5 / 18
番外編「銀の瞳が見つめた日
しおりを挟む
十年前。
まだ幼かったアルベルトは、父に伴われてバルモント家を訪れていた。
冷え込む冬の午後。重い外套を翻し、広間で退屈そうに待っていた彼の前に――小さな少女が現れた。
淡い金糸の髪、大きな青い瞳。
緊張に震えながらも、彼に向かって一生懸命お辞儀をする姿。
「リリアナ・バルモントと申します。……よ、よろしくお願いいたします」
か細い声。それでも必死に礼を尽くそうとする健気さ。
アルベルトは思わず瞬きをした。
同年代の子供たちの多くは、彼の無表情と冷たい眼差しを恐れて逃げる。
けれどこの少女は、震えながらも逃げずに真正面から見つめ返してきた。
(……変わっている。けれど、不思議と目が離せない)
そのときは恋と呼べる感情ではなかった。
ただ、胸の奥が温かくなるのを感じたのだ。
彼女は小さな手を差し出し、笑みを浮かべた。
「……アルベルト様、さむくありませんか? マフラー、半分……差し上げます」
幼い手から渡されたのは、毛糸の端がほつれた小さなマフラー。
明らかに自分のために編んだものではなく、ただの子供の気まぐれだったのかもしれない。
けれど――。
(暖かい……)
その瞬間、アルベルトの胸の奥に刻まれた感覚は、十年経った今も消えていない。
以来、彼はずっと口に出さずに思い続けてきた。
無表情の裏に隠したまま。
――けれど心だけは、最初からリリアナのものだった。
まだ幼かったアルベルトは、父に伴われてバルモント家を訪れていた。
冷え込む冬の午後。重い外套を翻し、広間で退屈そうに待っていた彼の前に――小さな少女が現れた。
淡い金糸の髪、大きな青い瞳。
緊張に震えながらも、彼に向かって一生懸命お辞儀をする姿。
「リリアナ・バルモントと申します。……よ、よろしくお願いいたします」
か細い声。それでも必死に礼を尽くそうとする健気さ。
アルベルトは思わず瞬きをした。
同年代の子供たちの多くは、彼の無表情と冷たい眼差しを恐れて逃げる。
けれどこの少女は、震えながらも逃げずに真正面から見つめ返してきた。
(……変わっている。けれど、不思議と目が離せない)
そのときは恋と呼べる感情ではなかった。
ただ、胸の奥が温かくなるのを感じたのだ。
彼女は小さな手を差し出し、笑みを浮かべた。
「……アルベルト様、さむくありませんか? マフラー、半分……差し上げます」
幼い手から渡されたのは、毛糸の端がほつれた小さなマフラー。
明らかに自分のために編んだものではなく、ただの子供の気まぐれだったのかもしれない。
けれど――。
(暖かい……)
その瞬間、アルベルトの胸の奥に刻まれた感覚は、十年経った今も消えていない。
以来、彼はずっと口に出さずに思い続けてきた。
無表情の裏に隠したまま。
――けれど心だけは、最初からリリアナのものだった。
12
あなたにおすすめの小説
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
ヒュントヘン家の仔犬姫〜前世殿下の愛犬だった私ですが、なぜか今世で求愛されています〜
高遠すばる
恋愛
「ご主人さま、会いたかった…!」
公爵令嬢シャルロットの前世は王太子アルブレヒトの愛犬だ。
これは、前世の主人に尽くしたい仔犬な令嬢と、そんな令嬢への愛が重すぎる王太子の、紆余曲折ありながらハッピーエンドへたどり着くまでの長い長いお話。
2024/8/24
タイトルをわかりやすく改題しました。
【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない
ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。
公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。
旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。
そんな私は旦那様に感謝しています。
無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。
そんな二人の日常を書いてみました。
お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m
無事完結しました!
婚約破棄から始まる、ジャガイモ令嬢の優雅な畑生活
松本雀
恋愛
王太子から一方的な婚約破棄の書状を受け取ったその日、エリザベートは呟いた。
「婚約解消ですって?ありがたや~~!」
◆◆◆
殿下、覚えていらっしゃいますか?
あなたが選んだ隣国の姫のことではなく、
――私、侯爵令嬢エリザベートのことを。
あなたに婚約を破棄されて以来、私の人生は見違えるほど実り多くなりましたの。
優雅な所作で鍬を振り、ジャガイモを育て、恋をして。
私のことはご心配なく。土と恋の温もりは、宮廷の冷たい風よりずっと上等ですわ!
ニュクスの眠りに野花を添えて
獅子座文庫
恋愛
過去のトラウマで人前で声が出せなくなった伯爵令嬢ラニエラ・アンシルヴィアは辺境の男爵、オルテガ・ルファンフォーレとの政略結婚が決まってしまった。
「ーーあなたの幸せが此処にない事を、俺は知っています」
初めて会った美しい教会で、自身の為に一番美しく着飾った妻になる女の、真っ白なヴェールを捲る男は言う。
「それでもあなたには此処にいてもらうしかない」
誓いの口づけを拒んだその口で、そんな残酷なことを囁くオルテガ。
そしてラニエラの憂鬱な結婚生活が始まったーーーー。
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
偽りの愛に囚われた私と、彼が隠した秘密の財産〜最低義母が全てを失う日
紅葉山参
恋愛
裕福なキョーヘーと結婚し、誰もが羨む生活を手に入れたはずのユリネ。しかし、待っていたのはキョーヘーの母親、アイコからの陰湿なイジメでした。
「お前はあの家にふさわしくない」毎日浴びせられる罵倒と理不尽な要求。愛する旦那様の助けもなく、ユリネの心は少しずつ摩耗していきます。
しかし、ある日、ユリネは見てしまうのです。義母アイコが夫キョーヘーの大切な財産に、人知れず手をつけている決定的な証拠を。
それは、キョーヘーが将来ユリネのためにと秘密にしていた、ある会社の株券でした。
最低なアイコの裏切りを知った時、ユリネとキョーヘーの関係、そしてこの偽りの家族の運命は一変します。
全てを失うアイコへの痛快な復讐劇が、今、幕を開けるのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる