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第8章:裏取引の証拠
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リリアナは、静かな読書時間を口実に、ヴァイスの執務室の裏手にある、普段はほとんど使われない小さな中庭を観察していた。
そこには、彼が個人的に管理している豪奢な鳥小屋がひっそりと佇んでいる。
昼下がり。
一羽、羽先に青みを帯びた見慣れない鳩が、ほとんど影のように素早く鳥小屋へ滑り込んだ。
その青い色を、リリアナは見逃さなかった。
『青い病の研究ノート』に記されていた――藍晶石(らんしょうせき)の毒素を彷彿とさせる色調だったのだ。
(あの鳩は……伝書鳩。しかも、あの青い羽は隣国との秘密通信の“符号”として使われている――そういうことね)
一度目の人生、彼女はこの鳥小屋に注意を払うことはなかった。しかし今、すべてが線で結ばれていく。
ゼオン卿に接触した際、供えた白椿の花弁に、リリアナはほんの僅かに青い染料を塗っていた。
王妃の行動と「青い色」を結びつけ、彼の記憶に“違和感”として刻ませるための、視覚的な伏線だ。
夕刻。
中庭に人影がなくなったのを確かめ、リリアナはそっと鳥小屋に近づいた。
足元に、ヴァイスが鳩を扱う際に落としたと思しき羊皮紙の断片が落ちている。
彼女は素早く周囲を見回し、その破片を拾い上げた。
それは隣国で使用される特殊な羊皮紙で、見覚えのない筆跡で書かれた古いアルカディア方言の文字が刻まれていた。
「……冬至の前に……採掘……急げ……」
短い文。しかし、リリアナにとっては決定的だった。
• 冬至――自分が処断された“運命の日”。
• 採掘――藍晶石、あの鉱物資源の裏取引。
• 古い方言――第3の伏線で示した、ヴァイスが隣国との通信に使う暗号言語。
(やはり……すべて繋がっている)
破片を懐に滑り込ませたその時――
王宮の廊下から、ヴァイスが執務室へ戻る規則正しい足音が近づいてきた。
時間がない。
リリアナは中庭の影に身を隠した。
ヴァイスは鳥小屋を確認し、青い羽の鳩に何事か囁きかけると、そのまま背を向けて去っていった。
彼は、自ら落とした断片の存在に気づかなかった。
リリアナの心臓は、張り裂けそうなほど強く脈打っていた。
(あと一歩で見つかっていた……でも、証拠は手に入れた)
手の中にある小さな断片を、彼女は強く握り締める。
これは、ヴァイスの裏取引と、隣国の真の狙いが「呪い」ではなく “資源” にあるという確かな証拠の一端だ。
だが、この断片だけでは、アレス王の心に巣くう「呪い」と「義務」の壁を崩すには足りない。
鳥小屋から離れるヴァイスの背中を見送りながら、リリアナは次の一手を定めた。
• 目的:ヴァイスの私的書庫、もしくは隣国使者と密談する場所の特定
• 切り札:ゼオン卿
彼の忠誠は揺るぎない。だが、いま証拠を見せれば、王妃への疑念が先に立ち、逆効果になる。
――それを逆手に取り、利用するための布石は、すでに打った。
冷えきった宮廷の中で、リリアナは一人きりで、しかし確実に“戦うための武器”を集め始めていた。
そこには、彼が個人的に管理している豪奢な鳥小屋がひっそりと佇んでいる。
昼下がり。
一羽、羽先に青みを帯びた見慣れない鳩が、ほとんど影のように素早く鳥小屋へ滑り込んだ。
その青い色を、リリアナは見逃さなかった。
『青い病の研究ノート』に記されていた――藍晶石(らんしょうせき)の毒素を彷彿とさせる色調だったのだ。
(あの鳩は……伝書鳩。しかも、あの青い羽は隣国との秘密通信の“符号”として使われている――そういうことね)
一度目の人生、彼女はこの鳥小屋に注意を払うことはなかった。しかし今、すべてが線で結ばれていく。
ゼオン卿に接触した際、供えた白椿の花弁に、リリアナはほんの僅かに青い染料を塗っていた。
王妃の行動と「青い色」を結びつけ、彼の記憶に“違和感”として刻ませるための、視覚的な伏線だ。
夕刻。
中庭に人影がなくなったのを確かめ、リリアナはそっと鳥小屋に近づいた。
足元に、ヴァイスが鳩を扱う際に落としたと思しき羊皮紙の断片が落ちている。
彼女は素早く周囲を見回し、その破片を拾い上げた。
それは隣国で使用される特殊な羊皮紙で、見覚えのない筆跡で書かれた古いアルカディア方言の文字が刻まれていた。
「……冬至の前に……採掘……急げ……」
短い文。しかし、リリアナにとっては決定的だった。
• 冬至――自分が処断された“運命の日”。
• 採掘――藍晶石、あの鉱物資源の裏取引。
• 古い方言――第3の伏線で示した、ヴァイスが隣国との通信に使う暗号言語。
(やはり……すべて繋がっている)
破片を懐に滑り込ませたその時――
王宮の廊下から、ヴァイスが執務室へ戻る規則正しい足音が近づいてきた。
時間がない。
リリアナは中庭の影に身を隠した。
ヴァイスは鳥小屋を確認し、青い羽の鳩に何事か囁きかけると、そのまま背を向けて去っていった。
彼は、自ら落とした断片の存在に気づかなかった。
リリアナの心臓は、張り裂けそうなほど強く脈打っていた。
(あと一歩で見つかっていた……でも、証拠は手に入れた)
手の中にある小さな断片を、彼女は強く握り締める。
これは、ヴァイスの裏取引と、隣国の真の狙いが「呪い」ではなく “資源” にあるという確かな証拠の一端だ。
だが、この断片だけでは、アレス王の心に巣くう「呪い」と「義務」の壁を崩すには足りない。
鳥小屋から離れるヴァイスの背中を見送りながら、リリアナは次の一手を定めた。
• 目的:ヴァイスの私的書庫、もしくは隣国使者と密談する場所の特定
• 切り札:ゼオン卿
彼の忠誠は揺るぎない。だが、いま証拠を見せれば、王妃への疑念が先に立ち、逆効果になる。
――それを逆手に取り、利用するための布石は、すでに打った。
冷えきった宮廷の中で、リリアナは一人きりで、しかし確実に“戦うための武器”を集め始めていた。
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