、何か問題がありましたか」
今度はローザが近づいてきた。
リディアはあわてて紙を少しだけずらす。
「いいえ。寄付一覧の確認をしていただけです」
「でしたら、こちらも後で見ていただけますか」
ローザは授業用の紙束を持っていた。
教材の割り振りに、少し行き違いがあるらしい。
「もちろんです」
そう答えた瞬間、自分の声がいつも通りに戻っているのに気づく。
仕事の話をしているあいだは、まだ大丈夫だった。
それでも、紙束を受け取る指先は少しだけ冷えていた。
その日の午後は、いつもより集中するのに時間がかかった。
教材の不足分を学年ごとに整理し、礼状の発送予定を確認し、来週分の教室使用表を見直す。
やるべきことは変わらない。
けれどふとした瞬間に、さっきの文字が頭に浮かぶ。
ルーヴェン侯爵家
まるで、遠ざかったはずのものが、静かにこちらへ戻ってくるみたいだった。
夕方になり、生徒たちの気配が少しずつ消えていく。
事務室の窓から入る光もやわらいで、紙の端が淡い色に染まり始めた。
「今日はここまでにいたしましょうか」
クラウスが帳面を閉じながら言った。
「リディア様も、お疲れでしょう」
「いいえ、まだ……」
そう言いかけて、リディアは言葉を飲み込んだ。
無理をしないこと。困ったときはちゃんと誰かに言う事。母に言われたばかりだった。
「……では、こちらだけ片づけたら」
「ええ、それで十分です」
クラウスはほっとしたように笑った。
以前のリディアなら、こういうときも
「まだできます」と言っていただろう。
侯爵家では、できることを残したまま席を立つのが苦手だった。
自分が止まれば、どこかに綻びが出る気がしていたからだ。
でも今は、少しずつ違う。
全部を抱え込まなくても、学院はすぐには崩れない。人はそれぞれ動けるし、頼ることもできる。
そのことを学んでいる最中だった。
帰りの馬車の中で、リディアは結局、一覧表のことをずっと考えていた。
レオンハルトが来るかもしれない。
その可能性だけで、胸の奥が静かにざわめく。
会いたいわけではない。もちろん戻りたいわけでもない。
それでも、完全に何とも思わなくなったわけではなかった。
まだ痛むのだ。
まだ少しだけ、あの名前は自分の中で特別なままなのだ。
実家へ戻ると、ちょうどノアが玄関ホールにいた。
「姉上、お帰りなさい」
「ただいま」
上着を預けながら答える。
ノアは姉の顔を見て、わずかに眉をひそめた。
「今日は少し疲れているようですね」
「そんなに分かりやすいかしら」
「今日は分かりやすいです」
そう言い切るところが、弟らしい。
「何かありましたか」
真正面からではない。
けれど、ちゃんと逃がさない聞き方だった。
リディアは少しだけ迷ってから言った。
「学院の寄付一覧に、ルーヴェン侯爵家の名があったの」
ノアの表情が静かに変わる。
「そうですか」
「今後、視察の話が出るかもしれないそうよ」
それだけ聞けば十分だったのだろう。
ノアはすぐに何かを言うのではなく、少しだけ考えるように沈黙した。
「……会いたくないですか」
やがて、低い声でそう聞く。
リディアは答えに詰まった。
会いたくない。
でも、会うのが怖いのかと問われれば、それだけでもない。
何を思うのか、自分でもまだ分からない。ただ、その可能性に胸がざわついてしまうことだけは確かだった。
「まだ、分からないわ」
正直にそう答えると、ノアは小さくうなずいた。
「それでいいと思います」
「いいのかしら」
「はい」
彼は迷いなく言う。
「姉上がまだ平気じゃないなら、平気じゃないでいいんです」
その言葉に、リディアはふっと息をこぼした。
平気ではない。
そう認めることは、昔より少しだけできるようになっていた。
夕食のあと、自室に戻ってからも、紙の上の文字が頭を離れなかった。
ルーヴェン侯爵家。
その名があるだけで、学院という新しい場所にまで、過去が細い糸を伸ばしてくる気がする。
けれど同時に、あの頃とは違う自分がいることも分かっていた。
侯爵家を出た日の自分なら、その名を見ただけでたぶん何も手につかなくなっていただろう。
でも今日は違う。ざわつきはした。息も少し詰まった。けれどそのあとも、ちゃんと仕事はした。帳面も見たし、指示も出した。
変わっていないようで、少しは変わっているのかもしれない。
それでも、痛みが消えたわけではない。
鏡台の前に座り、リディアはゆっくりと髪をほどいた。
誰にも見せるためではない、静かな夜だった。
もう会わないままでいられると思っていた。
あの屋敷を出て、あの名前からも少しずつ遠ざかっていけるのだと、そう思いたかった。
けれど、人生はそんなふうにきれいには切れないらしい。
その名を見ただけで、胸の奥がまだ少しだけ痛んだ。
そのことが、今夜のリディアにはひどく心が重く感じた。
その日も女子学院の事務室には、紙の擦れる音と、時おり交わされる短い会話が静かに溢れていた。
ローザは翌週の授業予定を見直し、クラウスは寄付者向けの報告文をまとめている。
リディアは机に向かい、新年度前の寄付一覧を整理していた。
学院の寄付者は増えている。
それ自体は喜ぶべきことだ。
だが人が増えれば、記録も煩雑になる。誰が何の名目で寄付したのか。
単発なのか継続なのか。礼状は出したか。次回の視察予定はあるか。
そうしたことをひとつずつ整えなければ、すぐに流れは詰まる。
リディアは新しい一覧表の空欄へ、細い字で順に書き込んでいった。
アシュベリー辺境伯家
北街区商会
クライン伯爵夫人
王都女子慈善会
慣れた手つきで紙をめくる。
そのときだった。
ルーヴェン侯爵家
その文字が目に入った瞬間、指先がぴたりと止まった。
胸の奥で、何かが静かに痛む
見間違いではない。
もう一度見ても、同じ文字がそこにあった。
ルーヴェン侯爵家。
寄付継続。
春期視察予定調整中。
たったそれだけの記載だった。
それだけなのに、目の前の空気が少しだけ遠くなる。
「リディア様?」
向かいの机から、クラウスが声をかける。
「どうかなさいましたか」
「……いいえ」
リディアはすぐに首を振った。
だが声が少しかたくなったのは、自分でも分かった。
クラウスは不思議そうにしながらも、それ以上は踏み込まない。
その気づかいがありがたくて、余計に胸が痛んだ。
ルーヴェン侯爵家。
その名を紙の上で見るだけで、まだこんなにも身体がこわばるのだと知ってしまう。
あの屋敷を出てから、たしかに少しずつ気持ちが楽になりつつある。
学院では役に立てることがあり、感謝されることも増えた。
自分の足で立ち始めているという実感も、少しずつだが芽生えている。
それでも。
その名前だけは、まだ自分の中で慣れない。
リディアは視線を落とし、もう一度一覧へ目を通した。
隣の欄には、小さく追記がある。
支援内容確認のため、後日当主来訪の可能性あり
今度は、息が止まりそうになった。
当主
つまり、レオンハルト本人が来る可能性があるということだ。
再会、という言葉が頭の中をよぎる。
もう会わないままでいられると思っていた。
少なくとも、こんなにも早く名前が近づいてくるとは思っていなかった。
「そちら、何か問題がありましたか」
今度はローザが近づいてきた。
リディアはあわてて紙を少しだけずらす。
「いいえ。寄付一覧の確認をしていただけです」
「でしたら、こちらも後で見ていただけますか」
ローザは授業用の紙束を持っていた。
教材の割り振りに、少し行き違いがあるらしい。
「もちろんです」
そう答えた瞬間、自分の声がいつも通りに戻っているのに気づく。
仕事の話をしているあいだは、まだ大丈夫だった。
それでも、紙束を受け取る指先は少しだけ冷えていた。
その日の午後は、いつもより集中するのに時間がかかった。
教材の不足分を学年ごとに整理し、礼状の発送予定を確認し、来週分の教室使用表を見直す。
やるべきことは変わらない。
けれどふとした瞬間に、さっきの文字が頭に浮かぶ。
ルーヴェン侯爵家
まるで、遠ざかったはずのものが、静かにこちらへ戻ってくるみたいだった。
夕方になり、生徒たちの気配が少しずつ消えていく。
事務室の窓から入る光もやわらいで、紙の端が淡い色に染まり始めた。
「今日はここまでにいたしましょうか」
クラウスが帳面を閉じながら言った。
「リディア様も、お疲れでしょう」
「いいえ、まだ……」
そう言いかけて、リディアは言葉を飲み込んだ。
無理をしないこと。困ったときはちゃんと誰かに言う事。母に言われたばかりだった。
「……では、こちらだけ片づけたら」
「ええ、それで十分です」
クラウスはほっとしたように笑った。
以前のリディアなら、こういうときも
「まだできます」と言っていただろう。
侯爵家では、できることを残したまま席を立つのが苦手だった。
自分が止まれば、どこかに綻びが出る気がしていたからだ。
でも今は、少しずつ違う。
全部を抱え込まなくても、学院はすぐには崩れない。人はそれぞれ動けるし、頼ることもできる。
そのことを学んでいる最中だった。
帰りの馬車の中で、リディアは結局、一覧表のことをずっと考えていた。
レオンハルトが来るかもしれない。
その可能性だけで、胸の奥が静かにざわめく。
会いたいわけではない。もちろん戻りたいわけでもない。
それでも、完全に何とも思わなくなったわけではなかった。
まだ痛むのだ。
まだ少しだけ、あの名前は自分の中で特別なままなのだ。
実家へ戻ると、ちょうどノアが玄関ホールにいた。
「姉上、お帰りなさい」
「ただいま」
上着を預けながら答える。
ノアは姉の顔を見て、わずかに眉をひそめた。
「今日は少し疲れているようですね」
「そんなに分かりやすいかしら」
「今日は分かりやすいです」
そう言い切るところが、弟らしい。
「何かありましたか」
真正面からではない。
けれど、ちゃんと逃がさない聞き方だった。
リディアは少しだけ迷ってから言った。
「学院の寄付一覧に、ルーヴェン侯爵家の名があったの」
ノアの表情が静かに変わる。
「そうですか」
「今後、視察の話が出るかもしれないそうよ」
それだけ聞けば十分だったのだろう。
ノアはすぐに何かを言うのではなく、少しだけ考えるように沈黙した。
「……会いたくないですか」
やがて、低い声でそう聞く。
リディアは答えに詰まった。
会いたくない。
でも、会うのが怖いのかと問われれば、それだけでもない。
何を思うのか、自分でもまだ分からない。ただ、その可能性に胸がざわついてしまうことだけは確かだった。
「まだ、分からないわ」
正直にそう答えると、ノアは小さくうなずいた。
「それでいいと思います」
「いいのかしら」
「はい」
彼は迷いなく言う。
「姉上がまだ平気じゃないなら、平気じゃないでいいんです」
その言葉に、リディアはふっと息をこぼした。
平気ではない。
そう認めることは、昔より少しだけできるようになっていた。
夕食のあと、自室に戻ってからも、紙の上の文字が頭を離れなかった。
ルーヴェン侯爵家。
その名があるだけで、学院という新しい場所にまで、過去が細い糸を伸ばしてくる気がする。
けれど同時に、あの頃とは違う自分がいることも分かっていた。
侯爵家を出た日の自分なら、その名を見ただけでたぶん何も手につかなくなっていただろう。
でも今日は違う。ざわつきはした。息も少し詰まった。けれどそのあとも、ちゃんと仕事はした。帳面も見たし、指示も出した。
変わっていないようで、少しは変わっているのかもしれない。
それでも、痛みが消えたわけではない。
鏡台の前に座り、リディアはゆっくりと髪をほどいた。
誰にも見せるためではない、静かな夜だった。
もう会わないままでいられると思っていた。
あの屋敷を出て、あの名前からも少しずつ遠ざかっていけるのだと、そう思いたかった。
けれど、人生はそんなふうにきれいには切れないらしい。
その名を見ただけで、胸の奥がまだ少しだけ痛んだ。
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